早いものです。当時、私は高校1年生。東京へ行ったのも生まれて初めての紅顔の田舎少年でしたが、今や厚顔の変態オヤジになってしまいました(恥)。でも、心はあの日のままです。(←むしろタチ悪いぞ)
生まれて初めて行ったコンサートがこれだったこと、そしてもちろん、この歴史的なコンサートに行けたことは、私の人生における最高の財産です。
そもそも、生まれて初めてのコンサートのオケが東京交響楽団だったなんて、なかなか贅沢です。
私が座った席の2列前に、あろうことか伊福部先生ご夫妻が鎮座ましましておられるのに気付いた次の瞬間には、体が勝手に動いてサインを頂きに行ってました。
でも、田舎の少年のそんな不躾な振る舞いに対して、先生は快く応じて下さったばかりか、私のフルネームを訊かれてサインに書いて下さいました。
その時、私は心の中で、感激のあまり号泣しながら「一生ついて行きます!」と誓いました。
このコンサートの翌年に発売されたライブ盤のレコードの解説には、以下のような一文があります。
「今後最低50年間は、伊福部ファンはどんな事があっても悲しみに耐えて生きてゆけることができるであろう。このライブ盤がある限り。」
ええ、そうですとも。まして、実際にコンサートに行った人間にとっては。
ええ、耐えてきましたとも、どんな悲しみにも。伊福部先生ご自身が天国に旅立たれたという最大の悲しみも含めて。
ええ、耐えていますとも、今まさに。
当時は、50年なんて遥か遠い未来のことだと思いましたが、気がついたら最低有効期間の半分を過ぎ、残り20年になってしまいました。
50年経った時って、俺、65歳かよ…。
でも、相変わらずなんだろうな…。
あの日の最後に演奏された『ロンド・イン・ブーレスク』のラストのコーダの残響音は、今も私の心の中に残っています。