今週火曜日、水曜日と日経新聞の経済教室に、民主党が制定に向けて検討中の公開会社法について、日本の法学会を代表する方が意見を述べていました。

最初が公開会社法の必要性をずっと主張してきた早稲田大学の上村先生。

2回目が中央大学の大杉先生でした。上村氏は公開会社法の必要性を改めて主張。大杉先生は、公開会社法案に盛り込まれた主張について、賛成する点と、疑問に思う点を述べています。

先ごろ決まった上場会社役員の個別報酬開示と並んで、企業側からして納得できないのでは、と思われる従業員代表を監査役にするという案には、野村氏も反対意見を述べています。

現実に日本の企業において、従業員代表が監査役の義務を効果的に果たせるか、というのは疑問です。それまで普通の従業員、任期が終わるとまた従業員という人が役員として機能するか。選ばれるような人は、とても優秀で評価も高い人物でしょうから、いずれ会社側(会社経営陣)が選ぶ役員として、役員会に戻ってくるのでしょう。大企業の組合専従と同じような立場のような気がします。しかし役員となると、いろいろインサイダー情報も得て、経営者側になります。従業員側との情報交換もできなくなるでしょう。従業員の視点で、一人できちんと判断、行動できるか。かなり厳しい立場であろうと思います。

大杉氏はまた、TOB規制の不備を唱えています。英国などのように、30%超の株式を取得するにはTOBを義務付け、さらに全部買い取りを義務付けるべきと主張しています。

一方で、現在法案で重視されている、親子会社規制には疑問を提示しています。この点はしばらく前の商事法務の巻末「スクランブル」に同様の説得力のある意見がありました。

TOBの件については、現在進行形のJCOMの件がよい例。KDDIはTOBを行わずに30%を取得、一方住友商事はTOBを行ったものの30%しか買いませんでした。TOB終了後株価は急落。応募しても外れた株主は何のメリットもないまま、主要株主だけが変わる結果になりました。

TOBに応募するには、会社の決めたひとつだけの証券会社にわざわざ口座を開く手間が必要。それをしても、買い付け上限があれば結局あたらず、買ってもらえない。株価はまた急落。そういうことなら、TOB期間中に値段が上がったところで売るしかないか、ということになります。その場合も全部買い付けでないと、株価はTOB価格までは上がらないようです。こういうケースが、少数株主の利益が軽視されている例でないでしょうか。


話題は違いますが、今朝の日経新聞で、世界で新たに本当の金融センターになりうる場所は、中東でもなく、香港でもシンガポールでもなく、東京であるという説がありました。それは運用される巨額の年金、長期資金があるから、ということでした。確かに、そういう要素はある。そこは東京の可能性、優位性の一つでしょう。

それがあっても、世界の金融センターになることが難しい要素も厳然と存在します。

言葉の壁もたしかに。世界中の市場参加者が、おおかた納得する原理原則(法・規則)ときちんとした運用。ここも、あるかといえば、ない、かけている点のような気がします。 ただ諸外国には完全なものがあるかといえば、決して、そうでもないと思います。だから難しいけれど、日本で必要な環境を整備できれば、金融センターになる可能性はなくはない、のだと思います。