『午前十時の映画祭』、熊本・光の森の最終日に観てきました。なぜか、娘と一緒に(困)。
確かな手腕で人間を描く巨匠デヴッド・リーンが、そのキャンバスをスタンダード画面からワイドスクリーンに変えた初めての作品。今回の題材は、戦時下での人間の生き様、そして戦争の愚かさ。
やはり、これは映画館のスクリーンで観るべき作品ですね。
今回のプリントは、近年作成された修復版。初公開当時は赤狩りたけなわ(?)の頃だったので名前が出せなかったマイケル・ウィルソンとカール・フォアマンが、脚本担当として正式にクレジットされているもの。
この作品と言えば『ボギー大佐』が“主題曲“として定着していますが、改めて観てみると、この曲がきちんと出てくるのは本編中の2ヶ所。しかも、イギリス軍の兵士たちが吹く口笛という、いわゆる“現実音楽”扱い。サントラ盤に、ミッチ・ミラー合唱団による演奏(松たか子が出てくるビールのCMに使われた、あのバージョン)が収録され、シングルカットもされて大ヒットしたという事実はありますが。
本編中で度々流れるのは、この曲をベースにした『クワイ河マーチ』で、これは主人公であるニコルソン大佐のテーマモチーフとなっています。メインの登場人物がほとんど戦死し、せっかく完成した橋も木っ端微塵に吹き飛ばされ…という、戦争の虚しさを見事に描いたラストシーンに、この曲が高らかに流れるのは、いわゆる「対位法」ってやつでしょう。伊福部昭大先生が、映画音楽の手法の一例としてよく挙げられていたものですね。悲しい場面に悲しい音楽を付けるのは当たり前過ぎ。悲しい場面に明るい曲を付ける(例えば、主人公が死にかけているところで、幸せだった頃の思い出の曲をかけるとか)と、かえって悲しさが強調される、みたいな。
で、そのラストシーンなんですが、一部始終を見届けた軍医が、戦争の本質をたった一言で見事に言い表した名ゼリフ「Madness! Madness!」の字幕が、「バカな!信じられん!」というのは…。「狂気だ!」は使えないんですかね?あの訳じゃちょっと弱いと思うんだけどなあ…。そこだけが、ちょっと残念。
小学5年生の女の子にはちょっと難しくて退屈だったとは思いますが、「戦争はダメ!」ということだけは