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PSO2キャラ紹介&物語

正一家紹介
そしてその物語
※携帯で投稿する場合もあり、その時は短くなるかもしれません

また一雨くる、そんな前の出来事。

王の寝室から一人、外を見る者がいた。

 

「休憩か」

 

そんな彼に声をかけたのは他ならぬ王。

彼はその声に反応し、振り向く。

 

「部屋の掃除を」

「にしては手が動いてねぇな、なんかあったか」

「…王には隠し事はできませんね」

「いいよ、今は誰もいないぜ」

 

彼は王のその一言で肩の力が抜けた。

いつもの、優しい彼の笑顔が見える。

 

「……最近忙しかったからな、ガードルともまともに話せてないと思って」

「それで部屋の掃除か」

「だって、玉座の間とかだと人がいるだろ?」

「当たり前だ、公の場だしな」

「ここならそんなこともないかなって」

 

そういうとマルはふにゃっと笑っていた。

 

「まぁ…ここに入れるのは俺とお前だけだしな」

「それの理由も聞きたいんだけど?」

 

マルがガードルのベッドに座る。

 

「俺ら一つ屋根の下で暮らしてきたようなもんだろ」

「だな」

「部屋一緒だったろ」

「うん」

「ついでにベッドも」

「場所がないしなぁ」

「俺らだけの空間っての、欲しかったんだよ」

 

ガードルからその言葉を聞いて、マルはぽかんと口を開いていた。

 

「あ、あんだよ」

「お前からそんな言葉が出るとは思わなくて…」

「はぁ!?なんでだよ!」

「てっきりそういうことには関心ないと思って…」

「だからなんでだよ!あるわ!仮にも兄弟だろうが!大事にしてぇだろ!!」

 

珍しく、仕事中には一切見せないガードルの焦りっぷりが見れる。

マルはそれだけでも嬉しいのだ。

張りつめた期間が長く、2年前から今にかけて、多くの事がありすぎた。

その間、こんな幼く見えるガードルはとてもとても久しぶりなのだ。

 

「そんなに声荒げてるの、久しぶりに見たな」

 

マルはハハハッと笑う。

こんなに落ち着いて、賑やかな会話をするのは久々なのだ。

 

「落ち着いた雰囲気になったと思ってたのに、ははっ」

「い、色々あったからな…周りが見えるようになった時にはお前は暴走してるしよ」

「あれは…なんかごめん」

「ナベリウスの殺人鬼だかやってるしよ」

「んなこと言ったら、ガードルだってヴァーミリオンとかいう組織いたじゃん?」

「俺はいんだよヴァーミリオンは壊滅したし」

「リアトルなんて先輩に喧嘩ふっかけようとしたみたいだし」

「あいつほんと馬鹿だな」

「自分の相棒だろ」

 

下らない話を、過去の辛いはずであろう話をたれ流していく。

今だからできる話だろう。

 

「馬鹿なのは否めねぇ」

「んで結局二人して戻ってきたわけだ」

「お前もレマと一緒に戻ってきたじゃねぇか」

「俺はお前達がいなかったら戻ってこれなかったよ」

「正なんてお前の事殺そうとしてたけどな」

「まぁ…いざとなればってことだろ?懸命だって」

「俺はお前が生きててよかったと思ってるけど」

 

ガードルもベッドに座る。

ちょうどマルと背中合わせになるように。

 

「俺もお前と一緒になれてよかったって思うよ」

「これ、覚えてっか」

 

ガードルが首に下げているペンダントを見せる。

 

「当たり前、っていうか記憶に新しい」

「遊園地の時の帰りのやつ」

「兄弟揃って同じやつ気に入ったんだよな」

「んでお揃い」

「ははっ、…どんなに忙しくても、離れても、繋がってるって証拠」

「お前が何か形ある物欲しいって言ったんだぜ」

「ガードルも嫌とは言わなかった」

「嬉しかったからな」

「素直じゃないな、俺の兄さんは」

「言ってろ、それが俺だってわかってんじゃねぇか」

「そりゃもちろん」

 

二人はペンダントをベッドの枕元に置く。

 

「今晩、久々に一杯やるか」

「ガードルお酒駄目じゃなかったっけ」

「ビールは無理だな」

「じゃあ…水?」

「んなわけねぇだろ。……カクテルなら」

「んじゃあ、御作りしますよ、我が王様」

「ちゃかすな、バーカ」

「俺は焼酎でも飲むかなー」

「明日休みにしてやるよ」

「何言ってるんだよ、お前が出るなら俺はいつでも出る」

「じゃあ俺の傍にいればそれでいい、たまには休め」

「ガードルも」

 

ああ言えばこう言う、こうなっては自分が折れるしかないとガードルはわかっている。

 

「…んじゃあ、ティアマトにある程度任せるとすっかな」

「9割任せて少し楽しろよ、じゃないと俺も普段通りやる」

「ちっ、わぁったよ。糞生意気な弟だこった」

「兄さんが素直じゃないからな」

「減らず口、ったく」

 

二人は結局朝まで飲み、仕事の大半はティアマトに任せたという。

たまにはよきかな、優雅な一時。

 

 

ただ一時 ~心許せる者

エスカファルスを追い込んだ正達。

しかしエスカファルスは余力を残していたのか、ビットを変形させアークス達に襲い掛かる。

 

「来るぞ!」

 

モーガンはアサルトライフルにウィークバレットを装填。

変形したビットに撃ちこむ。

変形したビットは腕を形を成し、激しい攻撃を仕掛けてくる。

 

「ちっ…!ジャマーを持っているな…!」

 

本来のウィークバレットの力を発揮させることは敵わず、なかなかビットを破壊することはできない。

 

「後ろよモーガン!」

「…っ!」

 

ネメリダの声に反応し、後ろを向くモーガン。

しかし既に他のビットに背後を取られていた。

 

(やむを得ないか…!)

 

そう思い、防御の姿勢を取る。

しかしライフルを盾にしたところで耐久性はたかが知れている。

大きなダメージを受ける事は明白。

しかし、ビットの攻撃は彼を襲うことはなかった。

 

「おらぁ!」

 

マルの一撃。

普段カタナを握って手数で攻めている彼からは想像もできないような一撃は、ビットを一撃で破壊した。

 

「マル…それは…」

 

マルの手に握られていたのは大剣、ソードだった。

 

「先輩と同じで慣れてなくてな…皆巻き込まれるなよ!」

「頼もしい事だな!」

 

マルの大剣はエスカファルスのビットを次々と破壊し、やがて本体をも打ち砕く。

 

 

エスカファルスとの戦闘を終え、途中戦闘不能になった者を含めても犠牲者は無し。

全員命に別状はない。

一番恐れられていた本体との直接の戦闘はマルと、ジャマーがあるとはいえウィークバレットを扱えるモーガン、正の導き、ネメリダの戦闘力の高さにより圧倒的な戦力差を見せつけた。

 

「あのエスカファルスは幻想、つまりこれから何度でもこの事態は起こる」

 

ガードルは上層部に伝える。

 

「都度対処するのは問題ない。戦い方を知らないアークス達も次第に慣れるだろう、その間の処理は俺が引き受ける」

「王の采配、見事でありました」

 

上層部の男はそれを言って面談を終わる。

 

「部屋へ戻る。ティアマトかマルが戻り次第ここを任せ、お前達も休憩に入れ」

「はっ!」

 

部下へ声を掛け、黄王は自室へと行く。

 

 

「あなたね」

 

自室の部屋のバルコニーで一服していたティアマトに声を掛けたのは正だった。

 

「何がだ?」

「マルにあの戦い方を教えたの」

「根拠は」

「ソード、まともに扱えるのはあなたか…ルガータくらいだもの。ルガータとはしばらく顔を合わせていないのよ、あの子」

「ま、隠すことでもないな。怒ってるのか」

「いいえ、私はソードの扱いが苦手なの。指導してくれたことに感謝してるわ」

「意外だな、あんたにも苦手なもんあるのか」

「無粋な事言わないで」

「いてっ」

 

ティアマトを小突いて笑う正。

 

「あの子ね、近接武器の扱いは私以上なの。鍛えるなら中途半端にしないでちょうだいね」

「ガードルにも言われてる、その心配はしなくていいさ」

「そうね、じゃあこれ渡しておくわ」

「あん?」

 

正は一つの紙切れをティアマトに渡す。

 

「あなたからガードルにも伝えておきなさい。ようやく居場所が掴めたの」

「…どこでこれを」

「ひ、み、つ。じゃあね」

 

正はそう言ってバルコニーから飛んで行った。

ヴァルスの力だろう。

 

「……」

 

ティアマトに渡された紙。

それには…かつて仲の良かった友の居場所が記されていた。

 

「…黑」

 

ヤミガラスの使い手は、今何を。

 

 

休まれない者 ~次の目標

巨大幻想種、エスカファルス・マザーの討伐。

黄王ガードルの指揮の下、それは行われる。

 

「全アークスに告ぐ。ライドロイドで出撃、討伐対象エスカファルス・マザーを弱らせろ」

 

第一次作戦としてライドロイドでの出撃となる。

 

 

一週間前。

玉座の間にて、黄王ガードルを目上に、議員が集まり作戦を公表した。

内容はAISでの出撃。

AISで出撃し、敵を弱らせ、あわよくばそのまま撃破という形だ。

しかし、黄王ガードルはそれを却下した。

 

「却下だ」

「!?な、なぜだ!」

「AISで弱らせ、あわよくばそのまま撃破、内容自体は悪くない」

「ならばなぜ!」

 

議員との議論が続く。

ガードルの横にはマルとティアマトがついている。

 

「中途半端に弱らせては何をされるかわからない。弱らせるなら確実に、少しだけ体力を減らして敵を討つ。AISではなくライドロイドで出撃させる」

「馬鹿な!ライドロイドは戦闘用ではないのですぞ!」

「少し手を加えればミサイルの一つは撃てるだろう。シエラタイプがいるだろう、話をつける」

「しかし…ライドロイドでは…」

「今AISは防衛線に集中している。今から集めるのは時間がかかりすぎる、作戦は一週間後であることを忘れるな」

「…承知致しました」

 

ガードルが作戦をまとめた資料をティアマトに手渡す。

 

「シエラタイプへこれを。何かあれば俺に取り次ぐよう伝えろ」

「御意」

 

 

ライドロイドで出撃し、エスカファルスを追い詰めていく作戦。

大したダメージを与える事は敵わないだろうが、それでいい。

アークス達はライドロイドに乗り、エスカファルスを追い詰めていく。

しかしライドロイドの耐久性はたかが知れている。

簡単な攻撃で、障壁に阻まれ、沈む者は沈んでいく。

 

「くっそ!…うわあああっ!」

 

一人、また一人とアークスが撃ち落とされていく。

 

「また一人脱落か、まあこの攻撃密度では仕方あるまい」

「どのみちここで生き残れなきゃあの大物は仕留められない、ガードルの考えはそういうことだと思う」

 

モーガンと、マルが並びエスカファルスを追い詰めていく。

 

「AISも出撃できない状況なのだろうな…マル、右上のビットを頼む」

「じゃあ先生は左上を」

「そのつもりだ!」

 

二人は別れ、エスカファルスの周囲に浮く四つのビットの破壊に臨む。

 

「モーガン達が行ったわね」

「あなたは攻めないの?らしくないじゃない」

 

正とネメリダが彼らの背後から続く。

ネメリダは珍しく正が後ろで大人しくしているのが気になるのだろう。

 

「下手に突っ込んでもカウンターを喰らうだけよ」

「それもそうよね、どう攻めるの?」

「私の合図で動いてちょうだい」

「わかったわ」

 

しかし、冷静な二人とは違う他のアークスは、エスカファルスを恐れ、先へ、先へと出ていき、沈んでいく。

 

「う、うわあああああああっ!」

「…無様ね」

「酷い事言うわね」

「あの子の采配と私の指示に従わないならほっとくだけよ…行くわよネメリダ」

「了解…よっ!」

 

二人はブーストを駆使し、エスカファルスへ接近していく。

 

「左下を!」

「わかったわ!正は…」

「右下っ!」

「そうよねっ!!」

 

二人は加速し、エスカファルスのビットを破壊する。

四つのビットが全て破壊され、残るはエスカファルス本体のみ。

 

「胸元の部位は開いたわ、一気に畳み掛けて!」

「わかったわ!」

 

正とネメリダが開かれた弱点部位を攻撃し始める。

 

「マル!」

「わかってます!畳み掛ける!」

 

モーガンとマルもまた、弱点部位の攻撃に移る。

そしてエスカファルスは攻撃を受け続け、やがて幻想の柱へと向かっていく。

 

「仕留められはしないか…!」

「ぼさっとしないのモーガン!追うわよ!」

 

モーガンとネメリダはエスカファルスを追う。

 

「マル、行きなさい」

「おう!」

 

正を置いて、マルは先にエスカファルスを追う。

 

「ティアマト」

「…なんだよ」

「あなた何もしてないでしょ」

「……よくわからねぇんだよ、これ」

「…はぁ、次はライドロイドは使わないわ。しっかり働いてちょうだい」

「わ、わかった…」

 

正達と同時に出撃したティアマトは撃ち落とされることもなく、ただ後ろを着いてきていただけだった。

ライドロイドの操縦がよくわからないんだそうだ。

 

(ガードルに報告案件ね…)

「行くわよ、幻想の柱で決着をつけるわ」

「…おう」

 

彼らはエスカファルスを追い詰め、幻想の柱へ向かう。

 

 

視えぬ幻想 ~地球の母

ガードルに呼び出されたマルとティアマト。

王のいる玉座の間へ向かう。

 

「コンディションは?」

「ばっちり」

「武器は?」

「ある」

 

最低限の会話だけを済ませ、彼らは廊下を歩いていく。

やがて、王の御前へ着く。

 

「王、馳せ参じた」

「用件を」

 

膝をつき、頭を下げる。

王は肘をつき、彼らを見下ろす。

 

「任務だ。地球で発生しているエーテルの暴走で生まれた存在の討伐をこなしてもらう」

「御意」

「御意」

 

マルとティアマトは必要以上の言葉を発する事なく、ガードルの用件を承諾する。

 

「正もいる、任務中はいつも通りで構わない。それと…彼の家族の中から何人か選んだ、間もなく来るだろう」

「承知」

 

返事をして、彼らは立ち上がる。

すると、部下のアークスが客人の到着を報せに来た。

 

「失礼します。王、客人がお見えです」

「彼の家族か」

「はい」

「通せ」

「はっ」

 

客人を玉座の間へ招く。

 

 

玉座の間へ向かう途中、彼女達は。

 

「必要なら仕方ないけど、今のあの子に使われるのは釈然としないわ」

「仕方あるまい、任務だ」

「権力利用しまくってる奴って嫌いなのよね」

「乱用してるわけでもないんだ、そう怒るな」

「…ふん」

 

やがて、二人は玉座の間へ辿り着く。

 

「入れ」

 

王の部下のその一言で、中へ。

 

 

玉座の間。

彼女達の前には王と、その付人の二人がいた。

鬼の子と、龍の子。

 

「招集に応じ、参上した」

「…」

 

二人は王の御前で、膝をつき、頭を下げる。

二人を前に、王は立ち上がり、階段を下りる。

 

「頭を上げよ」

「はっ」

「…」

 

二人は頭を上げ、立つ。

 

「会えて嬉しいぞ、モーガン、ネメリダ」

「久しぶりだな、ガードル…いや、王と呼んだ方がいいか」

「好きに呼べ、よく来てくれた」

 

モーガンはいつも通りに、ネメリダは少し不愉快そうな表情を浮かべていた。

 

「来てくれたということは、今回の作戦の説明を聞いてくれるという事でいいか?」

「構わない、内容によっては俺もネメリダも断るつもりだ」

「余程の内容じゃなければ、断るつもりよ」

「構わない、では作戦の内容を伝える」

 

地球で発生しているエーテルの暴走、それにより生まれたエネミーの討伐。

討伐部隊に二人を加えたい事を伝える。

 

「対象は地球の衛星、月だ。そこにエスカ・ダーカーの親玉とも言える存在、エスカ・ファルスがいる。それを討伐してほしい」

「エスカ・ダーカーの存在は知っている。それの親玉となれば相当苦戦するだろう、メンバーは?」

「そこの二人、正、可能であればお前達二人と…あとは上層部が決めるだろう」

「私達とその他ね…平気なの?」

 

上層部の人選に任せていいのか、そういうことだろう。

 

「問題ない。穴があれば俺が出る」

「…私はいいわよ、出るわ」

「俺も構わない、引き受けよう」

「ありがとう、それではこれより作戦メンバーに加える。追って部下に連絡させよう」

「わかった」

「失礼するわ」

 

ガードルに頭を下げ、二人は玉座の間を出ていこうとする。

 

「お前達が居なければ俺の作戦は成り立たない、頼むぞ」

 

釘を刺すような、重くのしかかる言葉。

しかし、それ以外のプレッシャーを与えない言葉。

 

「…わかっている」

「重々、承知してるわ」

 

二人は玉座の間を出ていく。

王は、何を言うまでもなく、彼らを見送った。

 

 

「別に仕事をしているだけのようだが」

「…前言撤回」

「珍しいな」

「別に権力乱用してるわけじゃないしね」

 

ネメリダはガードルの事が少し気がかりだったが、今回会って少し安心したようだった。

 

 

二人を見送り、王は再び玉座へ腰を降ろす。

 

「…ティアマト」

「ここに」

 

ティアマトを呼ぶ。

 

「部屋に行く。ここを頼む」

「御意」

 

玉座を離れ、自分の寝室に向かう王。

 

「マル、来い」

「御意」

 

マルは指示通り、王の後を着いていく。

 

 

王の寝室、豪華で、それでいて無駄なものは置かれていない部屋。

羽織を脱ぎ、椅子に掛ける。

 

「ふー…」

「お疲れ」

「おう…あいつらが承諾してくれてよかった」

 

そこにはいつものガードルの姿があった。

 

「モーガン先生はなんで?」

「打たれ強いレンジャーが欲しかった。それとあいつは本番に強いからな、医者だし」

「ふーん、ネメリダさんは?」

「あの人はファイターだ、多彩な武器を扱える。何より手数が多いし、決める時は決める人だからな」

 

二人を選んだ理由をつらつらを語る。

そこに裏はない。

 

「よく考えてるな」

「当たり前だ、引き受けたからな」

「先輩はなんで選んだんだ?」

「言うまでもないだろ、即戦力だ。必要ならサポートにも回れる、必要なら攻撃にも参加できる、ここまで理想の戦力はないだろ。それに…」

「それに?」

 

ガードルは振り向き、マルを右目で見る。

 

「エスカ・ダーカーの弱点属性は風と光、恐らくエスカ・ファルスも同じだろ。あいつの幻依は風だ、いざという時には便利だろ」

「ほんと…よく考えてんなぁ」

「お前が考えなしに突っ走るだけだ」

「いてっ」

 

軽くマルの腹を殴るガードル。

その光景は前にも見れた兄弟の光景。

 

「お前は幻依できるし攻撃面で期待できるからな、ティアマトは言わずもがな、ってとこ」

「じゃあ…期待には応えるぜ」

「頼むぜ、弟よ」

「あいよ、兄さん」

 

拳を合わせ、笑う二人。

以前と変わらぬ兄弟の絆が、そこには確かにある。

 

 

面影は ~変わらぬ王

アークス上層部。
二年前とは違い、様々な議員等で構成されてはいるが、市民を守る為、惑星を守る為の組織としてはいまいち力が足りなかった。
上層部に所属しているヴァムシュライトやイエンツ達の進言もあり、アークス内から市民、そしてアークスの組織力を大きくあげる特命部が設立された。
その特命部にいる部長、つまり部の一番上の者を選任し、彼らは次第に力を強め、アークス総司令の一つ下である存在まで地位があがった。
特に野蛮な事をしているわけでもなく、特に卑怯な力を使うわけでもなく、彼らはただただ、市民達を守る為に力を振るった。
結果、今の地位へと辿り着いた。
総司令の一つ下とはいえ、彼らの力を強く、特命部の部長は「王」とまで言われるようになった。
数多の防衛戦、市街地襲撃の際の市民の誘導、敵を圧倒的に殲滅する采配。
それを指揮していたのは人より比較的小さな身体を持ち、人を統べるセンスを兼ね備えた彼であった。
 
「王、導者がお見えです」
 
部下より連絡を受ける王。
その姿は黄色の髪と黄色の羽織を羽織った小柄の子。
 
「通せ」
「はっ」
 
無駄な言葉はなく、圧を掛けるでもなく、部下へ指示を下す。
やがて導者と呼ばれる女は彼の御前へ行く。
王と呼ばれた彼を前に怯むことはなく、ましてや頭を下げる事もしない。
 
「久しぶりね」
「王の御前である、控えよ導者」
「構わん、許す」
 
側近の一人を下がらせる王。
導者の無礼を無礼とは捉えない。
 
「失敬」
 
部下は王の半歩後ろへと下がる。
王は玉座に座り、導者を見つめる。
 
「久しぶりだな、正」
「見違えたわガードル」
 
王はガードル。
導者は正であった。
 
「挨拶はこれくらいでいいわね、本題に入るわ」
「内容を述べよ」
 
過去のガードルからはほんの少ししか感じ取れなかった威厳。
それが今や王としての威厳となり、放たれる。
 
「地球のエーテルの異常値、最早暴走と言っても過言ではないそれを討伐対象にしてほしいと本部より依頼が入ったわ。願わくば、その作戦の指揮を黄王ガードルに就いてほしい、と」
 
少し、ほんの少し考えた後、ガードルは返事をする。
 
「聞き入れよう。指揮は俺が引き受ける」
「返事、確かに」
「前線にはお前と、俺の鬼を寄越そう」
「確かに。本部を伝えるわ」
「穴が出た場合、俺が出る。異論は認めん」
「承知したわ、失礼するわね」
 
彼らは簡潔な会話を終え、作戦の実行へ動いていく。
 
「マルとティアマトを呼べ」
「はっ」
 
彼は最も信頼する彼らを呼びつける。
作戦に彼らは必要不可欠。
 
 
本部。
正はガードルの言葉を伝える。
 
「戦力は…バランスを保った方がいいだろうな」
「正よ、今回はお前にも出てもらうが、かのキャストにも要請を出すか?」
「好きになさい」
「…いらない、ということか?」
「彼がいなくても作戦は成功するわ。王の言葉から彼の名前は出てこなかった」
 
正は書類を置き、席を立つ。
 
「選ぶか選ばないかはあなた達の自由、好きになさい。私はただ、ヒントを与えるだけよ。あなた達にも…彼らにも」
「…そうか」
 
正はそのまま、会議室を出ていく。
全てを導く彼女は導者として、仲間を導いていく。
 
 
ガードルは最も信頼する者を側近としてではなく、従者として側に置いている。
その従者である彼らは部屋を出て、王の御前へ向かう。
 
「…時間だ」
「行くか」
 
二人は、王を守るべく、王を支えるべく動く。
 
 
全の上に立つという事 ~統率せし王