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大学2年生になったのに1年生の必修課題を
見事に落としていて、それを受ける為に
教室の前で授業が始まるのを待っていた。
あたしがあの時に着ていたのはつなぎで、
教室の前の壁にもたれて座っていた。
上の階から1年生達が降りてきて、
あたしは居た堪れない気持ちで教室に入った。
一人一人自己紹介をしていった中で、あたしは
あの人の名前だけは一度で覚えたんだ。
『フランス語を選んだきっかけは、サンテグジュペリの
“星の王子さま”をフランス語で読みたいからです。』
あの頃あたしは19歳。
最初の授業から数日経った4月18日、練習をした帰り。
選手は辞めていたけれど滑りたくて、わざわざ電車に乗って
門限を破っていたけれど帰宅途中。
高田馬場駅の地下鉄の階段を下りていると、細い男性が
あたしのわきを追い越した。
後姿だけで、あの人だって分かった。
「ねぇ、フランス語で同じクラスだよね?」
あたしから、話しかけた。
「同じ方向なら一緒に帰らない?」
なんて大胆な事をしたものだろうと、今でも思う。
「電車の中で、いつも何をしているの?」
「えっと…本を読んだりしています。」
「あぁ、あたしもそう。」
「え!?」
「本を読むようには見えない?(笑)」
「いや、そうじゃなくて、大体の人は僕が『読書好き』って言うと
えらいね、とか言うから。」
「本を読む事がエライの?(笑)ただ好きだから読んでいるだけじゃない。」
「どんな本が好きなんですか?」
「大量殺人とか、多重人格とか、そんな本。なんだか自分と
紙一重な気がするから。」
それから、何故だろう。
まるで磁石のN極とS極が自然に近づくように
あたしとあの人は距離がどんどん近くなっていった。
あたし達の間にあったのは、なんだったんだろう。
何故あんなにも、お互いに惹かれてしまったんだろう。
分かっている。もしあの日に出逢わなかったとしても、
未来のどこかで、あたし達は出逢っている。
4月18日。
あの人はパーティーを途中で抜け出してきて、その途中で
偶然あたしに出逢った。
あたしは練習の帰りで、遊びの誘いを断って、その途中で
偶然あの人に出逢った。
あの人はあたしに出逢った事を、何かの策略だと勘繰った。
あたしはあの人に出逢った事を、運命の一つだと信じ込んだ。
どうして手放してしまったんだろう。
あんなにも愛していたのに。
これから先、あたしは誰の事も愛する事が出来ないの。
だって心を盗まれてしまったから。
あの人を愛したように、誰か他の人を愛するなんて、
そんな事はきっと、もう出来ない。
命を捧げてもいいと思った。
「一緒に死のう」って言われていたら、二つ返事でOKしてた。
来年の今日。2003年に約束した約束。
6時に、高田馬場駅の地下鉄ホームであの人ともう一度会うの。
約束は破っちゃいけない。
4月18日。あたしの運命の日。
ちょっと日記でも…。
一日部屋でダラダラして、夜にはヴィッキーのパーティーと
シンディーの誕生日会があって、でもそれを抜け出して
ホテルのバー(唯一ネットがつながる場所)で勉強をしている
佐野緑です、こんばんわ。
ここに座って勉強を始めてすでに3時間。
1時間半前までは静かだったのに、合同パーティーが
バーに移ってきてしまって、見事としか言いようがないほど
周囲は見慣れた顔がずらり。で、五月蝿い。
で、何かと話しかけてくる。
ちなみに講義は楽しいです(笑)
先週はあまりに殺人的なショースケジュールで
全く勉強が出来なかったのだけれど、今週のオフで
先週の分も巻き返してやろう、と意気込み中なんです。
あたしってエライ。