2節:イタリアへ


翌朝早く、私はホテルをチェックアウトしリュックサックを背負い、スーツケースを引きながらバス停に向かいました。昨日のバス停に向かった身軽さはなく、荷物の割りにバス停までの道のりが長く感じましたが朝の空気は新鮮でしかも、これからの旅を思うと足も軽くなりました。バス停に着くとすでに多くの人たちが並んでいて、私もその列に並びました。バスには人がどんどん入っていき、私の2,3人前でバスのドアが閉まってしまいました!

?????なにが起きたのか??????私は狐につままれた感でボーっとしてしまいました。

ふと、我に戻り、こりゃいかん!!と思ってもバスは出発してしまい、私はバス停にある事務所に突っ走りました。

係りの者にチケットを見せ、、、、これどうなってるの?バスいっちゃったよ!と感情的に私が訴えると、係りの者は冷静に、、、、、うん。これはオーバーブッキングだね。次のバスに乗ったらいいよ。そのバスもフェリーに乗るから。

日本人の私はちょっとしたカルチャーショックを受けましたが、何はともあれ、フェリーに乗れるということなので納得しました。

1時間後、待ちに待ったバスが来て、私は上機嫌でバスに乗り込み運転手にどこのできに座って言いか聞くと、運転手は不機嫌面でしかもギリシア語で私を怒鳴りつけました。私は、なんで怒鳴られるかわからない感の出るジェスチャーを運転手にすると、運転手も私を手で追っ払いました。私はムカムカしながら空いてる席に座り、当時はタバコを吸っていたのでムショーに吸いたくなりましたが、目の前を見ると車内禁煙のサイン.。。。。。。ため息がこぼれました.。。。。。。そして、運転手はおもむろにポケットに手をやり、ライターを取り出しタバコを吸い始めました.。。。。。。。ここまでくると、私は思わず笑ってしまい、私もタバコを吸ってやりました。

当時は禁煙ブームではなく、とりわけヨーロッパでは私の旅行中、喫煙者が多く見られました。今の日本では考えがたい光景でした。

ヤッホー!フェリーに到着!私は一目散にフェリーに乗り込み、甲板に上がりました。時刻はお昼を回っていて天気は上々、地中海の太陽はなんとも気持ちがいい!船が動き始めるとさらに心地よい潮風が私の気持ちまで乗せて行きました。

私はギリシアの売店で買った安いハンバーガーとジュースを甲板の柵に寄りかかり、贅沢な太陽と潮風を浴びながら食べ、この上なく満足な時間を夕暮れ時まで本を読んだりしてそこで過ごしました。日が暮れると潮風は肌寒く感じ、フェリーの中に入るとバイキング形式のレストランがあり、そこを抜けるとホテルみたいに何部屋かのドアがありました。私のチケットは乗船のみで、部屋での宿泊は含まれておらず、乗組員に部屋での宿泊はいくらか聞いてみると、案の定、私にとってべらぼうな金額なので最悪は甲板の上で寝ようと決めました。

散策している間にすっかり日も暮れたころ、、、、、、しっかし、レストランからいいにおいがする.。。。。。。。私は何十種類もある料理を見て歩き、パンとスープを手にとってテーブルにつき、食べ始めました。お金もないのでこれ以上食べては…。。。。と思い目をきょろきょろして周りを見ているとレストランへの人の出入りが自由なことに気づきました。しかもバイキング形式、、、、、ふと、私に悪い考えが浮かびました.。。。

食い逃げやってみる!?私はテーブルにスープの皿を残し、そうっと立ち上がりました。心臓はバクバクしていているがとぼけた顔で出口までたどり着きました。すると、どこにその身を隠していたか疑うほど大きなマッチョの壁が目の前を立ちはだかり紳士的な口調で、何をお探しですか?と私に尋問…。。。あの会計はどこですか?と震え気味に答える私をマッチョは紳士的に会計までエスコートしてくれました.。。。。。

そんなことで、船内には居づらかったのですが、外は寒いので船内をうろちょろしていました。しかし、良心の呵責に耐え切れず、私は外に出て寒い甲板の上を彷徨い続けました。

潮風の抵抗がなるべく少ないところにはすでに先客がいて、寒さを凌ぐため抱き合って寝るカップルや毛布に包まって寝る人、荷物で壁を作る人、、、、みんな必死に寝ていました。彷徨うこと1時間…。。。もうすでに夜中で、眠気と寒気にやられつつもやっと潮風があまり当たらないところを探し、そこで私も、持っている服を何枚も重ね着して寝てしまいました。

翌朝、なんか私の周りで騒がしい声が…。。。。まー!こんなところで寝てるわ! かわいそうに、きっと寒かったことでしょう.。。。 あはははあはは! 大丈夫か!? ギリシア語でなんていっているかわかりませんでしたがそんな感じの声で目が覚めました。

恥じらいを噛み締めながらあたりを見渡すと、どうも船はすでにとまっている様子…。。。

イタリアに着いた!!

私もみんなもバスに乗り込みました。まずはイタリアに着くことが目的だった私は、このバスがどこへ行くのか知りません。あの運転手に聞くのも癪に障るので親切そうな老夫婦に聞いてみるとこのバスは駅に着くらしい。

それを聞いてホッとした私は窓越しにひと時のイタリア観光を楽しみました。

はっ!!と目が覚めると終点についていました。昨夜、寒さのあまり、あまり眠れなかったせいでイタリアの風景を半分以上見逃してしまった…。。。。。。

これからのデンマークまでの費用を考えると、イタリアにもう一泊するのは不可能であったため、私は残念ながら駅へと向かいました。駅に向かう最中、私の頭の中はピザのことでいっぱいでした。せめて本場のピザだけでも!!と思い、切符より先にピザ屋を探すこと30分、やっとピザにありつけました。ピザって薄いんだ!なんて思いながらピザを口にし、私にイタリアに来たという実感がこみ上げてきました。

しかし、これでイタリアを後にしなければなりませんでした…。。。私は切符売り場でガラスの壁越しに切符販売員に言いました、、、デンマークまで行きたいんだけど…。。すると切符販売員が、ドイツで乗換えだね!といった瞬間、真っ先に思い浮かんだのがビール!

なんか得した気分でプラットホームに向かいました。スーツケースとリュックを持ち上げて階段を上り着いたプラットホームで待つこと15分…。。。日本みたいに時間通りに電車が来ないことは知っていた。…。。…。。。。すると、向かいのホームに電車が着きました。。。。。。。。。。

何かが変だ…。。。。。。。と思い電車出発案内画面を見るとまあ、大変!!出発ホームが向かいのホームに変更!!!!!すかさず、スーツケースを持ち上げ向かいのホームに向かいました。が!!!!その向かいのホームまでの通路が異様に長く、そして最後にまた階段を上らなければなりません。。。。。。。階段を上る途中、さすがに間に合わないな.。。。。とあきらめムードになり、携帯で時間を確認しながらホームに着くとまだ電車が!!私はラストスパートで電車に駆けこみました。

あっ!と思ったときはすでに遅く、私の携帯が電車とホームのコンクリートの隙間をすり抜け、線路上に落ちてしまいました.。。。。。。それを見ていた駅長らしき人が部下に指示し、何かを持ってこさせるようでした。そして部下が持ち出したのがマジックハンドのロングバージョン!駅長はそのマジックハンドを手に取り、ガツッと私の携帯をつかみ上げました。

私はその駅長にお礼を言うや否や、電車のドアが閉まり、その駅長はホームからマジックハンドを片手にして私に手を振り、私もドアの窓越しに駅員に向かって手を振りました。

あっという間の出来事でした。ふと我に戻り、携帯が以前より軽いことに気づき、携帯の裏を見てみると充電地がない!!!しかし、電車はすでにスピードを上げて動きはじめていて、私は1人であわてていました。近くに品の良いニコニコしたおばあさんがいたので、その人に携帯の裏を見せ、、、、ほら!充電地ないよ!!線路に落としちゃったよ!!なんて言ってみたけど理解してくれた気配はなく、おばあさんは私のリュックについているカエルのぬいぐるみを指差して、カエル!カエル!とニコニコしながらイタリア語で言っているようでした。

そういえばこのカエル、日本を出る前に、また無事に帰国できるようにもらったよなー.。。。なんて思い出し、私はおばあさんに、そうだよ。カエルだよ。と笑顔で答えました。