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むびふるの映画日記 20代映画好き社会人のレビューブログ

初めまして。映画好きの社会人むびふるです。
映画はオールジャンル見ます。特に好きなのは人間ドラマです。

「この映画を見てよかった!」と
満足感を高められるようなブログを目指したいです。

 

Amazonprimeで「前科者」を見ました。

俳優陣の演技が素晴らしく、終盤で号泣してしまいました。

 

 

 

 

あらすじ

主人公の阿川佳代(有村架純)は保護司として働いている。保護司はかつて罪を犯した前科者が社会で安心して生活ができるように見守る役割を担っている。ある時、佳代は殺人の前科がある工藤誠(森田剛)の支援を引き受けることとなる。工藤は社会に出てから勤務態度もよく、順調に更生の道を辿っていた。しかしそんな時、連続殺人事件が発生し、工藤が容疑者として浮かぶこととなる。

 

 

有村架純の受け入れる力

有村架純はほかの映画を見ていても思いますが、年齢にしては落ち着いていて、目の前の人を包み込むような微笑みができる女優だと思います。

 

実際阿川佳代(有村架純)のように、若い保護司というのは設定に少し無理があると思います。

しかし有村架純のように芯のある、良い意味で影のある女優が演じることで現実味を感じさせてくれました。

 

「弱いからいいんだ。佳代ちゃんの弱さは武器だから。だめだめだから安心できる。」と前科者の緑は言います。

社会で傷つけられた前科者が求めているのは上から目線の指導ではなく、人間らしい人と人との繋がりなんだと思わせてくれます。

 

守役(若葉竜也)の怖いくらいリアルな演技

守役の若葉竜也さんの演技に驚いた人も多いはないでしょうか。本当に感動してしまいました。

まず初登場のラーメン屋でのシーンが印象的でした。宙を見ながらぼそぼそ独り言を言っている守に、背筋が凍るような薄気味悪さを感じました。

 

もうひとつ印象的なシーンは誠が守の家に行ったとき、パニックになっている守の姿でした。

泣きながら「働いてもさ、ずっと下だしさ、給料も低いしさ、誰からも相手にされないしさ。」と自分の気持ちを吐露する時には涙が止まりませんでした。これまでの守の人生を充分に表しているワンシーンでした。

 

この守の演技があったからこそ、工藤兄弟の壮絶な人生を安易に想像することができました。その意味で守役は非常に重要な役割を持っていたと思います。守の演技をみるだけでもこの映画を見る価値があるくらいに迫真の演技でした。

 

若葉竜也さんは他の映画でも様々な演技を見せており、今後も活躍が楽しみな俳優さんですね。

今回気になって調べてみたら、実家は大衆演劇の一座であり、幼少期から兄達とともに子役として舞台に立っていたそう。

主役級の俳優とはまた違った魅力を持つ、人間の弱い部分を上手に演じる俳優さんだと感じます。

 

前科者について

緑は幼少期から「自分は世界で一番可哀そうな人間だと思ってた。」「刑務所行ったら、みんな私みたいなやつばっかり。」というセリフがありました。

最近「ケーキの切れない非行少年たち」という漫画を読みました。その漫画によると非行少年は成育歴に様々な問題を抱えており、さらにADHDやASDのような発達障害・知的障害・精神疾患を伴い正しい判断ができない子供たちが非常に多いというようなことが描かれています。

 

そういった方々に懲役が終了したから今日から社会人と同じようにしっかり生活しろと言っても難しいことは明らかです。

これまで社会で傷ついてきた前科のある方々は、また人間社会の中で癒す必要があると思いました。

 

保護司という無給ボランティアについて

皆さんは保護司という仕事をご存じでしたか。

私はこの映画を見るまで保護司という仕事について全く知りませんでした。映画の序盤では「保護司は仮釈放で出所した受刑者の保護観察にあたる。」といった文字説明や説明描写が多く入ります。私のように保護司について何も知らない人にとっても、すっと入り込める構成になっていました。

 

保護司はあくまでもボランティアであるため、もちろん報酬はなく無給で支援をしています。

犯罪を犯す人の多くは工藤のように健康的な人間関係を築いていないことが多い傾向があります。そんな中で金銭の利益が生じない保護司との関係性は、前科者にとって心癒される温かい人間交流となるのだと思いました。

 

ただこのように大切な役割を担っている保護司ですが、担い手は減少傾向にあります。

保護司の定数は保護司法で全国52,500人と定められていますが、近年保護司の人数は現象傾向が見られます。また平均年齢は令和4年時点で65.4歳と高齢化が進んでいます。(上記数値は更生保護ネットワークより)

 

保護司という仕事は、普段私たちが普通に生活しているだけでは知りえない職業です。

今回のように映画化されて注目を浴びることで、保護司という仕事がさらに広がっていくといいなと思いました。

保護司という仕事について知ることができたこと、それだけでもこの映画を見てよかったといえるでしょう。

 

全体的な評価について

この映画は正直突っ込みどころが満載です。「保護司だからと言って、人んちのガラスを割ったら大問題だろ」とか、「守を捕まえたときになぜすぐに手錠をはめなかったのか」とか粗を探せば探すほどたくさん目についてしまうところが多いです。

また警察官や福祉課職員、児童養護施設の職員を典型的な悪者、工藤兄弟を圧倒的な弱者という構図で極端に描かれていた気がします。良い意味で言えば分かりやすい、悪く言えば深みのない人間像となっていました。そこが少し残念な点です。

しかしそれを上回るほどの題材やストーリーの面白さ、俳優陣の迫真の演技で充分に楽しむことができました。