久しぶりの裏話シリーズです。

 

 

オリジナルが何語であっても、英日の翻訳者には英語のスクリプトが渡されるので、翻訳が可能です。でも、そのスクリプトの翻訳が間違っているのか、意味が通じないことがたまにあります。

 

 

元の言語のスクリプトがあれば "Google翻訳" でわかることがありますが、たいていはないので、そういう場合は流れから意訳するしかありません。← 申し送りに書く。

 

 

でも、オリジナルが英語であっても、スクリプトが違っていることがあるので要注意なんです!

 

 

映画やドラマなど製作側から回ってきたスクリプトは、セリフのとおりに書かれていることが多いのでさほどミスはありませんが、あとから作られる映像特典のインタビューやコメンタリーの場合は、きちんとしたスクリプトがあるわけではなく、自由にしゃべっているので、基本的にスクリプトは書き起こし(テープ起こし、文字起こしとも)になります。

 

 

日本語でも、聞き取りにくい話し方をする人や、理屈が通らない話をする人がいるし、文法や語彙の言い間違いなどよくあって、書き起こしは大変だと思います。

 

 

すごく早口だったりはっきりしていなかったりしても、正確に書き取れててすごいなあと感心することが多いのですが、たまに「あれ?」ということがあります。

 

 

今回のスクリプトには結構ありました。びっくりした間違いをいくつかご紹介します。

 

 

その1."We employed him."

 

 

悪者の話をしている刑事たちのセリフに書かれていたのですが、どう考えても刑事が悪者を雇うなんておかしい、というシチュエーション。

 

 

聞き直してみると確かにはっきりとは聞こえないけど、意味的にも "We'll meet the man who employed him." でした汗「ヤツを雇った人間に会いに行こう」ということです。しかもスクリプトは "We'll meet the man. We employed him." と2文になってて、全然違う意味になるところだった。

 

 

その2."I'll go to my car. It's legal there." 

 

 

直訳すると「私は自分の車に行く。それはそこでは合法だ」という意味です。これもどう考えても自分の車に行くことが違法の場所なんてありえないから変。

 

 

コメンタリーなので、映画を見ながら監督がしゃべり、セリフがよく聞こえないのですが、何となく夜の遊びの話をしてる。よく聞けば "Macao" でした。なーんだゲラゲラ

 
 
「マイカー」と「マカオ」、ずいぶん違うように思えますが、実はイギリス英語では「車」の「カー」が何と「カウ」に聞こえることがあるんですよ!

 

 

私が若かりし頃、イギリスでホームステイしていた時に、ホストマザーが「カウを買いに行く」と言っていて大ビックリしたことがありますびっくり なんで牛??と思って「カウ?」と聞き返したら「イエス, カウ」と言いながらジェスチャーをしたので、車のことだと分かった次第笑

 

 

だから、この書き起こしをした人は逆に「マーカウ」と聞こえて "my car" のことだと思ったのでしょう(でも変だって気づけよ!)

 

 

その3.”his Carter" 

 

 

カーターといえば男性の名前なのに「彼の」がつくのはどういうことはてなマーク

 

 

思わず、"Carter" に何か特別な意味や隠された意味でもあるのかと辞書を引きまくる・・・が分からない。

 

 

で、画面と音で確認すると、空手をやっているシーン。確かに「カーター」と聞こえるけど、何のことはない日本語の「型」のことだと分かり、思わず笑ってしまった爆笑 

 

アメリカ英語なら "R" の音が入るから別ですが、イギリス英語だとホントに「カーター」とカタカナの発音に近いから、確かに区別はつきにくいけど・・・これも書いてて "his Carter" はおかしいと思わなかったのかなあうーん

 

 

その4."He's riding a heavily pregnant mayor."

 

 

極めつけはコレ!

 

 

「彼は妊娠中の市長の上に乗っている」ほえ~~~ゲッソリ 彼=ダーティーハリーばりに暴れる刑事。ついに妊娠中の女性市長に乱暴を?!

 

 

いや、画面はいたって平和に馬に乗るシーン。へ? "mayor" に「雌馬」の意味があるのか?と複数の辞書を引くも、どれも「市長」としか出てこない。

 

 

で、辞書を逆引きして「雌馬」で引くと "mare" と出てきました!で、よく聞くと「メイヤー」ではなく「メア」と聞こえる。なーんだゲラゲラ  これもネイティブなら変だってわかりそうなミスでした。

 

 

 

 

"He's riding a mare."   × mayor

 

 

私はディクテーションで鍛えたのと音声学も勉強したので、英語なら結構聞き取れるほうではあると思いますが、それでもネイティブじゃないから、スクリプトが違ってると思わぬ苦労を強いられます。

 

 

でも、文法的におかしいなと思ってミスを見つけることも多くあり、スクリプトの確認には リスニング力文法力 がとても大事です。近年、文法を軽視する向きがありますが、ちゃんと英語を理解するために文法は必要ですよ!何度も書いてますが、マジで。

 

 

でも本当に困るのは固有名詞のミス!スペルが違うとリサーチが困難になり、余計な時間がかかります。

 


よく知らない地名や俳優名、映画名が違っていたり。

 

 

そもそも知らない人名だから無名なのかと思って訳出しないでいたら、ひょんなところから別のスペルで出てきて自国では有名な俳優だとわかったり。

 

 

タイトルが "○○Riders" なのに "○○Writers" になってたり。確かにそう聞こえるかもしれないけど、検索してもヒットしないからホントに困るんだけど。

 

 

私たちみたいに裏取りしないのかしら? 聞こえたまま書いてる? 

 

 

ただでさえ、映画の間ずーっとしゃべってて大変なのに、何十もの俳優の名前や他の映画のタイトルが出てきて、そのたびリサーチで裏取りして、その上スペルが違ってると泣けるえーん 

 

 

ふだん映画やドラマなら1日で映像20分ぶんできるのですが、今回は10分ぶんがやっとでした。久々に徹夜して今朝ようやく納品できました・・・汗

 

 

もね、人間だからミスはあります。

 

 

私だって、ずっと「離陸」と書いてて「着陸」も「離陸」にしてたり、「脚」を見せて誘惑するところを「足」とやってしまって、色気もなにもない字幕にするところだったり・・・滝汗  特に変換ミスは要注意です。

 

 

 

   

脚 = leg

 

 

 

 

足 = foot

 

 

だから、見直しはとても大事。今日も最後の1分1秒、ギリギリまで見直しました。ああ、何とか終わってよかった・・・泣くうさぎ