腹腔鏡手術では臍から腹腔鏡用のカメラを挿入して手術を行います。

手術部位にカメラを近づければ拡大視野で手術を行うことができ、開腹手術よりも良好な視野で行うことも可能です。

しかし一方で臍を視点とした可動域に制限されてしまうというデメリットもあります。つまり、横から覗くという視野が苦手です（たとえば、子宮が大きな時の膀胱の剥離や、傍子宮組織の処理など）。

（下図参照）

斜視鏡を用いるという方法もありますが、片手で鉗子を操作している場合は片手で斜視鏡を操作するのは難しいです。

腹腔鏡のカメラは広角レンズのため、対象物を右端に置くと、左側から覗くようにみることができ、対象物を左端に置くと、右側から覗くように見ることができます。（下図参照）

対象物を正面で見た場合、えんぴつの左右の文字が半分程度読める

対象物を右端に置いた場合、左から覗くように見えるのでえんぴつの左側の文字が読める。

対象物を左端に置いた場合、右側から覗くように見えるので、えんぴつの右側の文字が読める。

一般的に腹腔鏡手術では、手術操作部位を術野の中心にする、いわゆる【センタリング】を強調され教育されることが多いと思います（私がそうでした）。通常の場面ではたしかにそれが大切ですが、みたい部分が死角になり見えにくい場合では広角レンズの特性を生かしたカメラワークが大切となります。

この手法を用いることでいままで見えにくかった部分（特に直腸側腔の展開、広汎子宮全摘などの深部での膀胱剥離や直腸剥離など）を見ることができより精度の高い手術が可能となると考えます。

腹腔鏡カメラワークのTIPS