「風化させないように」「風化させちゃいけない」という言葉を聞く度に、心底驚きの感情でいっぱいになります。それは僕が、多分僕たちが、今でもあの瞬間を忘れたくても忘れられずに苦しんでいるからです。風化なんてとんでもない。感覚としては先週あったことのように鮮明に覚えています。車のエンジンの低い音を聞く度に、地面が揺れだすあの音かと思い恐怖に震え上がります。一日に何度も、今でもです。稀に震度4の地震があれば、皆、ガソリンスタンドに行列を作るのです。みんな普段は笑っているふりをしていますが、あの日の臭いや感触まで忘れられないのです。
そして今、僕は幸いにもとても健康に恵まれています。食べ物も十分あって困りません。毎日お風呂にも入れます。家も8割がた直り、あとは職人さんの手が空いた時に完了するでしょう。壊れてしまった家は一部改築して、あの時よりも広くて快適な部屋で仕事をしています。そして何より、僕のクライアントは以前の業績を取り戻し、震災前より好調です。これ程嬉しいことはありません。あまりにも多くのものをみなさんに与えられて、みなさんに助けられて今日があります。
だから余りに感謝することが多すぎて、不満や不足が思い浮かぶヒマがありません。あれ以来まだ会えない友人、知人にはいつの日か必ず会えると信じています。本当に信じているので、また会えることにも感謝しています。
あれだけのことが起きたことについて、あとから意味付けしても意味がありません。ほんとうに恐ろしい思いをしたし、まだしているのですが、もっと恐ろしい想いをした人がいっぱいます。ここで話すのも憚れるような地獄のような光景もありました。
それでも、あの日から2年経った今日、僕の中にある感情は、苦しい時に僕達を支えてくれたあなたや、あなたの友人たちへの感謝の気持ちでいっぱいです。
いつも気に掛けてくれてありがとう、ありがとう、ありがとう。
黙祷