ある土曜日のこと。
私の父は営業の仕事していて、月に1回だけ土曜日休みがある。
日曜日祝日は休みだが、土曜日はほぼ仕事で家には居なかった。
その月に1回の土曜日休みの日から、私の地獄が始まった。
その日の夕食後
父が私にこう言った。
「学校で掛け算の勉強は始まったか?」
私は「たぶんはじまった」と答えた。
私がそう答えて直ぐに父は「始まっていなくても絶対やるから今から掛け算をやるぞ」
私は父が怒ったり怒鳴ったりするのが怖いと思っていたから、その時は言われるがまま掛け算をやっていた。
当時の記憶はかなり薄いが、父が九九表のような物を買ってきていた気がする。
子どもの目にも大きく見える様にプリントされた九九表の書体が、変な模様に見えて少し怖かったのを覚えている。
その黒い文字の九九達は、私にとって永遠に続く大きな壁にも見えた。
その日は2時間ほど、九九だけを覚えた。
もう時計の針は22時を過ぎていた。