たびたび本ブログに出てくる太田愛氏の最新作です。
太田愛「天上の葦 上下巻」角川書店2017年
太田愛氏の最新作となる本作。上下800頁近くにも及ぶ超大作です。
今回もリンクURLを貼り付けておきます。
http://www.kadokawa.co.jp/product/321507000126/
以下、角川文庫上記URLからあらすじを引用します。
「白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。正光秀雄96歳。死の間際、正光はあの空に何を見ていたのか。それを突き止めれば一千万円の報酬を支払う。興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。そして老人が死んだ同じ日、ひとりの公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられる停職中の刑事・相馬。廃屋に残された夥しい血痕、老人のポケットから見つかった大手テレビ局社長の名刺、遠い過去から届いた一枚の葉書、そして闇の中の孔雀……。二つの事件がひとつに結ばれた先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!? 鑓水、修司、相馬の三人が最大の謎に挑む。感動のクライムサスペンス巨編!」
上巻から下巻へと読み進めるうちにだんだんと謎が浮かび上がりそして謎が解かれたと思いきや、新たな謎が浮上したり、解かれたと思っていた事が実は真実でなかったり・・・。紆余曲折を繰り返し、鑓水・相馬・修司の3人は正光老人が最後に指した青空に正光は何を見たのか、そしてその不可解な行動の意味とは何か・・・。徐々に解き明かされていく謎、見事なまでに回収される伏線。特に下巻は時間を忘れて読み耽ってしまいます。
本作は超大作の為、1日やそこらで読了するのは難しいです。しかし、読みごたえは充分です。読了後の爽快感や思索に耽る時間を最も長く感じ、考えさせられた作品であると思います。本作は、ミステリーの中にも現代社会へ向けたはっきりとした「警告」を孕んでいます。
秘密保護法制定ににぎわった世間。著者の太田愛氏はそんな社会に警告したかったのかもしれません。戦時中、大本営によって厳しく規制された報道・情報統制のような日本がくるかもしれない。作品中の正光老人の重い発言が心に残っています。最初は小さな点の火が、徐々に点が線となり、やがて風に煽られ大火となる。気づいたときには火にのまれている。
民主主義の基盤といわれる表現の自由とそれに付随する報道の自由。言論の自由。多くの人権がいつの間にか国家権力という抗う事のできない大権によって奪われ、気づいた時にはがんじがらめにされ身動きとれない。そんな世の中に一度日本はなり、戦争という大きな過ちを犯し、多くの無辜の血と涙と汗と原子爆弾の爪痕をこの地に残している国、日本。
もう一度考え直さないといけないと強く感じました。
次回以降、本作から感じ、個人的に考えをまとめたいという私欲ではありますが、本作が伝えたかったキーワードについて考え載せていきたいと考えています。
最期に本文中から私の心に残った正光老人の言葉を引用します。
天上の葦 下巻145頁「常に小さな火から始まるのです。そして闘えるのは、火が小さなうちだけなのです。やがて点として置かれた火が繋がり、風が起こり、風がさらに火を煽り、大火となればもはやなす術はない。もう誰にもどうすることもできない」「そして責任をとるのは常に次の世代です。」


