「ねぇ? もしお母さんとお父さんが別々に暮らしたら、お前はどっちと一緒に住む?」
そんなのワカラナイよ?っていうか なんで別々に暮らすの?
っていうか なにそれ?って想いながらも
「ぅんとね、とこぁね、みんなと一緒に住むんだぉ(´σ `)」
小さい頃の記憶。 それから何年かして 両親は離婚し 母は家を出て行った。
僕達も遊びにいける距離だけど 一人、母は家を出て行ったんだ。
それは ボクが中学最後の年を迎える頃の 生ぬるい風が吹き始めてまだ冷たい空気が残る
そう、丁度今頃だった。
高校受験を控え 妹の中学進学も考え ボクと妹は中学、小学最後の年へと進級した頃
ボクと妹は母が一人住むアパートへ越した。
ボクの母は、いわゆる教育ママで、おっとりしてる父に僕達を預けるのは心配だと
両親は話し合い 母子家庭になった。
洗濯籠ひとつ分の荷物だけを持って 引越しをした日だった。
お父さんの車に乗せられて 妹と手を繋いで
「お父さん すぐ遊びにくるし、近いし寂しくないよ?」って
子供ながら なんかイッテタ。
「俺は寂しくないぞ? 別々に住んでても家族だからなw」
なんて言葉が返ってきたのが 今でもよく覚えてる。
小さくて狭い母の家に到着して 荷物を解いて
お茶をいれようとしたとき、 遠くで両親の会話がなんとなく聞こえた。
だけど その話の内容には関心がなく、ボクは 日のあたる窓際にあった
小さな白い籠に注目していたんだ。
ぅんともすんとも言わない 小さな小屋の中には 木をくりぬいた小さな家があって
おそるおそるドアを開け その小さな家の入り口から指を突っ込んだ。
「ちょちょ?(妹)なんか温かいのがいる!」
ボクは指先のぬくもりが なんとなく心地よく ぐいぐい指を押し込んで
中の 温かいのを引っ張りだしたんだ。
「!!!!!!!!!!!!!」
二人で目を丸くして 見合わせた。
中に居たのは ネズミ!
「ぅぇっ! ネズミ?! っげ!!」
引っ張り出したネズミの尻尾をつまみ 籠へ戻す。
まだ冷たい空気が残る今頃は 半分冬眠してるのか ネズミは ウトウトとしていた。
そんなこんなで 妹のちょちょと大騒ぎしてる時に 母が部屋へ入ってきて
父と楽しそうにボクらを見てた。
「可愛いでしょ。 ぁんたたち居ないから 一人で寂しくって買っちゃった。
これね リスの赤ちゃんなんだよ。 まだ冬眠してて 眠ると冷たく硬くなるから
死んじゃったかと思って こないだ泣いちゃったんだけど、 ホットマットいれてあげたら
ちゃんと温かくて 愛しいのよ。」
母はリスを買ったきたらしい。
「これリス? ネズミじゃなくって? リス?! でっかくなるの? 鎌倉とかにいる 木に登ってる
なんか でっかいリス(´σ `)?」
「ぅぅん。 この子はね 手乗りだから ぅーんと小さくて シマシマで チョロチョロしてるんだよ?
それでね 今は赤ちゃんだから 毛がなくて 尻尾なんてネズミみたいなんだけど
だんだん もふもふになって 可愛いくなるの。 これからが楽しみなのよ?」
なんて説明してくれた。
ボクは再度 指を突っ込んで むりくりシッポを掴んで
小屋からネズミ・・・。じゃなかった リスを引っ張りだした。
「ヾ(゜、゜*)ネェネェ この子 名前は?」
「ぁんた!そんな扱い可愛そうじゃないの!」とイッパツげんこつが飛んで
「女の子だから レディちゃんだよ」
「ふ~ん。 レディちゃん。」
リスと聞いて なんとなく可愛くなってきたボクは
人差し指の先っちょで 小さなリスを小さく撫でた
ボクの手のひらで もごもご動き 少し目を開けて
手のひらの温もりが気持ち良さそうに すやすやと眠った。
それからもっと温かくなって 春から夏に変わる頃
レディは立派なリスになっていた。
すっとした顔立ちに しっかりとついたシマ模様の
まさしくベッピンさんと呼べるリスと成長した。
この頃には 小屋に指を突っ込むのも日課になっていたボク。
レディはその指をチュッチュっと吸ったり ペロペロしたりとして返事をするようになっていた。
小屋をコンコンと叩けば レディは顔を出し
カゴのドアを開ければ トイレを済ませ出てくるように成長した。
小屋から出し 放し飼いにすれば 遊び疲れた頃には カゴの自分の小屋へと帰り眠る。
本当に手のかからない 頭のいいリスだった。
手乗りシマリス その名の通り 手にも 肩にも 頭にも上りくつろぐ。
ボクが散歩に出れば 学シャツの胸ポケットに潜り込み 帽子やフードの中に入ったりして
お外へと出かけるようになった。
そんな賢いレディは 甘え上手 そして 母はとっても過保護である。
だから リスの癖に クルミが割れない。
まぁクルミは硬いからしかたないと思うけれど
オツマミにもある ピスタッチオも割れない。
割れないっていうより あれは元々割れてるから 中身を出せないと言った方が
わかりやすいだろうか。 レディが自力で割って食べれるのは ヒマワリの種だけだった。
カボチャ? スイカ? とうもろこし? どれも お好みでは無いらしく ポィする
贅沢なリスは クッキーが大スキだった。 やっぱり硬いのは 嫌みたい。
だけど なによりも大好物は アイスクリームとチョコレートで
とても女の子らしい選択だと 今思えば笑える。
リスは 頬袋に食べ物をつめて 小屋に持ち帰る
冬眠の支度を常にしてるかのように まめに掃除しないと
食べ物の化石が小屋から出てくることもしばしば。
小屋にはシュレッターで細かくした新聞紙とティッシュ
それと ヒマワリの種がイッパイ 常に詰まっていた。
チョコレートは 袋に入れたら 頬で溶けるらしく
出すに出せなく いつも必死になっていた。
それが可愛くて可愛くて ついボクはチョコレートで遊んでしまう。
ティッシュを裂いて渡せば これでもか!って程 袋に詰め込んで
口からこぼれ出ているティッシュを引っ張り出して 意地悪してみたりして
それは ボクが初めてレディと出会って最初の春から 冬眠する前の秋。
ボクは 誰よりも レディと一緒に過ごしていた。