スクリーンの光と影
2014年「雪の轍」で第67回カンヌ国際映画祭パルムド ールを受賞した
トルコのヌリ・ビルゲ・ジ ェイラン監督が、
1冊の本をめぐって繰り広げられる父と息子の軋轢を、
膨大なセリフと美しい映像で描いたという
「雪の轍」は未見ながら、カンヌをとるだけある知見と
映像美があり、そこにセリフ劇としての要素が加わり
(監督はチェーホフが好きなようだ)
この映画は、どこかエリック・ロメール監督の会話劇のようである
ロメールも文学と映画についての知見を持っていたが
ヌリ・ビルゲ・ジ ェイラン監督も、文学的なテイストを加え
映画を革新している
3時間をこえる映画は、それ自体が人生のようだ
通常の映画のように起承転結があるストーリーではない
これはヌリ・ビルゲ・ジ ェイランだから許されるのか?
もちろん過去にはアンゲロプロスやタラ・ベールといった監督も
長尺の映画で、人生や時代を映し出してきた
エンタメだけが映画ではないのを
こういった作品を見て、改めて感じる
もちろん一般的な観客は置いていく覚悟も必要で
そういう覚悟の元、地味な青年がシナンが主人公の映画が進行する
スターでもなんでもない一青年の帰郷の物語
家族や父、友人とのあらゆる会話
そして土地の風景、それがきちんと物語られることに勇気づけられる
音楽の使い方などは、ゴダールの「男と女のいる舗道」を思い出させる
また衝撃のラストは、トリアーの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」
を彷彿とさせた作品に、刺激を受けた☆
大泉洋と松田龍平の共演で映画化した『探偵はBARにいる』シリーズ第3弾
前2作も見てて、もういいかなとも思ったけど
ネット評価が高めだから見てみる
正直、そこまでではないけど妙に満足感だけはあった
今回も札幌のススキノを舞台にしてて
北海道を中心とした話しは、やはり東京中心の邦画とはどこか異なる
冬の設定ということで、それが顕著
最初の雪道と最後のエンドクレジット(空中からの屋根上の雪)など
しかし、どこか寅さんにも通じる昭和ノスタルジー
邦画だからこそ感じられる情緒だろうか
また哀愁があり、ハードボイルドの定番
そこにかかるジャズの音色が秀逸で
常に異化作用を導く、言うならばルパン三世のノリなのだ
というわけで、酒脱な出来になっており
大泉演じる探偵と松田演じるコンビも安定
田口トモロヲ、松重豊らおなじみのメ ンバーに加え、
新たに北川景子、前田敦子、リ リー・フランキーらも参戦
アクションは地味かもしれないが、
それなりに楽しい映画になってる
個人的には、ミステリー部分とか拙稚かなとは思うし
特に盛り上がりは感じなかったので
次の続編を見るかは分からないけど、見てしまうかもしれない
大泉洋を使った、大泉学園にスタジオがある東映シリーズ作品
★★★
個人的に、このノリが大好き
元々『トラフィック』や『オーシャンズ』シリーズなどのスティーヴン・ソダーバーグ監督は
かなり好きだけど、50代で引退してしまっていて
それは映画のマーケティングやビジネスに疲れたかららしい
ただ今回は脚本がよかったから、復帰したんだとか
いわく「ミヤザキハヤオも復帰したんだから、いいだろ?」
https://m.cinematoday.jp/news/N0096277
しかもソダーバーグは、新しいビジネスモデルを始めたらしい
(詳しくはシネマトゥデイのインタビューより↑)
いや最初のワンカットから完璧、
主人公(チャニング・テイタム)と幼い娘とのやり取り
そこだけでも、車を直す彼がブルーワーカー(肉体労働者)であることが分かるし
インタビューによると、わざわざそのために再撮影をしたのだから
それくらい大切さが伝わるカット
その後、彼は元妻のもとを訪れつつ仕事は解雇される
その間に流れる音楽も、すでに渋い
車内で彼がかけるCDは、なんとジョン・デンバーの「カントリーロード」
そう、ここはウエスト・ヴァージニア州境というわけで
アメリカ東部の山林の町、さびれかけているが
カーレースだけは盛り上がってる
白人しかいなそうなこういう町の
保守的な(家族は大事にする)労働者が、強盗を計画する
というところが、いわゆるハリウッド映画とは違う(『オーシャンズ』とも)
このへんを分かっていないと、もしかしたら楽しめないのかもしれない
いや例えば、かかる音楽もいわゆる映画音楽ではなく
カントリー調の、バンジョーなんかも使われ違いを出している
美容室で働く妹とのお喋り、BARでの弟(アダム・ドライバー)とのやり取りなど
いちいち人間臭くて、元軍人の弟クライド・ローガンは「手」を戦争で失っていたり
また主人公のジミー・ローガンは高校時代にアメフトエースだったのに脚が不自由で
「シルヴィア」のくだりだったりは、ストーリー上は必要ないんだけど
人間味とバックグラウンドを見せてくれる
深いけど、サラリとコメディとして描いているのもいい
(ちゃんと最後には回収している)
コーエン兄弟やタランティーノ、昔だったらジョン・フォードなんかも得意だった手法
そしてようやく強盗計画が動き出す
爆破のプロで服役中の ジョーが中々迫力ありキーマンなのだが、
彼を演じてるのがダニエル・クレイグとは、後で知って驚いた
『007』シリーズのボンド役と、180°逆の不器用な犯罪者役
後半に出てくるヒラリー・スワンクや
今年だけで彼が出た映画3本見たアダム・ドライバーも含めて
(スターウォーズに出てるから4本目になる)
ソダーバーグ監督だからこそ集まったキャストだろう
26才のデビュー作品『セックスと嘘とビデオテープ』からして
1989年のカンヌ映画祭パルムドールを獲得したソダーバーグ
そのあとしばらくは変わった映画を作っていて
自作自演の『スキゾポリス』だったり、手持ちカメラの『フルフロンタル』だったり
この時期のソダーバーグ監督も奇抜で好きだ
そして彼の新作『Mosaic』はインタラクティブなアプリとしても配信されるらしいし
さらに、その次に控えている『Unsane』は全編iPhone で撮影したホラー
数々のプロデュース作品をはじめ、常に実験的なソダーバーグ監督は
新しい映画作りだけでなく、映画モデルも開拓していこうとしている
何より、家族や仲間を大切にする強盗映画という
保守的だけど革新的な犯罪ムービーに、
拍手を送りたい作品
★★★★★
『IT~』よりも前に公開されたホラー映画
このタイトルと写真ビジュアルだから
中々とっつきにくい印象、だが中味は全く違った
グイグイと引っ張られ、非常に見やすい
それを牽引するのが、父と息子のやり取り
死体をめぐるミステリー
そう死体をめぐる話しというのは
ハリウッド映画でいくつかあるパターン
一番有名な死体はビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』オープニングだろうし
タランティーノ『パルプ・フィクション』の中にも死体をめぐる話しがある
もちろん死体が甦るゾンビもの、を含めて
キリスト教世界での死体は「肉体」
霊魂が抜けた後のボディは、中身のない入れ物にすぎず
その即物的な面が、ゾンビなどのホラーや
死体をめぐるコメディになっていく
この映画も最初、がんがんロックを鳴らしたり気軽な雰囲気で始まる
遺体検死人という親子は、実に平然としたもの
しかし、新しい遺体(ジェーン・ドウ)がやってきてからミステリーが始まる
この遺体の美しさだけでも画面を見てられるが
そこから体の解剖が始まり、そのギャップがいい
恐怖の見せ方自体はベタといえばベタだが
しっかり基本をおさえている(以下少しネタバレになるが)
例えば、消える電気、雷雨と閉鎖、死ぬ猫やガールフレンド
個人的には、霊や化け物などハッキリと「見せない」ので好きだ
ただ悪霊・悪魔との戦いが最後にないので
ラストの盛上りや納得感がやや欠けるか
そしてジェーン・ドウ自体の謎は解けない
というのも、実はこの物語は父と子の話し(父殺し)であるはずだ
ここにはいない一番の中心は、不在(死亡)の母でもあり
ある意味、ジェーン・ドウの呪いとは母の呪いだとも考えられる
そう考えると、父に抑えつけられている主人公は
母の助けもあり、父殺しを全うしたはずだが
母殺しはできず(すでに死んでいる)
外の世界に旅立つことはできない
そんな風に読み替えると面白いし
ハリウッドの作り手たちが、そうした成長物語に無頓着だとは思えない
つまり非常に考えられ練られたストーリーで
もしかしたら続編があるのかもしれない
小さいが優れたホラーミステリー作品
★★★★
(つづき)
個人的には前作並か、それ以上に感じた
『プリズナーズ』『複製された男』などのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の手腕には
最初から疑問の余地はなかったにしても
彼が作った『メッセージ』というSF映画は、
かなりスピリチュアルだったので、少しだけ心配していたが
しかしそれを吹き飛ばす出来で、見事に複製してみせた
(レプリカントも「複製」の意味だから必然か)
今年見た映画の中でもベストというべき出来で
かつての『ブレードランナー』を受け継ぎつつ
造形美(映像美)、世界観、精神性、ロマンス、音楽など
新しいものを提示している
何よりロジャー・ ディーキンスの撮影が素晴らしい
また前作同様に日本へのオマージュがそこかしこに見え
ジョイというAIも、東洋的な雰囲気がある
彼女はホログラムであり、レプリカントでさえない(肉体がない)
Kとのやり取りでは、まるで彼が人間のように感じてしまう
つまりジョイが、前作ブレードランナーのアンドロイドの立場であり
人間になれない人造的な身分、という儚さ
実はアンドロイドより人間らしい感情をプログラミングされている彼女が
「愛してる」と言いかけて消える場面は印象的
そんなジョイに名づけられ、Kは新たな名前「ジョー」で呼ばれる
これは、戦後のアメリカ兵人形G・I・JOを思わせる皮肉
この映画は前作へのオマージュに溢れている
つまり過去にとらわれるセンチメンタリズム(懐古的)に自覚的
廃墟の中でエルビスやマリリン・モンローやフランク・シナトラが出てきて
しかもそれは、同様に伝説的なハリソン・フォードが過去に埋没しそうになり
ファイトする象徴的な場面なのだ
その一連のシーンは、この映画が一番深く過去と対峙する
ハリソン・フォードはこの映画の父でもあり
Kにとっても実の父であるかもしれない…
そんな父と殴りあうのは、『スターウォーズ』におけるダースベイダーとの戦いと同じく
エディプス・コンプレックス、オイディプス神話であり父殺しの物語への言及
163分という長さだが、もっと見てたかった
(耐えうる見識眼は必要?)
実に二度観たが、さらに発見もあるだろう
おそらく絶対スクリーンで見るべき作品
★★★★★
80年代末にリドリー・スコットにより監督された
『ブレードランナー』は、『スターウォーズ』などのSF映画を、
よりスタイリッシュかつ大人なサイエンス・フィクションとして
じわじわと評価を高め、SF映画の金字塔とまで呼ばれた
リドリー・スコットは、『エイリアン』や『ブラックレイン』でもそうだったが
フィルムノワール的な雰囲気を映画に取り込み
単純なドンパチのエンタメから一線を画し
いわゆる映像派と呼ばれたのは、そういう美学的な意味だろう
その代表となった1982年の『ブレードランナー』は
一見分かりにくいが、噛めば噛むほど味が出る映画
今回その続編ということで、前作から30年後の設定
2049年を舞台に、違法レプリカント処分の任務に就く主人公を
ライアン・ゴズリングが演じている
ライアン・ゴズリングは『ドライヴ』などノワールな雰囲気が似合う俳優
彼が途中で鼻に絆創膏しているのは、
チャンドラーのノワール小説を原作とした映画『チャイナタウン』
ジャック・ニコルソン演じるマルローへのオマージュか
ちなみにKという役名も、原作者で今は亡き
フィリップ・K・ディックにちなんだのではないか
短編小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を大幅にグレードアップさせて
ブレードランナーは出来ている
アンドロイドとは、もちろんスマホのアプリではなく人造人間のことである
ただキカイダーやキャシャーンなど、日本の人造人間(機械人間)に比べると
ブレードランナーのレプリカントはもっと先に進んでいる
むしろ世界観は同じ1982年に連載が始まった「AKIRA」に近い
しかし今回思ったのは、ハリソン・フォードには敵わないということ
まるで年老いた象のような貫禄で、自然と内面も作り
助演男優賞ものの存在感に感動させられる
たとえストーリーや美学的なものを抜いたとしても
軸として存在しつづけるのが年齢を重ねた人間
というのは、このブレードランナーのテーマにも関わる問題だ
つまりそれは「神」との関係であり、
神(宇宙=科学)が万能であるなら、人間はあらかじめ作られた存在だし
自由意志などない、というのが初期SFにおける葛藤で
そこから生まれるニヒリズムが、ブレードランナーの世界観にも色濃く現れていた
よく考えると、ハリソン・フォードは『スターウォーズ』シリーズ
『インディジョーンズ』シリーズなどと活躍し
一世風靡した俳優だが、演技派というよりは
武骨な肉体派で、イーストウッドの系列にあるようなニヒルさも兼ね備え
上記の映画がヒットしたのも、ハリソン・フォードのおかげかもしれない
『ブレードランナー』にしても、ハリソン・フォードでなければ成立しなかった
今回、年老いた彼が終盤にようやく出てきて
さらにグッと画面が引き締まるし、演技も渋味を増して魅力的で
さらに往年のようにアクションもこなすのだから堪らない
(その2につづく)
1990年に映像化されたスティーヴン・キングのホラー
ということで、馴染みがありつつ
最初は見る気なかったが、たまたま時間があったので観た
『MAMA』で注目を浴びたアルゼンチンのアンディ・ムスキエティ監督が映画化
前半すごくよい出来のハリウッド映画
導入部、アメリカの田舎町の感じとか
一見平和なのに、児童が行方不明になる事件が相次ぐとか
音楽的にもベタなんだけど見事
その中で、少年少女の群像劇とか思春期の傷みや葛藤(イジメ、吃り、DVなど)
キング原作の『スタンド・バイ・ミー』も思いおこす
しかし、得した感が広がる中で、
肝心のピエロの描写だけがやはりどうもいただけない
アメリカのホラーはこうしてハッキリと描くのが主流
でも日本人にはあまり怖くない
むしろ笑ってしまうか、引くかのどちらか
日常からピエロに接してないせいもあるのかもしれない
怖いものを名指しせず、IT(それ)と表現するのは
ハリー・ポッターの「あの人」と同じだが
そのオチに当たる部分を、早くから見せてしまってるから
興ざめしながら後半は見てた
やはり笑いと同じく、人を怖がらせるのは難しいのかもしれない
大人版は、2019年に公開予定らしい
二本立てではなく、きちんと一本一本作るところが
ハリウッドの財力とマーケティングか
今回アメリカでの興行はよいみたいで
悪霊ペニーワイ ズは、ひとつのアイコンになった
ただ完璧なダークファンタジーには、少しなりそこねたエンタメ作品
★★★★










