もはや何を話しかけていいのかわからない。
たまらない沈黙・・・
たまらなくなった俺はカーステレオのスイッチを入れる。
が、この選択はまずかった。かかってきた曲がさらにつらくなる。
偶然入っていたCDは大黒摩季だった。
「あなたがいればそれだけでよかった」
あなかが望む人になれなかった
もう一度だけ 泣いてもやり直せないんだね
あなたはずっとふたりでいたかった
いまさら何を悔やんでも仕方ないんだね
全体の歌詞はクグッてくれ。この歌詞ぐっときて思わず泣いた。
なんというチョイスwww
待ち合わせの場所まであと5分ほどの所まで来た。
いったん車を停めて助手席の涼子に話しかける。
俺「涼子。もうすぐお別れだから」
「色々ごめんな。ありがとう。」
あんまりしゃべったら分かれづらくなりそうで
これ以上は言葉が出なかった。
涼子は押し黙ったままうつむいて鼻をすすっている。
涼子「お別れのキス。最後のお願い」
そう言うと俺に抱きつき、鼻水混じりのしょっぱいキス。
しばらく涼子のキスは続いたが、諭すように引き離す。
涼子は何か言いたげに、口を開こうとしているが
思いとどまったのか、じっと俺を見つめた後うつむく。
あの時、涼子が言いかけてやめた言葉はわからない。
それから最後まで涼子が顔を上げることはなかった。
きっと顔を見たらつらくなるから
最後の言葉を言ってしまったら心まで離れそうだったから
待ち合わせの場所で、施設の先生に涼子を引き渡す。
俺はただ施設の白いワゴン車に乗り込む涼子を見ていた。
先生が何か俺に礼を言っているようだったが
あの時の俺にはまったく聞こえていなかった。
白いワゴンが動き出す。ただ黙って見送る俺。
涼子はうつむいたまま顔を上げない。
車に小さな体を揺られながら町の中へ消えていった。
最高
刑事「あ。ちょっといいかな」
俺「はい。わかってます」
刑事「一応事情を聞きたいので、任意同行お願いします」
俺「わかりました」
刑事の黒塗りの車のあとについて警察署へ。
任意同行なので自分の車を運転して行った。
取調室では担当の刑事が待っていた。
刑事「あ、すまんね。一応話聞かせてもらうから」
俺「はい」
隠してもしょうがないので、俺は洗いざらい
自分の心境も交えて淡々と話した。
刑事はうんうんと、うなづきながら黙々と調書を記入していく。
そうこうしているうちに昼が来た。
刑事「めし喰うだろ。行こうや」
刑事さんと一緒に警察署の近くにある定食屋へ。
刑事「いいから何でも食べな」
なんか優しい人だ。でも俺はとても今食べられる心境じゃない。
何とか、かけうどんだけ喉を通して再び取調室へ。
最後に調書の内容を刑事さんが読み上げ
調書の最後の所に同意の署名と指紋を押捺する。
取調べが終わってから刑事さんが説明する。
今話を聞いた限りでは、刑法犯に当たるような事案ではないと思う
ただし青少年健全育成条例違反。あと被害者からの告訴があるかもしれない。
行為に及んでいる以上、何らかの処罰はあると思っておくように
刑事「明日も事情聞けるか?現場ひととおり回るから一日かかるよ」
俺「はい」
刑事「お前学校はいいのか?」
俺「まぁ行ってないんで・・・」
刑事「おいおいしっかりせんか。親が泣くぞ」
まったく面目ない。
涼子は今どうしているんだろうか?
先生は優しそうだったが、叱責されてはいないだろうか?
親も来ているかも知れない。
どうなっているのか心配でほとんど一睡もできなかった。
二日目は刑事さんが朝家まで迎えに来てくれた。
パトカーか黒塗りの車を覚悟していたから
近所の人に見られたら嫌だなぁと思っていたが
刑事さん自分のマイカーで来てくれた。
ほんとに気を使ってもらってすいません。
二日目は「事件」の現場をひとつずつ回って
証拠として「写真」を撮影していく。
一箇所ずつ、俺が指差しして場所を示し
それを刑事さんが写真に撮影する。
最初の駐車場からカラオケ店・・・
良子と出会った時の記憶が生々しくよみがえってくる。
改めてほんのちょっとした運命の巡り会わせを感じる。
あの時俺が面倒がって出かけなければこんな事にはなってない。
もし出かけていなかったら涼子はどうなっていたか。
車中で刑事さんが色々気さくには話しかけてくれたが
俺はどこか上の空で、ぼーっと外の景色を眺めていた。
現場検証でホテルのところまで来た。
部屋に入ろうとしたが、あいにく使用中らしい。
刑事さんと車の中でしばし待つことに。
この時刑事さんから、色々な事実を告げられたのだ。
君なら大丈夫だろうからと話し始めた。
まず悪男だ。
すっかり忘れていたが、そもそも
こんな事になったのはあいつが原因だ。
愛川と一緒に俺たちの前から消えた後、
やはり同じくラブホテルに行こうとしていたようだ。
ところが悪男が大好きな、カーセクロスをしようとしたもんだから
愛川が激しく抵抗。悪男は愛川を掴んで軽く暴力したらしい。
愛川激しくビビって悪男の隙を見て逃走。
その日のうちに施設に電話して助けを求めたらしい。
こいつら最悪だ・・・
先に自分が逃げて帰るとはお騒がせなやつ。
悪男はまぁそういう人間だから驚かないが
涼子を強姦したうえに、愛川への強姦未遂と婦女暴行で
その晩家にいたところを速攻タイホされたようだ。
刑事さんが言うにはまぁ禁固刑確実。
一応当事者だから施設に話を聞きに行ったらしい。
悪男なんぞどうでもいい。俺が聞きたいのは涼子の状態だ。
一応奴は前科ものですからw
そういう意味で刑事さんもお知り合いw
涼子の捜索願について連絡とか行きそうなもんだけどなあ
そらそうなんだけど悪男も捕まり慣れてるし
警察への反抗もあるから、ずっとシラを切り通していたらしい。
なぜか俺には面倒見も良く優しかったから
それもあって黙秘してたと思う。
刑事さんは「いい娘だな。涼子ちゃん」と前置きした上で話してくれた。
俺の取調べが終わった後、施設に行ったらしいのだが
かなりつかれ切った様子だったそうだ。
おそらくずっと泣き続けていたに違いない。
それでも刑事さんの受け答えにはしっかり答えていたようだ。
服買ってやったって言ってたろ。
あれをな、一応証拠品だから見せてくれって頼んだんだよ。
ところがひざの上に抱えたまま離さないんだよ。
写真撮ったら返すからって言っても聞かないんだ・・・
もう返してもらえないと思ったんだろな。
何かこっちが無理やり取り上げる様になったからやめたわw
よっぽど気に入ったんだろうな。あの服。
俺泣きそうになる。
でな、帰り際にお前の事を聞くんだよ。
お前をかばってたよ。悪いのは自分だって・・・
お前を捕まえないでくれって、ボロボロ泣き出してな。
何だか俺が悪者にされちゃったよまったくw
俺泣いた。
:2012/01/23(月) 04:31:07.25 ID:xRaFPAtG0
重荷が降りたはずなのに引き離された後のあの虚無感はなんだったんだろうな…。
「お前も女の子あそこまで泣かしたんだから、心入れ替えてしっかりせぃ!」
助手席でうつむいていた俺の背中に、刑事さんのでっかい張り手が飛んできた。
その数日後、検察庁に呼び出され条例違反の罰金10万円を告げられる。
もちろんと言っていいか・・・涼子の側からの民事告訴もなく一連の手続き終了。
あっけない幕切れで、ぽっかり心に穴が開いた。
しばらくは何をしていても力も気持ちも入らない日々が続く・・・・
そうこうしているうち悪男から連絡が来た。
:2012/01/23(月) 04:42:03.20 ID:xRaFPAtG0
学校からは何も・・・知らないと思う。
とりあえず執行猶予付き保護観察処分。罰金は30万円らしい。
その上で悪男から提案。弁護士に言われたので
愛川と涼子、それぞれの親の所に慰謝料持って謝罪に行く。
慰謝料は俺が出すから、お前も付いて来いという話。
まぁ愛川はともかく、涼子の所は俺の方が長く拘束したし
礼儀として謝罪に行かねばならないだろう。
俺は悪男に同行する形で、涼子の両親に会いに行くことになった。
あの涼子に虐待を繰り返していた両親にだ。
涼子は母親似だった。
お母さんも小柄で、柔和な人柄が見える。グレーのスーツを着ていた。
問題は父親のほうだった。
他人に会うというのにTシャツに半ズボン、裸足でビーチサンダルだ。
こちらが挨拶している時でさえ、片足を投げ出したまま、手はポケット。
咥えタバコを嫌というほど煙らせながら、貧乏ゆすりしている。
こいつ最悪・・・この男が涼子をあんなにしたのか!
本来俺は謝罪に来ている立場なのに、沸々と怒りがこみ上げる。
俺「まだ学生で・・・」
涼子の父親は「ちっ」と舌打ちしたうえではき捨てた。
涼子父「あーあ、こりゃ慰謝料はずまんのぅ・・・」
俺「!」
コ ノ ヤ ロ ウ ブ チ コ ロ シ タ ロ カ
人生で初めて殺意が沸いた。
思わず立ち上がりそうになったが、ぐっとこらえて耐える。
もう怒りで我を忘れていたので、
この後何をどうしたのか全く覚えていない。
これじゃいくら涼子が立ち直ったって、帰る家がないじゃないか。
こんな親父の所に帰ってしまったら命さえ危ない。
改めて涼子が「帰るところがない」と言っていたのを思い出し
何とかしてやりたいとは思うものの、
その術を持たない自分が腹立たしく思えた。
涼子に偉そうに言ったくせに、俺は無力だった。
言葉だけで何もできない無責任な俺。
ただ失望感だけが残ってしまった・・・
手を出さなかっただけよく堪えたと言えるわ
俺はただ日常に流されていた。
あれからというもの、はっきり言って抜け殻だ。
涼子に会いたくて、一度は施設の前までは行ったものの
会ったところで自分には何もできない。むしろ涼子には酷だ。
それ以前に施設が涼子に合わせてくれるはずもなかった。
結局、学業に身も入らず、俺は大学を辞めた。
ただひたすら忘れようと、ひたすら倒れるまで働いた。
資格も取った。勉強しているよりは気がまぎれた。
ただ疲れ果てて何も考えられず寝て起きて。
いつしか生きることの目標も見失いかけていた。
頑張って
桜も散り、街は暖かな春に包まれていた。
いつも請求書ばかりの郵便ポストに
かわいいクマの模様の封筒が入っている。
何だろうと思いつつ、宛名の裏を返して驚いた。
涼子からだ!涼子から手紙が来た!
:2012/01/23(月) 05:30:51.22 ID:xRaFPAtG0
足がもつれながら急いで部屋に戻り封筒を開く。
涼子は、ここへつれて来られた時にしっかり
アパート名と部屋番号を覚えていたのだ。
住所と番地は不完全だったがきちんと届いている!
はじめてみた涼子の字。一生懸命だけど、かなり下手だw
手紙の内容は・・・
最初はつらくて泣いてばかりだったけど
あれからがんばって精神疾患を克服したようだ。
その後、あの両親は離婚、涼子は施設を出て母親と暮らしている。
定時制高校に通いながら、昼間はアルバイトで働いていると。
てんかんは直らないけど、もう怖くないから平気。
色々つらいこともあるけど、人の優しさがわかるようになった。
お母さんもそばにいてくれるから大丈夫。
何より涼子の心の中で、俺がずっと見守ってくれているから
もう泣き虫なんかじゃない。これからもがんばる。
そんな感じ。
腐っていた自分が情けなかった・・・
俺の間違った行動で、幼い彼女にたいへんな思いを
させてしまった事を改めて悔いた。
だが、それ以上に彼女の生き方が大きく好転したことを
喜ばずにはいられなかった。
お前さんがいたからあの子は頑張れたんだろう。
全部が間違ってた訳ではないと思う、人を活かすことをしたんだから。
数日間の出会いでも一生忘れられない男になったんだよ すげえよ あんた
いい仕事したな
消印は、涼子の実家の近くの町になっている。
住所が書かれていなかったのは単なる書き忘れではないのだろう。
おそらくこの春から新しい生活が始まったのだろう。
涼子なりに自分の自立の為の、決意の手紙だと察した。
そしてその涼子の手紙は俺の気持ちの整理にも十分なものだった。
結局、俺は涼子を助けたようで、自分が助けられたのかもしれない。
ひと通り読み終わった手紙を封筒に戻そうとして
封筒の中に何か残っているのを見つけた。
写真だ。
:2012/01/23(月) 05:57:09.71 ID:xRaFPAtG0
あの時の白いワンピースを着て、母親と微笑む涼子がいた。
俺「ありがとう涼子。大切にするよ」
そっと手紙を引き出しにしまった。
さぁ、明日からがんばるぞーーーーーーーーーーーーーーーー!
おしまい
ちょうど6時か。長々と皆様ありがとうございました。
1と涼子のこれからの人生に幸多かれ
おやすみなさい
嫁子とのだけ少しきいていい?
涼子とは連絡とってないのか…?
涼子とはそれっきり。ここであと追うのってヤボじゃん。
正直、今でも涼子は嫁にしたい理想の娘のまま。
俺は今、地方でフォトグラファー兼デザイナー(場末の広告屋だけどw)
なんとか食べてるよ。今日も仕事だ。
嫁は全然別人。俺って恐らく町内イチ女に優しいと思う。
今の嫁は涼子の事から5年後に出会う。3つ年上。子供はいま4歳。
それは、懲役一年六月執行猶予三年という悪男に適用された刑事罰について。
・悪男は涼子の処女膜を破っているのだから強姦致傷罪が適用されたはず(そういう判例がある)。
・強姦致傷は非親告罪だから、本人及び保護者の告訴が必要ではない。
・法改正があった2004年以前でも、強姦致傷罪の刑事罰は無期又は三年以上の懲役とのこと。
・もしも強姦致傷は適用されず、単純な強姦のみで処理されていたとしても、強姦罪は二年以上の懲役とあり、>>1の話を読んだ限り悪男には情状酌量の余地はないように思える。
・そして愛川に対しての強姦未遂諸々もあり、さらに前科もある等悪男の素行は非常に悪質。
果たしてこれで執行猶予三年で済むものなのか…。
教えて、法曹の人!
俺も悪男に根掘り葉掘り聞いたわけじゃないから詳しくわからないけど
実際にぶち込まれていないのは事実。
それなりの弁護士は雇っていたようだけど・・・
家が資産家という話は聞いたことがある。
ちなみに悪男とも今は音信不通。付き合いたくもないがw
行ったとしたらあの店員さんも話を聞かれたりしたの?
服屋さんは行ってない。
刑事さんが言うには、実際に犯罪相当の行為があった場所や
検察に送る上で事件の前後関係などにかかわる所が必要といってた気がする。
涼子はたぶん今生きてるなら27だな。
みんなほんとにありがとう!!!
乙~♪
オレもそろそろ寝るw
おつかれ!
お仕事いってら!
いい話をありがとう。
自分がどんだけ幸せか思い知ったよ
涼子の話聞けて良かった。
ありがとう>>1
みんなに幸あれ!