〇まえがき
地方創生が日本社会における課題の一つとして挙げられるようになって久しい。地理的にも内容的にも多岐にわたるテーマである以上、長期戦となることは必至である。民間が自治体とタッグを組んだ新しい挑戦が成功事例となるケースも幾多と知れずある。また、地方自治体や政府が海外事例も参考にしながら法整備や条例の導入を積極的にはじめている。しかし、根本的な問題解決、即ち包括的浸透には程遠いように感じる。"上"から目線の地方創生ではなく、地方からの地方創生でなければ地方創生の名に値しないからである。そこで、地方からの地方創生が活発化しないことについて人的要因と質的要因を考慮しなければならない。

1.盾と化した空論
地方創生の主役は各市町村、さらには各自治会単位である。そしてその間の切磋琢磨によってより質の高い都市計画を練ることができるのは自明である。しかし、「外野が関与すべき」でない、或いは「競争を阻害してしまう」を理由にして国や都道府県が実務に全く関与しない判断が適切であるとは言いきれない。多くの市町村は新しい挑戦をする体力を持っていないゆえ、新しい動きを始めたいと思う人や企業があってもその芽が潰されてしまいかねない。ゆえに、国や都道府県は「外野」ではなく、一方で主導者でもなく、時に「部下」、時に「保護者」として投資にかかる相談や街づくりの人的または質的支援を行う責任を負うべきだと考える。ちなみに、道州制の下では国が真の意味における外野となり、道や州が支援者、市町村が主体となる構図となり得るし、わかりやすく良い事であるが、現代日本における現実性を考慮してここでは議論を回避する。続いて競争の阻害についてであるが、国や都道府県の関与が競争の阻害となるほど市町村の動きが活発化すれば、それほど素晴らしいことはない。だが、現実は競争以前の問題である。つまり、「競争の阻害」は現実に存在しないことを前提とした空論であり、関与による不本意な対立や安易な支援や誘導による失敗の責任を回避したい国や都道府県の責任逃れであると言っても過言ではない。現に、イギリスの広域自治体の中には、投資を前提とした街づくりにかかる相談窓口が設けられ、HPには専用の電話番号やメールが記載されていたり、基礎自治体との連携、そして民間へのサポートを積極的に行っている。民間の育成や市町村の自立を唐突に促すのではなく、都道府県が責任をもって市町村区を巻き込んでいくべきであると考えている。

2.宗教と化した枠組み
日本国民である以上都道府県と市町村区の構成員である。世界最古の国である日本は3千年の歴史を持つ。一方で、百年程度の歴史をもつにすぎない市町村区の形式的枠組みが必要以上に意識されてきたのではないかと疑う。大阪市外は大阪市内に指一本触れさせないというような過去の大阪の例がその究極であり、高速道路事業の半世紀にわたる凍結や不便な地下鉄新線の原因は全てそこに帰着し得る。そのような枠組みを単なる枠組みに過ぎないとして、広域の視点から都市計画を策定した結果、人流や物流が活性化し、飛躍的に大阪の都市の魅力が向上したといえる。そしてそれは紛れもなく松井知事と当時の橋下市長による政治的成果であるといえる。そして、ヒト・モノの流れを意識した市町村区の枠組みに囚われない都市づくりが、各市町村の潜在能力の和を超えた成果をもたらし得るのは言うまでもない。大通りや河川といった軸および地域をもとに、民間投資をも前提としたビジョンを打ち出していくことも戦略の一つであるといえる。

3.人材育成の壁
地方創生には地域住民の協力と主体となる民間組織の存在が欠かせない。現在の日本において、民間組織が手を挙げなかったり、地域住民の理解を得られないことの背景には、教育課程においてそれらが全く関与していないからであると推測する。地域について学ぶ冊子を配布するのも重要であるが、IT化が進みITを扱う授業が爆発的に増加した今、地域理解のような流動的かつ多面的なテーマについて積極的に最新技術を活用し、少しでも多くの子どもたちの理解を深めていってもらうことが、最終的には大きな力となるのではないかと考える。TMOにおいても、人材不足が顕著であったともいわれている。特別な知識や教養が求められるものではないからこそ、大人と同じように主体的に地域の未来を考える人々の育成が必要とされる。 


4.日本版BID制度の明日
国に先駆けて大阪市が大阪版BID制度を導入して以来、この動きを負っている。ビッグスケールであり夢が広がる一方で、センシティブな部分もあり、非常に難しいが、持続可能な自治を行っていくために必要とされる制度であると考えている。海外事例も常に意識しながら、日本版BID制度の運用について考えていきたい。


5.責任の明確化

役所は、責任をとらなくて良い人事体系になっていることで有名であるが、これらはあらゆるところで大きなブレーキになっている。全責任と言うわけではなく、役所も含めて、まちづくりに関してしっかりとそれぞれの責任を明確にして、実りある地方創生を期待したい。


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