Oは素晴らしい鼻を持っている。




真っ直ぐ通った鼻筋、左右均等な鼻の穴、本当ににんにくの形のような鼻だ。


いつの日かOの鼻を本人に褒めたことがある。
Oは「大きくて嫌だ」と愚痴をこぼした。


確かにOの鼻は大きい。
顔の真ん中にずっしりと腰を下ろしてるかのようだ。



私はどうにかO本人にOの鼻を気に入って欲しくてたまに褒める。

「本当に綺麗な鼻だね」
「鼻取り替えれたらOの鼻にしたいかも」
「両親に感謝しなきゃね」



そんな言葉を言ってもOは釈然としない顔をしていた。



ある日、Oの横顔を褒めたことがあった。

するとOはこっちを見てニヤリとした。
私は初めて人間のニヤリという顔を見た。
ゆっくり口角が上がって、上目遣いで睨むような目つきの顔だ。



もしかしたらOの鼻に対する意識が、少しでも変わったのかもしれないと、嬉しくなった。


鼻ひとつにそんな大袈裟な、と思うかもしれないけど、私ですら大袈裟に感じるほど嬉しかった。



もしある人が嫌いなものが自分は好きだったら何気なく話題に出すのは悪いことではないのかもしれない。


あくまでも何気なく、相手の様子を見ながら。



自分でも大袈裟に思えるほど嬉しいことがあるかもしれない。