歌集表題「罪の騎士」
ギネヴィアと ランスロットが 交わりて 不義の息子が 生まれたりけり
罪の子は キアンと名乗り 騎士となり サクソン人の 王に仕えり
アーサーが この世を去りて 円卓の 騎士に勝ちたる サクソンの王
両親と ゆかりも深き ブリテンを 誇るキアンは 謀反を狙う
サクソンの 王妃は王の 子を産めず 罵言によりて 心を病めり
美男子の キアンは酒に ほれ薬 注ぎて混ぜて 王妃に飲ます
酩酊し 王妃は寝屋に 運ばれて キアンに抱かれ 双子を孕む
サクソンの 王はキアンに 騙されて 戦の中で 毒酒で死せり
男色を 好む王には 華麗なる キアンを拒む 理由はあらじ
サクソンは 盾を壁とし 斧を振り 戦に勝つも 母国に帰る
不幸なる 王の眠りし 棺おけを 槍を掲げし 戦士が守る
寡婦となる 王妃が産みし 跡継ぎは 可憐な姫と か弱き王子
ドルイドの 予言によれば 姫君は 名君となる 幼子を生む
だがしかし 王子は甥の 父親を 剣で殺すと ドルイドは言う
美男子の キアンに似たる 王子では 王位は継げず 追放となる
麗しき 母親に似た 姫君に 男子の服を 着せて育てり
サクソンの 王妃は部下に 命令す キアンを殺す 猛者はゴドウィン
亡き王と キアンの墓を 拝みたる 王妃は泣きて 許せと嘆く
ミコノスと 名付けられたる 姫君は 健気に育ち 胸もふくらむ
ゴドウィンは 王妃に焦がれ ミコノスを 若返りたる 王妃と思う
若き日に 矢で射抜かれし ゴドウィンを 王妃は癒し 傷を治せり
胸元に さらしをまきて 髪を切り わらわは騎士と 姫は強がる
本心は キアンの如き 兄君に 甘えたくなる 幼き童女
アーサーの 遺徳をしのぶ 若者が 騎士に憧れ 冒険をせり
若者は 農夫のせがれ 名はルーで 旅に疲れて 飢餓に悩めり
ミコノスに 出会いしルーは 平伏し 一夜の宿を 乞い願いたり
姫君の 飼い犬の名も またルーで 面白がられ 城に招かる
真っ白き 巨岩を積みし 城塞に ルーの手を引き 姫が近づく
ルーの目が キアンの如き とび色と 誰か気づけば 悲劇は起きず
仕官せる 小姓のルーは エサ皿の 肉とミルクを 這って貪る
ルーはただ 一目惚れした ミコノスの 笑顔を求め 恋にもだえり
木剣と 盾を構えて ゴドウィンに 毎日打たれ ルーは励めり
花々が 咲き誇る日も 雪の日も ルーは走りて 木を棒で打つ
ミコノスの 髪を飾りし 花々は 野に出るルーが 捧ぐ物なり
数年の 月日が流れ 叙任式 騎士となりたる ルーはぬかづく
ミコノスは 小姓のルーの 肩口を 剣で叩きて 洗礼をせり
姫君が 部下と向かうは 鬱蒼と 茂るケルトの 深き森なり
ドルイドが 神と崇める ヤドリギを 遠目に眺め 森へと進む
名僧が 姫と騎士らと すれ違い 不吉に折れる トネリコの杖
殺生を 諫める僧を たしなめて 困りしルーを 姫は励ます
狩りに出て 鹿を射止めて 汗をかき 川を求めて 主従は歩む
猟犬は 獲物仕留むる ルーで良し 姫がからかい 皆で笑えり
美しき ミコノス姫の 水浴びを 垣間見たるは ルーとゴドウィン
ゴドウィンは ルーを殴りて 気絶させ 怯えて嘆く 姫を犯せり
半年の 歳月が経ち ミコノスの 子が宿りたる 腹が膨らむ
ゴドウィンに 死闘を挑む ルーこそが キアンの息子 王妃は気づく
ルーが手に 構えし剣は サクスなり 王妃がかつて キアンに賜う
大剣を 振りかぶりたる ゴドウィンは ルーの毛を切り 大地を叩く
手がしびれ 動きが止まる ゴドウィンの 首をはねたる ルーの小剣
ゴドウィンの 脳裏をよぎる 姫の顔 己の悪に 気づくも遅し
ミコノスは 我が妹と 悟りたる ルーは微笑み 自害し果てり
姫君の 子のかたきなる 我こそが 罪にまみれた キアンの子なり
ミコノスの 息子は育ち 賢王と 民に慕われ 罪をあがなう
母君の 心が壊れ 愛されぬ 王子は乳母の 情愛を受く
伯父の死を 嘆く姿に 寄り添いて 王子は母を 深く愛せり
賢王は 心の傷を 愛に変え 不幸な母と 民を守れり
セタンタと 名をつけられし 幼子は 賢王となり 子孫も富めり
セタンタの 母の母なる 貴婦人も 孫の手を取り 安らかに逝く
ドルイドの 予言はまさに 確かなり ミコノスの子は 名君となる
光る神 ルーの息子の 幼名が セタンタと知り 王は微笑む
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