区分マンションの原状回復をめぐり、賃借人とトラブルになった事例です。

物件・契約条件

  • 物件:区分マンション

  • 賃借人:法人(社宅として使用)

  • 契約内容:ペット飼育禁止条項あり

  • 築年数:築25年

  • 敷金:1か月分

遠方の物件にもかかわらず自主管理で運営しており、退去後は自ら現地に赴いて退去確認を行いました。


1.退去確認

賃借人が退去してから約1週間後、客付けを担当していた不動産業者と一緒に退去確認を実施しました。

室内はまったく清掃されておらず、

  • 浴室・浴室換気扇はカビだらけ

  • 床は土足で使用していたかのように真っ黒

さらに、リビングと寝室の計3か所ほどで床が剝がれ、黒ずんでおり、強烈なおしっこ臭が漂っていました。

契約上、清掃費として8万円を受領することになっていたため、清掃未実施自体については目をつぶるとしても、ペット禁止物件でのペット飼育による汚損は到底容認できません

リフォーム業者の見解は以下のとおりでした。

  • 既存床の上に上張りする工法であれば費用は抑えられる

  • ただし、臭いが残った場合は再度工事が必要になる可能性が高い

  • 確実性を考えると床の全面張替が望ましい

見積金額は160万円

これを特別損耗として賃借人に請求することを目標に、準備を進めることにしました。

なお、清掃されていなかったため、室内には犬の毛が至るところに落ちており、それらは証拠としてまとめて保管しました。
また、汚損箇所の写真は昼間だと太陽光で汚れが目立たなくなるため、夜間に撮影した方がよいという点にも途中で気付きました。


2.賃借人に連絡

賃借人に対し、ペットの飼育有無を確認したところ、

「ペットは飼っていないが、一時的に預かったことはある。
飼育ではないので契約違反にはならない」

との回答。

しかし、一時的に預かった程度で、床が剝がれるほどのおしっこ被害が生じるとは到底考えられません。

そこで隣戸に話を聞いたところ、常にペット用のカートが玄関ポーチに置かれていたとの証言を得ました。
この時点で「一時預かり」という説明は虚偽だと判断しました。

もし誠意ある謝罪の姿勢があれば、敷金程度での解決も検討するつもりでしたが、
賃借人が強硬な態度で臨むのであれば、こちらも徹底的に争う覚悟を決めました。


3.弁護士に相談

自宅近くの弁護士事務所でスポット相談を実施しました。
(30分 5,500円)

主な相談内容は以下のとおりです。

  • 築25年の経年劣化と特別損耗の整理

  • ペット禁止違反の考え方
    (「飼育ではなく一時預かり」という主張への対応)

  • 床全面張替の妥当性

  • 工事期間中の逸失利益の請求可否

弁護士の見解

  • 判断基準は「退去時点の状態」

  • 経年劣化が前提であっても、ペット臭や床の剝がれが通常使用を超えていれば特別損耗に該当

  • ペット禁止条項は、その趣旨からすれば一時的な預かりを含め、ペットの入室自体が禁止と解釈される
    →「一時預かりなので違反ではない」という主張は裁判では認められない可能性が高い

  • 業者判断として全面張替が必要であれば、工事期間中の逸失利益を含めた請求自体は可能

一方で、懸念点も指摘されました。

  • 工事業者の意見について、第三者性(中立性)が否定される可能性

  • その場合、損害額の立証が不十分と判断されるリスク

  • 訴訟に至っても判決まで進まず、和解勧告となるケースが多く、
    結果的に請求額の半額程度で解決するのが一般的

これを踏まえ、弁護士からは
80万円(半額)であれば、請求額として妥当」との見解をもらいました。


4.今後の方針

今後の対応方針は以下のとおりとしました。

  • 賃借人に対し、内容証明郵便を送付

  • 工事費の半額(80万円)を請求

  • 逸失利益は現時点では請求しない

  • 支払期限は1か月

  • 期限内に支払いがない場合は、
    通常訴訟により全額+逸失利益を請求する旨を明記