『東京』or”Tokyo ”


この世界でリリースされる曲中に、トウキョウ という単語がどれくらい含まれるんだろうと、六畳一間。タブレットの画面に映る東京タワーを見ていた。

もちろん、この東京はにっぽんの首都だから、大都会だから、故に邦楽に多いんだろうけど、それがどのくらいの曲に何回出てくるのか、見当もつかなかった。

太宰治の作品には、三鷹 という地名がよく出てくるらしいことは、散歩系YouTuberが話していたから覚えていて、僕がたとえば文学を書くとしたら、三鷹じゃなくて、阿佐ヶ谷かなと思う。


窓枠の小さな喫茶店を横切って、ランチハウスでお昼を食べる。

名前は知らないけれど、1人でやってるおじさんの作るご飯は幸せの僕にとって幸せの味だった。金に余裕なんてあるはずがないし、世間一般から見ればぼくは計画性のない浪費癖のある人間に見えるんだろうけど、この飯を食べていると、天国にも行けそうな気がしていた。

 

 …どうして、藤原を思い出したのだろう。

赤蜻蛉は暖かい。体温を持っている。そう教えてくれたのは彼女だった。そう。東京タワーの赤色は、赤とんぼの尻尾と同じ赤だと思った。

何かぶつぶつ話して、そうしてその複眼の頭を引きちぎったのは彼女だった。

トンボはブルッと震えて、落ちた。草の中に消えた。

「いまから燃えるよ。赤く燃えるよ。」

え?

「トンボは私を恨んでるでしょ。だから、復讐するの。」「ほら、燃えてるでしょ。」

何も見えなかった。彼女の目には何か燃えてるのだろうか?

僕の目には、どうしても何も見えなかった。


目を覚ます。部屋には夕陽の光が差し込んでいた。網戸からは入ってきた風は、夏へ近づく季節を感じさせた。

トンボがこちらをみている気がした。彼の朱色の腹は、確かに燃えていた。


※3へ続く