商事法務から
経営者は経営判断の誤りで敗訴するケースは少ないものの、例外的に、整理回収機構が金融機関経営者を相手に起こした訴訟では、原告勝訴が多いのはなぜか? に触れています。
金融機関の経営者の場合、認められている裁量の幅が狭いことによる。
関連する法制による規制、監督官庁検査、指導などが一般企業より多く、裁量が少ない。
それだけに、裁量を超えた結果の失敗、というのが確認されやすい。
論文の結論は、日本の裁判では、経営判断原則の考え方は定着しておらず、企業経営者が裁判で敗訴することが少ないのは、裁判の進行上のテクニカルな要因による、というものです。
最後の結論部分は、あまり知らないことで 何とも言えません。
ただ途中の
「経営者の意思決定から生まれる結果は、一種の確率変数であり、たまたま事後的に下ブレした結果が生じたというだけで経営者に結果責任を負わせたのでは、経営に対する萎縮効果が発生する。そのような確率的な下ブレの損失は、当該企業に集中投資をしているためにリスク回避的になっている経営者ではなく、分散投資を行い、よりリスク中立的な株主に帰属させたほうが効果的な意思決定がなされる」 という部分はコーポレートガバナンスの絡みで面白いと感じました。
経営者は、特に日本の事業会社の経営者は、ビジネスマン人生の多くの時間のこの会社に捧げている。
報酬的には、社員よりはよほど多いけれど、欧米の、特に金融機関経営者に比較すると少ない。
リスクだけはたくさん負わされるのは 不公平。これは解るような。
一方で、今回、リスクを取りすぎて結果的に失敗、多額の資本注入を受けた欧米、特に金融機関経営者。それでも裁判で経営責任を問われる人はいないようです。 報酬は多額、固定部分や解任時の退職金などもあらかじめ約束されている。 「この会社に集中投資しているのでリスク回避的になっている」は当てはまらないような気がします。個人のリスクはなく、会社はリスクテイクして上手くいくと自分の報酬は飛躍的に増加し、失敗の結果は株主・政府(国民の税金)に負担させている、という感じがします。