頭でっかちな経営コンサルタントやMBAホルダーは、クライアントを論理とデータで動かせると信じている。フレームワークを並べ、数字を示せば、すべてが合理的に進むと思い込んでいる。

 

しかし現実は違う。人は理で納得しても、最終的に動くのは「情」である。行動経済学が示す通り、意思決定は感情や直感、あるいは言葉にならない「ノリ」に強く支配されている。

 

だからこそ、真に提案を通したければ、理は裏に隠し、情に刺さる物語を前面に出すことだ。


ここでいう「理を隠す」とは、論理を軽視することではない。むしろ逆だ。膨大なデータと緻密な分析を、語るためではなく、己の立ち姿を支える圧倒的な余裕(バックボーン)として内側に沈めるのである。そして、理を語らないのは、相手を尊重しているからだ。論理でねじ伏せるのではなく、相手を“共に決断する存在”として扱う姿勢が、沈黙の奥に静かに宿る。

 

では、前面に出すべき「情」とは何か。それは単なる精神論でも根性論でもない。承認欲求や自己実現といった心理学的ラベルすら飲み込んだ、もっと泥臭く、もっと人間臭いエネルギーである。情とは、相手の中に眠っている“言い訳できない本音”を呼び覚ます力である。プライド、野心、恐怖、そして「この人となら進める」という言語化できない直感。それらすべてを一本の矢に束ね、相手の心の深奥を射抜くのである。

 

結局のところ、相手に納得してもらうとは、沈黙の奥に理を潜ませながら、相手の“腹の底の決断”を情で引きずり出す行為である。理だけでは心は動かず、情だけでは説得力は薄い。最も強い提案とは、圧倒的な理を沈黙の中に隠し持ちつつ、剥き出しの情によって相手の決断を引き出すものである。

 

だから、なじみの居酒屋のように素にかえれる場所では、話題は理ではなく情で十分だ。理だけの話は、酔ったもの同士の軋轢を生むだけだ。

 

そんなことを胸に、今宵もそろそろ居酒屋に赴くことにしよう。大した理を持っているわけではないが……。