外資系ヘッジファンドの方(イベント・ドリブン型=バイアウトファンド型という感じでしょうか) にお話を伺いました。

日本で活動するヘッジファンドの9割はロング・ショート型。グロース/バリュー株のロング、流動性の高い大型株のショートが基本スタイル。したがって今年は非常に厳しいパフォーマンスで、成功報酬なし、顧客からの解約申し入れも来ている。お金を返すために株を売却・換金。さらなる株の下げ要因となる悪循環。当面先行きは暗い。

一方、米国ではヘッジファンドの主流はイベント・ドリブンなのだそうです。M&A市場が巨大な米国において、時価総額と同業他社などストラテジック・パートナーにとっての価値に開きがある、アービトラージ(裁定)の機会とターゲットにした企業の株を買い進み、その後、事業会社へ売却する。 企業再編の仲介役でもあるといえます。

アメリカではこうしたファンドが多数あり、鵜の目鷹の目でターゲットを探している。一方、企業側・株主側にもM&Aへの抵抗が少ない。こうした状況でM&Aが多いので、時価総額・純粋な投資家としてのフェアバリュー・ストラテジックバイヤーにとってのフェアバリューが比較的近いようだ、とのことでした。

日本では 時価総額・株式投資のフェアバリュー・事業家にとってのフェアバリューに差が大きい。それはM&Aによる企業価値裁定があまり働いていないから、ということでした。

先日の日清/明星のケースも、スティールが仲介を果たし、最終的にストラテジックバイヤーの手に。

日本市場は、経済成長による時価総額の拡大の魅力は少なく、ロングショートのファンドには魅力が小さいけれど、イベント・ドリブン型のヘッジファンド(バイアウトファンド)には裁定取引機会が多く魅力的と映るでしょう。

まだM&Aへの抵抗感が根強いものの、スティールのようなヘッジファンドはどんどん増えていく。これは衆目の一致するところでしょう。 正攻法の王子の失敗、迂回戦略の日清の成功を見て、ファンドを使ってと考える事業会社も多いでしょう。

まともな設備投資資金向けのローンの減少に苦しむ銀行も、負債のレバレッジを大いに活用する企業再編はビジネスチャンス。こうした流れを密かに歓迎しているはず。


再編の仲介を果たすファンドは、小さな土地を買い上げてまとめてデベロッパーに提供する地上げ屋に近い、とは編集長のコメント。かつては秀和が、ダイエーの意向を汲んでマルエツ等のスーパー株を買い占めたと言われるケース。あるいは村上ファンドのテレビ局株のネット企業への間接譲渡。プリヴェの中小証券株の買占めなども地上げ屋のイメージにマッチします。

地上げには良い地上げ/悪い地上げ、必要悪的地上げ などあるようです。日本・企業・地上げ・ファンドは今後も拡大しそうです。


また伺った中で 印象に残る点

日本はPER20倍、PBR1.5倍。アメリカはPER16倍、PBR3倍。

日本のPERはまだ高い。アメリカはM&AがひんぱんでBSが膨らんでいる(資産はのれん、右は買収資金の負債)。

日本はやたら資本を積み上げすぎていて収益は低いので、PBRは低くPERは高い。そんな話でした。