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●羽生結弦「満身創痍」の滑り “強行出場”決めた本当の理由

〈週刊朝日〉
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[12/4 07:16]

11月29日、フィギュアスケートGPシリーズのNHK杯(大阪・なみはやドーム)で、

ソチ五輪金メダリストの羽生結弦(19)が4位となり、

12月にスペインで行われるファイナルへの出場を決めた。

8日の中国杯で試合前の練習中に他選手と激突。

出血した頭に包帯を巻きながらの悲壮な演技で2位となった。

だが、その後の検査で

左大腿挫傷など全治2~3週間のけがと診断され、

NHK杯出場は絶望的という報道もあった。

それが急きょ、出場と発表されたのは試合初日の 2日前。

中国杯では脳震盪(しんとう)も疑われる中での滑走が論争を巻き起こしただけに、

けがを押しての出場に会場はピリピリムードに包まれた。

羽生には専属の警備員が付き従う厳戒態勢。

試合前会見では「一人の選手に質問が集中しないようご配慮を」と、

司会者が気をもむ場面もあった。

世の中を驚かせた“強行出場”だが、

報道陣の間にはこんな声もあったという。

フィギュア記者がこう語る。

「直前まで羽生の動静はわかりませんでしたが、

記者の間では『彼なら絶対出る』という予測もありました。

それくらい、勝ちにこだわる性格。

王者の責任感から出場を決めたというよりは、

戦いが好きということに尽きると思います」

無理をして故障が悪化することを危ぶむ声もあるが、

横浜市スポーツ医科学センター長の青木治人氏は、

「太ももは筋肉の量が多く、回復が早い。

打撲だけならば、

初期に適切に治療をしていれば

後遺症が残る可能性は低く、

万全の状態でなくとも試合に出るという判断は不思議ではない」

だが、やはりけがの影響は侮れなかった。

28日のSPの演技では、ジャンプで2度失敗するなど本調子ではなく5位。

元五輪代表の渡部絵美氏が語る。

「着氷のときの足の踏ん張りがきいていなかった。

けがの影響で筋肉が衰え、

足が細くなっている印象を受けました。

何とか滑れる程度には回復していても、

まだ準備不足だったのでは」

フリーの演技でも4回転ジャンプで転倒するなど振るわず4位で、表彰台を逃した。

「けがの影響じゃなくてこれが僕の実力」と悔しがったが、

かろうじてファイナル進出を果たし、次につなげた。

「今回は対戦相手がそれほど強くなく、

実績のある選手には構成点などが高く採点されがちな傾向もある。

五輪王者の羽生は、『試合に出ればファイナル進出は確実』と

みられていました」
(前出のフィギュア記者)

本当の正念場は、これからのようだ。

※ 週刊朝日
2014年12月12日号より抜粋