首相の発言が飛び出したのは11日に開催された経済財政諮問会議です。首相は「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題である。その方策等についてしっかり検討を進めてもらいたい」と発言し、事実上、携帯電話料金の引き下げを求めました。
確かに家計における通信費の比率は年々上昇しています。7月の家計調査における消費支出(二人以上の世帯)は28万471円でしたが、このうち通信費は1万2448円となっており、全体の4.4%を占めています。15年前の2000年7月の調査では、消費支出が32万6480円、通信費は9410円となっており、通信費の占める割合は2.9%でした。通信費の伸びの多くは、パケット通信によるものと考えられますから、家計における携帯電話料金の負担は大きくなっているとみてよいでしょう。
ただ、支出における通信費の割合が上がっていることと、携帯電話料金の絶対値が高いことはまた別の問題です。日本のスマホ市場は閉鎖的であり、諸外国のように端末と通信会社を自由に選択することができません。最近はMVNO(仮想移動体通信事業者)も増えてきており、いわゆる格安SIMも登場していますが、まだまだマイナーな存在です。
しかし、通信サービスは典型的なグローバル・ビジネスですから、規制料金が設定されない限りは、国によって大きな違いは原理的に生じにくくなっています。利用者の選択肢が少なく、事業者中心のマーケットであるという点や、大手3社による寡占状態という点は否定できませんが、諸外国に比べて日本の通信費用が特別に高くなることは考えにくいというのが現状です。総務省の通信費に関する内外価格差調査でも日本が特別に高い結果になっているわけではありません。
日本の携帯電話料金が家計を圧迫するのは、絶対値としての価格が上がったのではなく、家計の収入が減少したことによる影響が大きいと考えられます。日本のGDP(国内総生産)はここ20年でほぼ横ばいですが、諸外国は同じ期間で経済規模を1.5倍から2倍に拡大させています。米国では大卒初任給が40万円を超えるケースは珍しくありませんから、生活実感としての携帯電話料金は日本の3分の2から半分程度になるわけです。
確かに携帯電話料金を安くすれば、その分が別の消費に回る可能性は高くなりますが、これがプラスの効果をもたらすのかは何ともいえません。料金が下がっても事業者のコストは同じですから、企業側は何とか利益を確保しようとします。取引先に対する値引き要求や給与の削減など、別な項目で支出を減らしてしまい、マクロ的には効果が相殺されてしまうかもしれません。また事業者の利益が減ることで、せっかく育ってきた大手3社以外の格安事業者の経営が圧迫され、逆に大手3社の寡占状態を強めてしまう弊害も指摘されているようです。
ちなみに、安倍首相の発言を受けて、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの株価は6~10%下落しており、3社で約2兆円の時価総額が吹き飛んでいます。
(The Capital Tribune Japan)
