まぶたに光を感じて目を開けた
「・・・ぅん?」
ここはどこだ
「・・・・。」
一瞬考えて、ここは監獄の中だと気付く
あぁ、そうだ。
そうだった。
私は闇に囚われて、ここからもう13年も出られないでいるのだった。
でも、おかしいな
ここに光は射さないはずなのに。
・・・・。
朝陽のいたずらか?
少し不思議に思いながらも、寝起きの目をこすった。
やっぱりそこは相変わらず一面暗闇で、床はひんやりしている。
薄いグレーの鉄格子が周囲を取り囲み、ときどき機械音が重症の耳鳴りのように反響するだけ。
ここには私以外誰もいない。
「・・・・・。」
あの光は夢だったのか。
そう考えて、私はまた悲しみの世界に堕ちてしまいそうになった。
いつもいつも夢にはだまされる。
夢は私に希望を与えてくれるが、
それを現実がすぐさま奪っていくとは知らないようだった。
現実は有無を言わさずに夢を吸い込んでいく。
そして私はもがき苦しみ、叶わぬ幻想に一喜一憂させられる。
それは、罪なき罪
夢なき夢を表しているようで、
その度に、意識は漆黒の闇へと姿を消すのだった
もはや
希望なき地球で、私の心を癒すのは
不安なき思い出だけ。
長い年月を暗闇ですごすうちに、モグラのように退化してしまった私の目でも
その楽しい過去だけはカラフルに彩られて見える
それが1人で生きる唯一の支えであり、エネルギーなのだ
しかし、それももう限界に近い
1日1日が
砂時計のようにサラサラと流れていく
それと同じスピードで記憶のメモリも減っていく・・・。
そんなとき、ふと、ある人の顔が浮かんだ
その一瞬のひらめきに動揺し、驚きながらも、確信した。
もう、私を助け出せるのはあの人しかいない
あの人に逢いたい。
彼は、暗闇でうずくまり身動きが取れない私をみて、何と言葉をかけるだろう
いや、きっと彼は言葉を発さない
ただただ優しい微笑をうかべて
私に大きな手を差し伸べてくれるはずだ。
そこで何をしてるの?なんて野暮なことを聞けば、また私を傷つけると知っているはずだから。
だから、私もニッコリ笑う練習をしよう
彼の手を握れるその日まで。
それはそれは、力強い人生の味方
彼と私の笑顔が重なり合ったとき、私は年齢を重ねる楽しみを初めて知るのだ。
おしまい。