「ゆうちゃん、先お風呂はいる?」
「ううん、なぁちゃんから入りな?」
「じゃあ、お先に失礼しますっ!」
「ちゃんと温まってね?」
「はーい」
家に帰ってからすることと言っても、ご飯はお店で賄いを食べるし、洗濯物も大抵はクリーニングに出してしまう。
飼い主さまは、最近お片付けもできるようになったし、のんびりソファでくつろぐことにした。
「ゆーちゃーん。上がったよ」
「ん、じゃあ、私も入ってくるね?」
「いってらっしゃい!」
なぁと入れ替わり私もお風呂に。
お風呂と言っても、昔からの癖で、シャワーを浴びてすぐ出てしまう。
カラスのぎょーすいってなぁが言ってた。
まぁ、汗と汚れさえ落とせればそれで十分だし。
「…またゆうちゃんは!ちゃんとお風呂入ったの!?」
「はいったもん、ほらちゃんと濡れてる」
「濡れてちゃダメでしょ!こっちおいで、ドライヤーしてあげる」
「…それ嫌い」
「そんな顔してもダメでーす。いい加減慣れてく
ださーい」
これもいつもの流れ。
髪なんて濡れてても困らないのに、いっつもドライヤーで乾かされる。
音うるさいから嫌なんだよね。
「はい、おしまい。
髪綺麗なんだから、大事にしなよ?」
「なぁの方が髪綺麗じゃん」
「え?私はもう染めすぎて傷みまくってるから」
「ううん。キラキラしてる。綺麗」
「…ありがと」
なんか照れてたけど、まあいいや。
「なぁ、もう寝る?」
「うん、寝ようか。…あ、ごめんちょっとまって電話」
チラッと見えた画面にはなぁのお客さんの名前。
お仕事だから仕方ないけど、本当はお客さんと電話なんてしてほしくない。
私に気を遣ってか、寝室を出て寒い廊下で話してる。
でも、ちょっとだけ声が聞こえてる。
(…なんかムカつく)
「ありがとね、またお店来て欲しいな」
「なぁ、まだ?もう眠い」
電話越しの相手に聞こえるように、なぁの耳元で喋る。
「ゆぅ…!?」
<奈々さん?誰かいるんですか?>
「あ、ごめんね、もう切らなきゃ!またお店で待ってるね?それじゃあ!」
「…ゆうちゃん!ダメじゃん!」
「怒ってる?」
「怒っては、ないけど」
「じゃあいいじゃん」
「危うくゆうちゃんの名前言いそうになっちゃったじゃん」
「いいんじゃない?ゆうのこと放って電話してる方が悪い」
「嫉妬してくれたんですか?」
「べつにーー。もうゆうは眠いので寝まーす」
「あ、待って待って!なぁも、なぁも寝ます!」
2人でベッドに入れば当たり前のように抱きしめられる。
「ゆうちゃん、ゆっくり寝てね。おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
オデコにちゅっとキスされ、温かい腕の中で眠りについた。