【Kside】
「こんばんはー」
4人での収録終わり。
手越に呼び出された俺は1つ残していた仕事を片付けて車を飛ばしてきた。
奥の個室にいるというのでそこに入ると、手越は出来上がっていた。
机の上に散らかったビールや焼酎の空き瓶。
「おおっ!慶ちゃんじゃーないっ?!」
あはは...めんどくさ。
「そうだよ~慶ちゃんですよ~。てか手越が呼んだんでしょ」
「あんま気にしないの!ほら飲め飲め!」
手越に促されるようにビールを頼む。
正面を見れば、そんなに強くないのに焼酎をストレートで流し込むバカがいる。
こりゃ酔うわ。
「なんで今日そんな荒れてんの?」
「んええ??」
「いや、そんなに雑な飲み方しないのになって」
「んあ~...ふふっ」
「なんか、あった?」
微笑みで動揺と暗い影は隠せない。
手越がこんなに酔うまで忘れたいこと。
こんなに酔わなくちゃいられないこと。
吐き出させてあげるのが俺だと思う。
手越の言葉を待っていると、いきなり
「けーちゃーーん」
と揺れる声で抱きついてきた。
キスするんじゃないかってくらい近かった。
まあ押さえたけど。
「はいはい~大丈夫よ」
背中を優しく叩く。
俺を抱き締める腕に力がこもった。
「大丈夫じゃない...」
聞こえるか、聞こえないか。
それくらい小さい声で手越が否定した。
距離をとろうとするとこのまま!と強く止められた。
「あのね、けぇちゃん、俺ね...」
「うん」
酒のせいかいつもより温度の高い温もり。
抱き締めてると俺も落ち着く。
...
頭をよぎる、違う温度。
だめだ、手越いるのに。
分かってるんだけど、一度思い出したら
細胞の一つ一つが覚えてることを主張する。
ここで幸いだったのは、手越が言いにくそうでずっと沈黙してたこと。
お陰で落ち着く時間もできた。
「うん、どした」
戸惑いを振り払うように頭を撫でる。
...なんか、悪いことしてるみたい。
「あのねぇ...」
間をおいて
「俺、まっすーに告白しちゃった」
...え
「えっ」
動揺は隠せず声になる。
その声に驚いたように細い肩が小さく揺れた。
なんで酔ってるのにそこだけはしっかり聞き取れるんだろう。
告白した?まっすーに?
えええ...急展開。
手越がまっすーに恋情を抱いてるのは知ってた。
俺とシゲで相談受けてたし。
でも、告白はしないって言ってたからビックリで仕方ない。
「なんでいきなり...」
「うん、俺もね、いう気はなかった」
落ち着いてきたのか比較的はっきりした口調で説明を始める。
手越が言うには、
告白する気は無かったが、この気持ちを隠してまっすーといるのは
嘘をついてるようで嫌だったらしい。
そんなまま仕事を続けてられない。
自分としても終わらせたい。
そう考えてまっすーを呼び出し、
「9月まで好きでいさせてほしい」
とお願いした。
らしい。
手越は俺から離れて日本酒を空けている。
飲み方もぐちゃぐちゃだ...。
「なんで付き合って、じゃないの?」
「ん~一定期間でも付き合うとさ、忘れらんないじゃん?
このまま恋人でいたいって...」
「そう...?」
「うん。俺のこと好きじゃないのに付き合ってほしくないし、お試しなんて逃げみたいでしょ。だから」
無理したような明るい笑顔が逆に苦しい。
なんか...俺がモヤモヤするわ。
「手越はさ」
「うん?」
「夏の間だけで忘れられるの?」
完全に手越の動きが止まる。
気まずそうに、迷ったように視線を落として考え込む。
これは、多分だけど、できない。
こういうときの手越は妙に強がる。
このあと続く言葉は
「忘れられるよ!当たり前でしょ」
だ。
それが出来ないことは本人がわかってても。
自分で言ったことだし、忘れようと努力もすると思う。
でも、そうしようとするほど意識しちゃう人だし苦しむタイプ。
で、結果好きなまま引きずる。
見えてるんだよね。
「...忘れられるよ!当たり前でしょ」
ほら。
「...ほんと?」
「うん」
「でも何年も前から好きなんでしょ」
「それは...」
「そんな簡単に忘れちゃうの?」
長年悩んでそれでも好きで。
そんな恋をいきなり夏の間だけにすることって、俺ならしたくない。
できない。
「それこそ逃げじゃない...?」
言ってから気づいた。
なんで俺は手越のことを追い詰めてるんだろう。
まっすーと関係が変になっちゃったって相談をしたいはずなのに。
落ち込んだように俯く手越に慌てて謝る。
「ごめん!つい...」
「いいの。慶ちゃんのいう通りだし」
「ごめんね...」
「でもさぁ、なーんで俺は意識しちゃうかね?」
「んー...」
告白しただけであんなに分かりやすいんだし
まっすーが不思議に思わないはずはない。
「でもなぁ分かるよ。好きな人の前で態度変わっちゃうの」
「慶ちゃんも分かりやすいしね?」
さっきまで俯いてたと思えないイタズラっぽい笑みで手越が見つめてくる。
人の恋路は好きなんだから...。
「はいはい。とりあえず、今日はのも!」
大人の忘れかたって飲むこと。
お酒で流すこと。
手越もそんな気遣いに気づいてくれたのかやっと笑って酒を煽った。
行動的な手越がちょっとだけ羨ましかった。
「こんばんはー」
4人での収録終わり。
手越に呼び出された俺は1つ残していた仕事を片付けて車を飛ばしてきた。
奥の個室にいるというのでそこに入ると、手越は出来上がっていた。
机の上に散らかったビールや焼酎の空き瓶。
「おおっ!慶ちゃんじゃーないっ?!」
あはは...めんどくさ。
「そうだよ~慶ちゃんですよ~。てか手越が呼んだんでしょ」
「あんま気にしないの!ほら飲め飲め!」
手越に促されるようにビールを頼む。
正面を見れば、そんなに強くないのに焼酎をストレートで流し込むバカがいる。
こりゃ酔うわ。
「なんで今日そんな荒れてんの?」
「んええ??」
「いや、そんなに雑な飲み方しないのになって」
「んあ~...ふふっ」
「なんか、あった?」
微笑みで動揺と暗い影は隠せない。
手越がこんなに酔うまで忘れたいこと。
こんなに酔わなくちゃいられないこと。
吐き出させてあげるのが俺だと思う。
手越の言葉を待っていると、いきなり
「けーちゃーーん」
と揺れる声で抱きついてきた。
キスするんじゃないかってくらい近かった。
まあ押さえたけど。
「はいはい~大丈夫よ」
背中を優しく叩く。
俺を抱き締める腕に力がこもった。
「大丈夫じゃない...」
聞こえるか、聞こえないか。
それくらい小さい声で手越が否定した。
距離をとろうとするとこのまま!と強く止められた。
「あのね、けぇちゃん、俺ね...」
「うん」
酒のせいかいつもより温度の高い温もり。
抱き締めてると俺も落ち着く。
...
頭をよぎる、違う温度。
だめだ、手越いるのに。
分かってるんだけど、一度思い出したら
細胞の一つ一つが覚えてることを主張する。
ここで幸いだったのは、手越が言いにくそうでずっと沈黙してたこと。
お陰で落ち着く時間もできた。
「うん、どした」
戸惑いを振り払うように頭を撫でる。
...なんか、悪いことしてるみたい。
「あのねぇ...」
間をおいて
「俺、まっすーに告白しちゃった」
...え
「えっ」
動揺は隠せず声になる。
その声に驚いたように細い肩が小さく揺れた。
なんで酔ってるのにそこだけはしっかり聞き取れるんだろう。
告白した?まっすーに?
えええ...急展開。
手越がまっすーに恋情を抱いてるのは知ってた。
俺とシゲで相談受けてたし。
でも、告白はしないって言ってたからビックリで仕方ない。
「なんでいきなり...」
「うん、俺もね、いう気はなかった」
落ち着いてきたのか比較的はっきりした口調で説明を始める。
手越が言うには、
告白する気は無かったが、この気持ちを隠してまっすーといるのは
嘘をついてるようで嫌だったらしい。
そんなまま仕事を続けてられない。
自分としても終わらせたい。
そう考えてまっすーを呼び出し、
「9月まで好きでいさせてほしい」
とお願いした。
らしい。
手越は俺から離れて日本酒を空けている。
飲み方もぐちゃぐちゃだ...。
「なんで付き合って、じゃないの?」
「ん~一定期間でも付き合うとさ、忘れらんないじゃん?
このまま恋人でいたいって...」
「そう...?」
「うん。俺のこと好きじゃないのに付き合ってほしくないし、お試しなんて逃げみたいでしょ。だから」
無理したような明るい笑顔が逆に苦しい。
なんか...俺がモヤモヤするわ。
「手越はさ」
「うん?」
「夏の間だけで忘れられるの?」
完全に手越の動きが止まる。
気まずそうに、迷ったように視線を落として考え込む。
これは、多分だけど、できない。
こういうときの手越は妙に強がる。
このあと続く言葉は
「忘れられるよ!当たり前でしょ」
だ。
それが出来ないことは本人がわかってても。
自分で言ったことだし、忘れようと努力もすると思う。
でも、そうしようとするほど意識しちゃう人だし苦しむタイプ。
で、結果好きなまま引きずる。
見えてるんだよね。
「...忘れられるよ!当たり前でしょ」
ほら。
「...ほんと?」
「うん」
「でも何年も前から好きなんでしょ」
「それは...」
「そんな簡単に忘れちゃうの?」
長年悩んでそれでも好きで。
そんな恋をいきなり夏の間だけにすることって、俺ならしたくない。
できない。
「それこそ逃げじゃない...?」
言ってから気づいた。
なんで俺は手越のことを追い詰めてるんだろう。
まっすーと関係が変になっちゃったって相談をしたいはずなのに。
落ち込んだように俯く手越に慌てて謝る。
「ごめん!つい...」
「いいの。慶ちゃんのいう通りだし」
「ごめんね...」
「でもさぁ、なーんで俺は意識しちゃうかね?」
「んー...」
告白しただけであんなに分かりやすいんだし
まっすーが不思議に思わないはずはない。
「でもなぁ分かるよ。好きな人の前で態度変わっちゃうの」
「慶ちゃんも分かりやすいしね?」
さっきまで俯いてたと思えないイタズラっぽい笑みで手越が見つめてくる。
人の恋路は好きなんだから...。
「はいはい。とりあえず、今日はのも!」
大人の忘れかたって飲むこと。
お酒で流すこと。
手越もそんな気遣いに気づいてくれたのかやっと笑って酒を煽った。
行動的な手越がちょっとだけ羨ましかった。