「なんて、可愛いゝんでせう……あの踊り方……。それに、なかなか上手だわ。あたし、なんだか、急にあの娘に会つて、話がしたくなつた……。踊りがすんだら、こつちへ来るやうに、さう言つてちやうだい……」
踊りの一曲がすむと、静江は、その場にぼんやり立つたまま、エレーヌの方を見つめてゐるが、エレーヌが、手招きをすると、つかつかとそばへ来て、そのまゝ、また、エレーヌを恥かしさうに眺め、やつと、につこり笑ふ。
エレーヌは、無造作に静江を引きよせ、抱きすくめる。
「仲よしになforexgrowthbotりませう。あなた、なんていふ名……?」
「シヅエ……マキ・シヅエ……」
「あたし、エレーヌ……シーグフリード……。エレーヌだけ覚えればいゝわ。あしたゆつくりお話しませうよ。イガクラさんの家にゐるから、朝のうちに遊びにいらつしやい」
ブルターニュ風のダンス曲がはじまる。
「さ、踊つて来なさい」
静江は、飛んで行く。
ダンスがはじまる。
一方では、それが終るのを待たずに、盆踊りをはじめる男女の幾組かがある。
一七
翌朝、海岸の小径を、静江とエレーヌとが腕を組んで歩いてゐる。海はしづかにないでゐる。
静江の胸につけたブローチ、エレーヌの指にはめた指環の、二つの真珠が、まつたくおなじ大きさで、おなじ輝きを放つてゐることがわかる。二人はむろんそれに気がついてゐない。
