昔の歌集を見ていたら 北海道の旅が目に留まった。一つ一つの短歌を見ていると あ
のときの光景が其のまま目の前に現れる。懐かしくなって 今日は 十六年前の短歌を
載せることにした。出発地は 新潟の直江津港から船でまずは 北海道の岩内港へ
波の間に時折黒き影見せて遠き海原鯨はゆけり
夕ぐるる岩内港に汽笛鳴らし船は入りゆく一日の過ぎて
緑濃き丸き山なみ愛でおればキタキツネ出でぬ我が目の前に
大豆畑馬鈴薯畑の続く原羊蹄山は長く裾引く
夏服に冷え冷えとする層雲峡柱状節理の奇岩断崖続く
夏服に一枚入れ来し長袖のブラウス放せず昨日も今日も
営林署の保養所なれば部屋広く煙突付きのストーブのあり
北の果てここが網走オホーツク夏の海辺に流氷を想う
うらがなし近々と見る島影は北方領土羅臼に来たれば
国後の島影間近に見える丘「チロヌップのきつね」思い起こせり
夏空にエメラルドグリーンの光り放ち深く鎮もる摩周湖の水
褐色に実りし麦畑丘に続き機械にて易々刈り取られゆく
暗き小樽明るき小樽垣間見る多喜二啄木慎太郎の書
大学生と高校生の娘を連れて 一週間、宿は一つも決めず マイカーを船に積んで出か
けた。札幌を過ぎた頃 車のエンジン部分が故障、急遽レンターカーを借りて 旅を続け
た。色々あったが 楽しい旅となった。短歌は 読むとそのときのことが 鮮明に浮かん
でくるので不思議だ。