今日の日経新聞の「池上彰の大岡山通信」で、池上さんが先日亡くなった、宇沢弘文さんについて書いていました。経済学もきちんと勉強していない私ですが、宇沢さんについて一つだけ思い出があります。
あれは1997年ごろ。当時、ミネソタ大学大学院の学生でした。ある日、校内の掲示板を見ると、日本人の講演の告知、どうも経済学のよう。空いている時間だったので聴きに行きました。大教室は半分程度の観客。そこに登場したのが、この宇沢さんでありました。残念ながら英語、ちょっと聴き取りにくい声であったという言い訳も合わせて、私は話の中身があまり理解できず、さらに記憶の風化もあり、今では話の中身をまったく覚えていません。残念。当時から、もじゃもじゃのひげ。いったい、このおじさんは何者なのだろう、と無知な私は思って何となく聞いておりました。
最近の記事でようやく、ほう、そうであったか、と宇沢さんの偉大な功績を知る次第です。
今日の池上さんの記事では、「自動車産業の発展は日本経済にとって大事なことでしたが、交通事故や大気汚染などで、多額の社会的費用を生み出すことになるとは、指摘されて初めて気づくこと。」と書いています。
これを読んで、最近読んだ本のことを思い出しました。
「電気のしくみ 発電・送電・電力システム」 (佐藤義久 丸善出版)。
図書館の電気のコーナーにある本で、タイトルの通り、各種発電・送電などの仕組みを分かりやすく解説しています。たいへん面白い本です。
この中で、原子力発電と火力発電の社会的コストの比較があります。
最新鋭火力発電の熱効率は50%。
100万kw火力発電システムは、100万kwの電気と100万kwの排熱を排出と3,567t/hのCO2を排出。
原発は、法規制が厳しく、仕様をいじれず、熱効率の改善がずっとないとのこと。
発電効率33%。
100万kw原発システムは、100万kwの電気と200万kwの排熱を排出。ただしCO2を排出はゼロ。しかし高レベル廃棄物を生み出します。これの処理は、地中深くに長い長い年月閉じ込める必要があり、膨大なコストと、天災などで漏れ出すリスクを常に抱えます。
リスクはあっても、CO2排出がないのでクリーンエネルギーと言われることもある原発。
しかし、それすらも、火力の2倍の熱排出で温暖化の原因となり、やっかいな廃棄物を残す。
こういう話を聞くと、東日本大震災の事故の前から、原発の社会的費用は火力や石炭以上であったのではないか、ということが書かれています。
この本を読むと、できるだけ早く代替発電の仕組みを整備し、それに比例して原発を廃炉にし、いずれ原発ゼロにする、という方向に全力で進むべきかな、と思います。
これも、まだまだ一面からの議論で、見ていない側面があるのかもしれませんが、社会的に説明されていないこと、認識されていない費用、というのは確かにあるのだろうと思います。