ムーちゃんの物語 その1
昔、カザフスタンから連れてきた大型犬がいた。この話はオイオイするが、松戸にあるケンネルに毎回散髪に連れてゆく時に胴の長いワンちゃんがいた。胴が長いと言っても正真正銘のシーズーである。月に一回ぐらいの頻度でケンネルに行くのだが三ヶ月ぐらい経ってからもまだその胴の長いワンちゃんは引き取り手が居なくてケンネルに居た。大体、生まれて幼犬の内に引き取り手が現れるものだが胴の長いシーズーは何故か引き取る人が居なくてケンネルの人も困っていた。
そこで、胴の長いシーズーを大型犬の散髪の間に散歩に連れて行った。
顔立ちは良いのだが、胴がやたらに長いので同じ犬種が居るとどうしても敬遠されるのか売れ残りになってきたようだ。でも何度か見ているうちに情が移ってきたのか可愛くなってきた。ケンネルの店主は飼い主の心が判るのか「中村さん、もしできたらこの同の長いシーズーを貰ってやって呉れませんか?」と私の目を覗き込むように言った。カミさんは横から「やめなさいよ、ボスだけでも大変なんだから」と私の脇腹をつついた。
私は店主に「私が引き取らなかったら、ヤッパリ処分されるんですか?」と聞いた。店主は曖昧に「まあ、そういうことですね」と小声で私だけに聞こえる様に応えた。
大型犬のボスと一緒に家に連れて帰ることになった。
家の愛犬は二匹居る。ムーちゃんは放浪ニートだがゴンちゃんは定住ニー
トである。

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