「アメリカのマルクス主義」の解説(後編)

2022年2月12日

 

(ソース:Harano Times 2022/02/11)
皆さん、こんにちは。

今回の話は、アメリカの保守派学者マーク・レヴィンが書いた、「アメリカの共産主義(マルクス主義)」を紹介する内容の後半です。
まだ前半を見ていない方は、是非、先に前半をご覧下さい。
前半で皆さんに紹介した内容に引き続き、この本の中でマーク・レヴィンは、何故共産主義はダメなのかについて話をします。これは、彼の学者であるがこその特徴です。
一体何が問題なのかを、理論的に解説しています。


本当の共産主義国家で生活した事がある人、又は、共産主義によって生活が、人生が破壊された事がある人にとって、共産主義はダメという事は経験から分かる事です。
でも、一度も共産主義に破壊された事がない多くのアメリカ人に、何故共産主義はダメなのかを知ってもらう為には、分かり易い説明が必要です。
彼の説明を簡単に纏めますと、先ず、マルクス主義が生まれた時から、資本主義は消滅すると予言しました。
しかし、資本主義は崩壊するどころか、他のどの経済制度よりも多くの富を作り出しました。
マルクス主義経済学の基本概念は、剰余価値理論です。
この理論を聞いた事がある人も多いと思います。
資本が、労働力を使って製品を生産する過程での労働量は、労働者の生活に必要する労働と、それを超える剰余労働から構成され、この剰余労働によって生み出された価値が剰余価値です。
マルクスは、資本家はこの剰余価値を独り占めして、富を構築していると主張しています。
でも、労働者の労働だけで、莫大な価値を構築する事が出来るのか?
違います。もし、その理論が正しいなら、工場労働者が一番多い、発展途上国が最も豊かな国である筈です。
単純に労働者がいるだけで、企業は利益を作る事は出来ません。
労働者以外に、資金、アイデア、適切なマネージメント等、沢山の要素を組み合わせた結果、マーケットが受け入れられる商品を開発する事が出来て、そのコストを回収して、利益を作る事が出来ます。
でもマルクスは、資本家は剰余価値を持って行ったので、労働者は貧乏で、資本家はお金持ちになっていると説明しています。
企業の高い利益は、労働者に対する搾取ではなく、労働者の高い給料、良い福利厚生、安全な労働環境と、もっと多くの仕事の機会に繋がります。

ここで少し、補足の説明を入れたいと思います。
資本主義という単語は、今、多くの人にとって聞こえが良くない単語になっています。どの制度にもダメな所があります。
でも、今存在する経済制度の中で、資本主義だけは、人間の本能を、社会を良くする為に使う制度です。資本主義のダメな部分を制限する為に、法律やルール、民主主義等を併せる必要があります。
例えば、企業の高い利益は、労働者の高い給料に繋がると言うと、ブラック企業を思い出す人が出てくると思います。
確かに、一部の企業は利益ばかり追求して、労働者の利益を考えません。
でも、シッカリ法律が守られている市場経済で、多くの企業がシッカリと基本ルールを守っていれば、労働者は条件が良い企業を選ぶ事が出来ますので、企業も良い労働者を惹きつける為に、条件を良くする良い循環が出来ます。
でも、基本的な部分が守られないと、資本主義の悪い部分が出てきます。
今迄、出来るだけ資本主義の良い所を引き出す為に、そして悪い所を制限する為に、様々な国が色んな制度設計をしてきました。
ですので、資本主義が悪いと言うより、その使い方が悪い、又は、正しい制度を作らなかった事や、正しい制度を破壊した人、又は、組織が悪いと言った方が、より正しいと思います。

本題に戻ると、基本、資本家と労働者はどちらかと言うと、お互い依存する関係であって、対立する関係ではありません。
農民と地主も同じです。
共産主義者は、彼らの間に対立関係しか存在しないと主張して、お互いを戦わせようとします。
マーク・レヴィンは、アメリカの今迄の繁栄は、アメリカの自由、資金、アメリカ人の想像力等の沢山の要素が総合的に作用した結果、生まれたモノであると言っています。
多くの人にとって、これは常識の様なモノですが、では何故、沢山の人が姿を変えた共産主義思想に騙されるのか?
共産主義者は人を集めた後、出来るだけ、その集まりをカルトの様な集団にします。
プロパガンダ、嘘等を使って、人を騙します。
それと同時に、そのグループの中に違う意見が存在し、人が議論する事を禁止するという原則を徹底します。つまり、違う意見を失くす事は、その様な集まりが存在し続ける必要条件になります。
アメリカの保守派は、出来るだけ議論して、問題をハッキリさせる事・・・をしますが、左翼は違う意見を失くそうとします。違う意見を失くす事によって、自分の支持者の頭に、違うアイデアが入っていく事を失くします。
又、アメリカの共産主義者は、直接政権を取らないようにします。自分が政権を握って、政権が倒れると、責任をとらないとイケナイので、実際に政権をとっている人を煽ったり、脅迫したりして、何か問題があれば指導者を倒しますが、自分は未だ自分のポジションを守る事が出来ます。

過去のソ連や、今の中国を見ると分かりますが、共産主義陣営はハッキリしています。でも、アメリカの場合は、状況が違います。誰が共産主義者なのか、それが共産主義組織なのかは、ハッキリしていません。曖昧です。
誰も、自分は共産主義者だと言いません。アメリカに正式な共産党は存在しますが、そこまでメンバーがおらず、アメリカではほぼ影響力がありません。
でも、それと同時に、数えきれない程、様々な分野での進歩主義者、進歩主義組織が存在します。
民主党は左翼政党ですが、では、民主党は共産主義政党なのか?勿論、そうではありません。民主党内部でも陣営が分かれています。
ですので、アメリカの共産主義は、一言でハッキリ説明出来るモノではありません。多くのアメリカ人はこの状況に巻き込まれて、共産主義思想を支持していきます。
では、アメリカのこの混乱で曖昧な共産主義の背後に、本当にこの状況を分かっている、この状況を作り上げている人は存在するのかと言うと、存在します。
マーク・レヴィンが出した結論は、アメリカの本当の共産主義者は基本、アメリカの大学にいるテニュア(終身在職権)の中にいると言っています。テニュア(終身在職権)というのは、分かり易く言うと、終身雇用資格を獲得している大学の教職員です。

アメリカの共産主義に関するドキュメンタリー、「アジェンダ」を作成したカーティス・バウワーズ(Curtis Bowers)さんは、自分の若い頃の話をした事があります。
彼の教授は毎年、共産主義者の会議に参加していましたが、或る年、彼の教授はどうしても予定が合わなかったので、彼は教授に頼まれて、UCバークレーに行って、共産主義者の会議に参加しました。
その会議に参加する前、彼はその様な会議に参加するのは、やる事が無い若者だろうと考えていましたが、しかし、会場に行って分かったのは、その会議に集まっていたのは、髪が白くなり、スーツを着用して、ビジネス・バッグを持っている大学の教授である事が分かりました。
彼のその実際の経験は、マーク・レヴィンの判断と一致します。

では、マーク・レヴィンの根拠は何か?

この本の第3章から読み難くなります。その後は、彼が、その判断をした根拠を説明する為に引用した多くのアメリカの教授たちの、今のアメリカの様々な進歩主義思想を推し進めている思想や、理論について書いています。
彼の話によると、アメリカの大学で、共産主義を支持する事や、共産主義思想を謳う事には全くリスクがありません。大学は、共産主義者の縄張りになっています。
アメリカの大学にいる共産主義者の終身教授は、自分の優位性を使って、自分の思想と合う人を引き寄せて、アメリカの大学を共産主義者の縄張りにしている為、アメリカの大学にいる保守派の教授の数は、かなり減っています。
彼らは、マルクス主義がアメリカで成功する事に関する、大量の論文や本を書いています。
マーク・レヴィンは、それらのアメリカの大学にいる共産主義終身教授たちは、今のアメリカ社会に存在する様々な形になっている共産主義思想の背後にある頭脳であると言っています。

ここまでの話を聞いて、もっと闇が存在するはずだ。認識が浅い。闇について触れていないから面白くない、と思う人もいるかと思います。
この様な思想はとても重要です。思想があって、行動が生まれます。勿論、違う意見があるのは良い事ですので、是非、ご自身の意見を皆さんと共有して下さい。
では、それらの教授の思想は何処から来たのか?そのルートは何処にあるのか?
彼は3人を選びました。その3人は、ジャン・ジャック・ルソー、ヘーゲル、そしてマルクスです。
この3人の思想に存在する共通点は、個人の自由を犠牲にし、グループ全体に奉仕すべきという考え方と、存在しない社会に対する幻想・憧れです。
これから少し、思想家の思想の話が出てきますので、面白くない部分もあるかもしれません。でも、最後の結論を出す為に、必要な話になりますので、是非、最後迄聞いて下さい。

先ず、ルソーの思想では、
「社会の発展は不公平である」
「法律は、お金持ちの資産を守る為に出来ている」
だから、この社会は「お金持ち」と「貧乏な人」に分かれて、「貧乏な人」は永遠に貧乏なままであるという考え方があります。
勿論、今の社会で考えると、これは間違いです。
それ以外、社会の官僚システムは「強者」と「弱者」を生み出し、「強者」は更に強くなって、「弱者」は弱くなっていく。「強者」と「弱者」の階級が出来た後、法律に守られている利権の任意な拡張に繋がり、「主」と「奴隷」が出来る。
その後、社会に問題が生まれて、革命が生まれると主張しています。
この考え方をシッカリ考えると、繋がりが無い事が分かります。又、その後の部分は、革命が生まれて合理的な社会が出来ると言っています。
ルソーは、「アレはダメ、コレはダメ」と言って、合理的な社会が出来ると言いました。でも、ルソーは死ぬ迄、その合理的な社会はどんな社会なのかについて、話をしませんでした。

次の思想家ヘーゲルは、「個人の幸福・自由等は、国家・社会からしか得る事が出来ない。社会が進歩したら、個人が自分の価値を実現する事が出来る。その素晴らしい社会の前で、個人は重要ではない。」と考えています。
この話を聞いて、納得する人がいるかもしれません。では、それはどういう社会なのか、ヘーゲルは定義していません。

その次の思想家マルクスは、「人間社会の発展は階級間の闘争である。資本家と労働者の間に、調和出来ない対立が存在する。」と言っています。「この対立が緩和出来ず、いつかそれが爆発して革命が起きる。革命を起こして初めて理想の社会が出来る。」と言っています。
又、「その間、既存の資本主義社会が暴力によって破壊されて、新しい平等な社会が生まれる。」と言っています。
先ず、マルクスはルソー、ヘーゲルと同じ様に、その平等な社会はどんな社会なのかについて話をしていません。
又、今迄マルクス主義者が、次から次へと沢山の国を破壊してきましたが、その代わり、破壊された社会しか残っていない事が事実です。
共産主義者の暴力によって社会が破壊された後、残るのは、その暴力に頼る独裁政権だけです。彼らの幻想に存在する平等な社会なんて、存在していません。

この話をすると、中国は成長したと思う人が出てくると思いますが、中国の経済が成長した根本的な理由は、資本主義を取り入れて、世界のマーケットに入ったからです。
改革解放を始める前に、中国も崩壊寸前でした。レーニンが共産主義革命を起こして、全てを破壊してソ連を作った後、社会をどう運営すべきかを知らなかった時も、社会の崩壊を避ける為に、新経済政策を打ち出しました。その本質も資本主義です。
鄧小平が共産党の崩壊を避ける為に始めた改革開放も、そのレーニンの新経済政策を参考にしています。特に、新しいモノではありません。
国が破壊され、崩壊する前に、自分の政権を守ろうと思うと、結局、資本主義に頼る事になります。
ルソー、ヘーゲル、マルクスは、既存の社会を批判し、もっと素晴らしい世界が存在すると信じています。
彼らの思想に基いて、この社会を破壊した人が得たのは、破壊された後に残った廃墟しかありません。勿論、その廃墟の上でも、良い生活が出来る人もいます。
例えば、北朝鮮のトップ。でも、多くの人の生活は破壊され、本当の廃墟になってしまいます。

今、アメリカにいる共産主義者は、全力でアメリカを破壊しようとしています。

でも、その先にあるのは、既存の世界が破壊された後に生まれる、誰も見た事がない新しい世界ではありません。
彼らを待っているのは、どんな世界なのか?既に証明されています。

 

【動画】

アメリカの本当の共産主義者、共産主義者の頭脳は誰なのか?どこにいるのか?共産主義はなぜダメなのか?「アメリカのマルクス主義」