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「あー……あ……」
『彼』の心の中にあったのは、恐怖という感情だけだった。
街灯のほとんどない薄暗い住宅街の一角に位置する階段の下。
そこのアスファルトの上に倒れている一人の少女。
彼の目の前で横たわる少女の、裾の方に白いレースのついた淡いピンク色のふんわりとしたワンピースは、ところどころ破れ赤く血に染まっている。手や足など様々な所に怪我をしているようだが、その中でも一番酷そうな首の傷からは血が溢れ出し、その流れは止まる様子を見せない。
そして、その少女は『彼』がどんなに肩を揺らしてもピクリとも動かなかった。
まるで、死んでいるかのように。
『彼』はただ、恐ろしかった。
少女の死が。
『彼』の犯した罪が。
そしてその罪が世間に知れることが。
彼は、ただ夢中だった。
薄暗い夜道をただひたすら走る。
彼女をたった一人残したまま。
誰かにこの姿を見られる前に逃げなければならない。
『彼』は掌に爪が食い込むのも気にせずに強く鼓舞しを握り、自分の家路を急いだ。
――――彼女が発見されたのは、次の日の朝の出来事だった。
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