「っと、ゆうわけやねんけど」
見たこと聞いたことをすべて話した瑞丸は、すっかり冷めきったコーヒーに手を伸ばした。窓の外ではすでに雨が降っていて、隣にすわる公一は寒そうに身震いした。
「なるほどねー恋の三角、いや四角関係ってわけか」
う~ん、とうなり声を出しながら、孝平が苦い顔をする。彼は王宮専属の弁護士でもあるため、恋のトラブルとなると別の意味でも頭を悩ます問題となるのだろう。
「それで?君たちは俺らに相談してどうしようと思ったわけ?」
ずっと壁に背をもたせて話を聞いていた真吾が声を発した。すこし不機嫌なようである。
「どうって…俺たちだけやと、どうしていいかわからへんから、まずは年上の二人に相談すればなにかいい解決策がもらえるんやないかと思て」
「そうは言うけどさ、俺たちだって、君らよりたった5、6年多く生きてるだけだよ?しかも身内の話となったらなおさら、どうしていいかわかんないに決まってんじゃん」
確かに、真吾の言うことはもっともである。自分たちより多く生きているからといって、すぐにいい答えをもらえるわけではないのだ。だからって、そんなに早くさじを投げなくても…と、地球オオサカの気質を持つ瑞丸も不機嫌になってしまった。
「ちょっといいかな?」
意気消沈していた部屋の空気を切り替えるように、公一が手をあげた。
「俺と瑞くんは王宮の騎士だからみんなよりも早く、姫の婚約者を紹介されたと思うんだ」
「だからなんやねん。王宮内に見知らぬ人間がいたら俺らの任務に差し支えがあるから、外から来た人間は把握しておく必要がある、せやから婚約者も俺ら騎士が一番に紹介された。そう言いたいんやろ?」
公一のゆっくりしたしゃべり方は、せっかちな瑞丸をいらつかせることもあるが、瑞丸が公一の言いたいことを理解してフォローすることで、彼らのバディーは上手く成り立っている。まあ、当の本人たちは気付いていないのだが。
「そう、だから、もう剛君にも紹介されてると思うんだよね、香織姫の婚約者」
静まり返った室内で、声を発するものは一人もいない。ただ、なんだかよくわからない真吾の実験道具が、コポコポと怪しい気泡を発生させているだけである。雨音はいっそう強く、古い小屋の屋根に響き渡り、いまにも雨漏りしそうな雰囲気だ。
「…ねん」
「え?」
「なんでそれを、もっと早く言わんねん言うとんねんボケェ!!!」
公一の後頭部に平手チョップをかました瑞丸は、立ち上がるや否や孝平の手をとり、懇願のポーズになっている。
「お願いします芝さん。剛を救えるのはあんたしかいないねん」
そんな大きな瞳で見つめられたら惚れてしまうと、孝平はひそかな想いを胸にしまって瑞丸の手を握り返した。
「わかっているよ、こんなゲイと、へっぽこ科学者じゃなんの役にも立つまい。私が君に協力しよう」
かくして『こんなゲイ』と『へっぽこ科学者』に平手打ちをくらった孝平は、瑞丸に協力するどころか一切の指揮権をゆだねられ、『剛と姫を結ぶために真実を明きらかにする会』の会長となったのである。
そうして『雨夜の相談会』は終了。孝平は傘をさしてひとり家路につくのであった。
「こんなときに年上は嫌だって、つくづく思うよ。はあ、今日もバナナしかのどを通らないか」
つづく
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この物語はフィクションです。
とある受験生の気まぐれだと思っていただけると幸いです。