さて、『ブエノスアイレス午前零時』、続きの2幕目。
幕開きはニコラスが淫売酒場の前でミツコと出会うシーンから始まりやす。
店の前で行き倒れている少年のような姿のミツコを見つけ、例の台詞、
「まだ子供じゃないか」「ここはおまえみたいな子供が来るところじゃない」と
ミツコを追い払おうとするんやけど、「ここがいい」と言うミツコの勢いと土下座
に負け、娼婦じゃない仕事があるかもしれんとミツコを拾うことになりやす。
後のシーンで、この時ミツコは初めてニコラスに会うわけやなくて、
自分でニコラスに見つけてもらうべくそこに居たことがわかりやす。
ここでミツコは自分のことを覚えているかの賭けとして、キーアイテムの
花札をニコラスに向かって差し出す訳でやんすが、全く覚えてなかった
ことで、ミツコの顔が一瞬やけど曇ったような気がしやした。
そして、マルコーニ殺害事件から5年後、ニコラスが刑務所から出所して
きて、酒場へとやってくるシーン。
マルコーニからファンへボスが変わり、人生が変わってしまった人達が
紛れる酒場でミツコを探すニコラス。
「ミツコはいないわ、だけどいるの」という禅問答のようなラウラの台詞に
導かれるように、真っ青な生地に黒の模様が入った(ミッドナイトブルーを
表しとるのか?)ドレスに身を包んだマリアが登場しやす。
この姿が何とも艶っぽくキレイで思わずハッ
としてしまいやした。
先ほどの少年っぽいミツコの影はどこにもなく、ミツコの名を捨て、
No.1娼婦となっとるマリア。
声のトーンもグッと低くなり、ドスの効いた声で喋り、ニコラスに見せつける
かのように輩どもを誘惑してタンゴを踊るマリアの姿に、ニコラスならずとも
ショックを受けてしまいやした。![]()
このシーン、ホントは逢いたくて仕方なかったニコラスが目の前におるのに、
一瞬たりともその想いが窺い知れない鉄壁の悪態ぶりというか、娼婦であり
ボスの女であるマリアを見せとって、すごいなぁ…と思ってしまいやした。
カッコ良かったっす、マリア。![]()
そんなマリアの姿を信じられず夜な夜な酒場に足を運ぶものの、お金もない
ニコラスは全く相手にされず袋叩きにあって追い出されるんやけど、それを
冷やかに見送るマリアの表情に少し哀しさが見え始めた気がしやした。
つまみ出された後、偶然出会わした浮浪者を殺してしまい、思わぬ大金を
手にしたニコラスが、その金でミツコを買うとファンに申し出る。
しかし、自分のモノで看板娼婦がいなくなるのは困ると逆に返り討ちに遭い
かけた時、マリアが「1時間そのお金で自分を買ってもらう」と助け船を出す。
二人きりになった途端、マリアからミツコに戻って、自分はここを出る訳には
いかないから逃げてくれと懇願する。
訳が分からず自棄になりミツコを押し倒した瞬間、ミツコの哀しそうに呟いた
「あなたも同じなのね…」の言葉に、我に返るニコラス。
そこで、ミツコがニコラスとのホントの出会いを語り始める。
小さい時から船で生活しとった自分は物心ついた時から娼婦で、それが当たり
前やと思っとったのに、偶然船で出会ったニコラスを誘った時に、
「まだ子供じゃないか」と手も出さず、一緒に遊んでくれたことが本当に嬉しくて
自分が唯一持ってる花札をあげようと思った時にも「大事なものだろ」と言って
受けとらなかったニコラスをあの時から愛してしまったと。
そして、その後ブエノスアイレスでニコラスを見かけ、花札一つだけを持って
船を降りたのに全然覚えてくれてなかったけど、あの時と同じ言葉をくれた。
自分の無垢な部分に気づいてくれて、大事にしてくれていることで自分は
十分救われているからニコラスはここから逃げて自由になって欲しいと。
それなら二人じゃないと意味がないとニコラスに手を引かれ逃げようとするが、
ファンという壁に阻まれてしまう。
一度は一緒に行こうとしたマリアも、ファンから一緒に行けない理由が、
ニコラスの保釈金をミツコがファンに借金して用立てた為に、自ら娼婦と
なって働き始めたのだとばらされ、ここに留まる決意をしニコラスと離別する。
と言うかなりの長回し的な印象のあるこのシーン。
ミツコの感情が爆発するシーンだけに、台詞も結構あったし美織ちゃん的には
山場となる場面やったと思いやすが、圧巻でございやした。![]()
ミツコの感情が手に取るようにわかり、思わず…![]()
ラスト前、大団円のタンゴのシーン。
いつの間にかニコラスになってしまっとるカザマとマリアがタンゴを踊り始める
と、カザマの前にミツコもやってきて三人でタンゴを踊りやす。
三人で…と言うよりは、カザマの中でミツコとマリアが一つになった瞬間を
表現しとったかもしれやせん。
マリアの原田さんも鮮やかなブルーのドレスで、ミツコの美織ちゃんも同じ
ブルーの背中が開いとるドレスで、二人ともとってもキレイでやんした。
このタンゴが何とも切なくて、キレイで、もっと観てたいなぁ…
と思わせる
ダンスシーンでやんした。![]()
そして、ミツコに渡されたナイフでカザマが空を切った瞬間、ミツコの目が見え
なくなり、マリアが息を引き取り、見るべきもの(ニコラス)しか見えなくなった
盲目のミツコとして一つになったのかなぁ…と勝手に解釈しやした。
マリアと言う名前を選んだんは、自分がニコラスを救いたいって思いもあった
からやと思うけど、周りからマリアと呼ばれることでその気持ちを忘れない戒め
の意味と、ミツコって名前をニコラスだけのものにしときたかったってことも
あるんかもなぁ…とも思いやした。
さてさて、この舞台が初舞台となった美織ちゃん。
舞台を観る前から、ツィートなんかで良かったという感想を目にはしとったん
やけど、その枕詞として“初舞台の…”というのがついとるのが少々気には
なっとりました。
初見、美織ちゃんに集中出来んかったと書きやしたが、俯瞰で観ると、
どうやっても原田さんのマリアのウエイトと言うか、存在感が大きかったと
思うんで、正直その分身的な捉え方になってしまったとこもあったかなと…。
物語の枠がわかり、美織ちゃんに集中して観た二回目は、細かいトコまで
観たこと、自分が感じる心を準備して臨んだことで、ミツコという役がグッと
クローズアップされてきた感がありやした。
一人だけ浮いとる感もなかったし、って言うか、むしろカンパニーの一員として
普通に舞台に溶け込んどったし、もしそう感じた瞬間があったとしたんやったら、
それは美織ちゃんがってことではなく、ミツコがその場に馴染めとらんってこと
やったとオイラは思いやす。
なので、初舞台なんやけど、あまりそこを売りにして欲しくなかったかな…
ってのが正直な感想でやんす。![]()
ともかく、今回の舞台、いろんな表情を魅せてくれた美織ちゃん。
とっても可愛くて、いじらしくて、切なくて、哀しくて、かなりカッコいいミツコを
生きてくれたと思いやす。
舞台はナマモノとは良く言ったもので、演者側の出来の善し悪しもあれば、
受け取る観客側の善し悪しもある訳で、そこのところが舞台の難しいとこ
やろうと思いやす。
映像の芝居とは違い、始まってしまったら最後まで幕は降ろせない。
まさにShow must go onでやんすから、今回みたいに長丁場のお芝居
は未経験やし、毎回同じミツコでいようとすることは大変やったと思いやす。
今回周りの演者さんたちは、ほぼ百戦錬磨の舞台経験者ばかりやったから、
初めてやった分美織ちゃんは苦労も多かったやろうけど、先輩方の胸を借り
て得るものはその何倍もあったんやないかと思いやす。
まずは、お疲れ様と言いたいです。
もちろん素敵な演技を魅せてくれたんで、何の不満もございやせんが、
残念ながら今の段階では、おまつのように『舞台の方が絶対にいい
』と
思うレベルまでは達しとられません…。あ、もちろんオイラの中でだけでやんす。![]()
がっ、間違いなく『次の舞台も観てみたい
』と思える舞台女優さんが誕生した
と感じとりやすんで、機会があれば貪欲に舞台にチャレンジしてもらって、
是非とも『舞台の方が絶対いい
』と思わせてくれる女優さんになって欲しい
と切に願っとりやす。
でも、折角デビューしたのに力を入れてこれんかったLAGOONの
活動にも期待しつつ、また来年の活躍を楽しみにしたいですな~。![]()
と、いうことで今年最後の記事upでやんした。
読んで下さった皆様ありがとうございやした<m(__)m>
良いお年を~![]()

