『おいおい、勘弁してくれよ・・・・・』
六風内野手は自身の立ち位置に思わずそう呟いた。
投手である路西とその日、六風は初めて向かい合った。
といっても、投手と打者としてではない。
そもそも彼らは同じチームで戦う仲間だ。
ではどうして向かい合っている?
六風はマスクとプロテクター、レガースを身に着けている。
そう、彼は捕手、キャッチャーとして対峙しているのだ。
普段はセカンドから背中を、もしくはサードから横に目をやることはあるが
こんなことは初めてだった。
その日の試合、登録されていた捕手が全員ゲームから退いてしまい、
誰かがマスクを被らないといけなくなった。
六風自身はそこまで思ってないが、彼はユーティリティ・プレーヤーとして
内外野を守ることができる貴重な存在である。通常であればまだまだベンチに
置いておきたい重要な選手だ。その器用さが彼にとっては幸か不幸か、
首脳陣からの白羽の矢が立った。
イニング間の投球練習が始まる。捕手・六風としての試合が間もなく始まる。
(続)
