買収防衛策のかなりのものが勧告的決議である。(商事法務1807「会社法への実務対応に伴う問題点の検討」から)
買収防衛策の主たる部分は、新株予約権の発行です。これ自体は取締役会の決議事項。逆に株主総会の決議事項ではない。こうした前提で、買収防衛策の導入を総会議案として提出して、承認された場合でも、それはもともと総会で決定する事項ではない。従って、これは株主に対するアンケート調査・意識調査にすぎない。法的には取締役会の決議事項なのであって、導入の責任は取締役が負う。株主総会での株主に対するアンケート調査での賛成多数!という結果があったとしても、導入を決定した取締役の責任が軽減されるものではない。そんな趣旨です。なるほど。
一方で、かなりの防衛策導入の際の手続として、買収防衛策の導入は株主総会決議事項である、という定款変更議案と、防衛策導入議案をセットで総会にかけている会社もあります。こちらは導入は総会で株主が決めたことだ!と言えるわけです。
これ以外には、取締役の選任議案の前提として、私が選任された暁にはこのような防衛策を導入します!という公約を掲げておいて、その取締役が総会で選任されたら、取締役会決議で導入するというケースもあったようです。
防衛策導入を総会決議事項とする定款変更を行わない限り、導入は取締役の責任で導入される。これを総会でのアンケート調査結果(勧告的議案決議)を持って、株主の承認を得たというのはおかしい、というのが法の専門家の見方のようです。
そうすると防衛策の導入は定款変更がないかぎり、法的には取締役会決議で正式に決定されるもの。ただ企業年金連合会などの機関投資家は総会決議を求めています。新株予約権の第三者割当という部分だけについては、取締役会決議事項です。ただしこれも前提は既存の株主構成を大きく変えないものであることのようです。
法的には認められても、法廷に行くと差し止められてしまう可能性があります。
これは、取締役の選任解任は総会決議事項であり、被選任者である取締役に選任者である株主構成を大きく変えることを目的とするような、大量の新株予約権発行を決定することは認められない、という考え方によるもの。
連合会などの機関投資家は総会決議を求めるし、取締役会決議だけでは法廷では通らない。ということで、勧告的な決議でいいから総会に諮るという対応をした会社がたくさんあった。しかし、それは決して十分ではなかった。 というお話。 なるほど。 勉強になりました。