先日実家に帰ったとき、だいぶ前に買って放置していた 金田一春彦先生の『ホンモノの日本語を話していますか?』 という本を見つけて読み始めました。

 

 

 

 

私は英語を教えることを生業(なりわい)としていますが、日々教えていて英語はなんてシンプルで合理的なんだろう、と思います。

 

 

・英語は必ず主語や目的語をはっきり言う。しかも、第三者の話をするときに男性(he)か女性(she)かが分かる。

 

・冠詞や数詞を使うので、数が1つ(1人)なのか、いくつ(何人)なのか分かる。

 

・主語のあとにはすぐ動詞がくるので、「そうなのか」「そうではないのか」が最初に分かる。日本語は最後まで聞かないと結論が分からない。

 

・英語はロジカルで動作の主体がハッキリしている。日本語では「窓が割れた」というが、窓は勝手には割れないので英語では「窓が割られた」という言い方をする。(The window was broken.) 

 

 

などなど…言い始めたらキリがないくらい、言いたいことや動作の主体がはっきり分かる言語だと思います。

 

 

が、金田一先生によると、日本語の方が分かりやすいこともあるといいます。

 

・英語の he, she, は1人なら性別が分かるが、they で言われるとどちらが分からない(日本語では「彼ら、彼女たち」と言える)。

 

・男女の区別が話し方からは分からない。日本語には(最近少なくなったとはいえ)男言葉や女言葉があるから区別がしやすい。

 

・英語では兄弟を表すのに、わざわざ big borhter とか younger sister とか言わずにただの brother, sister としか言わないし、兄弟でもお互いを呼ぶときはファーストネームだから上下関係が分からない。日本語では「兄」「妹」とはっきりさせることが多い。

 

 

確かに、この話し方における男女の区別と上下関係の2点については、翻訳をするときにも大きくかかわってくる問題です。

 

 

英語では話者が女性だろうと男性だろうと同じような言い方をしますが、日本語に訳すときには男性か女性かによって、語尾を「~だ」「~だろ」などとするか「~よ」「~よね」などとするか考えて訳し分けることになります。

 

 

逆に、英語はどちらのセリフかが分かりづらいので、小説で he said, she said,が多用される。日本語の小説ではいちいち「~と彼は言った」と書かないので、これがあると翻訳調だと感じます。

 

 

また、英語だと上下関係が分かりにくいので、映画や1話完結のドラマならまだいいのですが、連続物のドラマの場合、どちらが兄か弟か決めないと、呼び方が決まりません。こっちが兄かと思って「兄さん」と呼ばせていたら、ドラマが進んでいって弟だと分かった、などという失敗例もあるようですチーン

 

 

表記についても、日本はひらがな、カタカナ、漢字と、世界でもまれにみる複雑な文字体系を持っていますが、それによって非常に読みやすくなっていることも事実です。

 

 

これは、数秒で読ませる字幕にも言えることで、パッと見たときに3種類の文字が混ざっている方が読みやすい。逆にひらがなや漢字が続くときには、半角を開けて読みやすくする工夫をしているくらいです。

 

 

文字情報を読むとき、アルファベットばかりの文字列を読むよりパッと見、日本語の方が速く読めるのは確かです。新聞の見出しなど特にそうです。

 

 

それと、数字の読み方。

 

 

日本語は10進法で数えるので、「いち」から「じゅう」まで行ったら、「じゅういち」とまた「いち」から繰り返すだけでいいですが、英語は「ワン」 から「テン」まで行って次は「テンワン」にならずに「イレブン」を覚えなければなりません。

 

 

よく聞く話ですが、フランス語はさらにめんどくさい。70は「60足す10」という言い方で、80は「4かける20」という言い方をするそうで、これでは計算が速くできません。

 

 

日本人は計算が得意だとよく言われますが、これは数を言い表す文法がすぐれているからだ、と金田一先生は強調しています。

 

 

ただ、数字の計算は簡単ですが、数の数え方(単位)は難しい。1つ、2つ・・・、1円、2円・・・、1本、2本・・・、など、「ひと、ふた」と言ったり「いち、に」と言ったり「いち」が「いっ」になったりして複雑です。外国人泣かせと言えるだろう。英語なら何を数えるにも、「ワン、ツー」だけで済みます。

 

 

金田一先生は、日本語研究の第一人者なので「日本語は優れていて素晴らしい言語だ」と日本語のいいところを強調されており、英語の方がカッコいい、優れていると言ってなんでもかんでもカタカナ言葉を使おうとする今の現状を憂いておられます。

 

 

が、そうはいっても「店」よりは「ショップ」、「カバン」よりは「バッグ」の方が高級感がアップするのは否めないし、横文字の方がなんだかカッコいいと思うのは仕方のないことです。

 

 

アメリカ人だって、イギリス英語にコンプレックスを感じているし、フランス語の方が高級感があると思っているフシが多々あります。逆に、最近は日本語がカッコいいと思う外国人も多く、変な漢字が書かれたTシャツは大人気滝汗

 

 

みんな異質なものへのあこがれというのがあるのでしょう。

 

 

ただ、言語はどれもその国の歴史や文化、生活、ものの考え方など、いろいろな要素が絡み合ってできており、どれも一長一短、完璧な言語などないのだから、どれが優れているとか分かりやすい、とかいうことは言えないだろうと思います。

 

 

が、一方、日本語の方が優れている点もある、と認識しておくことも大事だな、と感じました。むやみに英語に対してコンプレックスを感じる必要はないですね~ニコニコ