【怪奇現象(実話)】晩春の下北沢 駅構内にて | ロングテールの先っぽで

【怪奇現象(実話)】晩春の下北沢 駅構内にて

2年前の8月23日、
僕は夜中にとある怪奇現象に遭遇した。

その時のことはこのブログでも
【私の実話】夜の怪奇現象」として書いたが
時間があれば、このエントリーを読み終わった後にでも
読んでいただきたい。

今はまず、今日起こったことをなるべく脚色することなく
事実の通りにお伝えしたいと思っている。


事が起きたのは昨日、いや正確には日付を回って
本日0時23分頃。

僕は今日なんとなく体のだるさをずっと感じていた。

昨日より母親が体調を崩し、熱を出していたので
実家の町田に帰り看病をしていたのだが
その風邪をもらって帰っていたのかもしれない。

下北沢の一人暮らしの家に帰ってきたのが21時。
誰もいない暗い部屋に帰ってくると
ムッとした嫌な空気が部屋の中で淀んでいた。
行き場所のない空気というのは、どうしてこんなにも暑苦しいのか。

そういえば今日は真夏日だったらしい。

30度を超そうかという日中で暖められた空気が
日が落ちてもまだこの部屋には淀んでいて
なのに僕の体は少し妙な寒気をまとっている。

「風邪かな」

そう思った。

僕は帰るとその足で必要な荷物をまとめて出かけなくてはならなかった。
22時には知り合いに合って、もろもろやるべき事があった。
現在の時刻は21時。

猛烈に体がだるかった。

僕は眠くもないのに寝た。
寝た、というよりも、あまりの体のだるさに外出ができずに
そのままソファーにで意識を失ったんだ。


そしてこれが全ての恐怖体験の始まりだった。

僕が目を覚ますと、
時計はしっかりとその時を刻んでいて
なんと23時40分を指している。

2時間半も寝てしまった。

急いで出かける支度をして
下北沢へ向かった。
おそらく最終電車に乗る事になるだろう。

下北沢の町はいつもの通り若者でごった返していて
いやむしろ、いつもよりも活気であふれているように見えた。
一足早い夏を感じさせる夜風が若者をそうさていたのかもしれない。

一眠りして汗をかいたせいか僕の体も嘘のように軽くなっていた。
終電に乗るべくやや急ぎ足で下北沢についた僕は
そのまま暗い連絡通路を通って井の頭線のホームへ向かっていた。

そしてその瞬間、悪寒が走った。

先ほどまでの雑踏が嘘のように
連絡通路に人がいない。

終電間際の下北沢駅。
小田急線と井の頭線の連絡通路、
そこに人が一人もいない。

奇妙な風だけがスッと連絡通路を通り過ぎた気がした。


「何かがおかしい」


ほとんど無意識にそれを感じた僕は
頬をしたたる嫌な汗を拭いながら
人がいるはずであろう井の頭線へ足を速めた。
今にして思えば、自分に迫っていた危機を感じていたとしか思えない。

しかし僕は不幸にも
その危機を脱却することはできず
次の瞬間、口を開けて待っていたその「危機」に
まんまとハマる羽目になってしまったのだ。

足早にかけぬける階段、その中途
僕の視界が不穏な何かをとらえた。


確実にそこにあってはいけないものがある。


その時の階段の様子(下北沢 連絡通路 午前0時23分)
ロングテールの先っぽで



冒頭でも書いたが
僕は前に似たような経験をし
脳の混乱を抑制するのに半日を費やしたことがある。

そのおぞましい記憶が一気に脳を駆け巡った。


見てはいけない!!


しかし人間の脳は時として
「意思」とは無関係の決断を下すものらしい。

次の瞬間、僕はそれをまじまじと見つめていた。
周りに人はいない。



ロングテールの先っぽで




アスパラガス(肉厚)



僕の脳はそこでショートした。

夜中の0時23分。
世界の都市、東京のそのさらに中心的繁華街である下北沢。

主要路線である小田急線と井の頭線の連絡通路上に



なぜ肉厚のアスパラガスが束で置いてある!?


ロングテールの先っぽで


誰が!?

何のために!?

俺の好物と知ってか!?



深まる疑問に嗚咽が走る。


だが僕は証拠を残すために写真におさめる事を決意した。
この奇妙な空間に残されたアスパラガスを
おさめておく必要があると思った。

正義感なんて大げさなものじゃない。
それは好奇心に近い信仰心だ。

悪い事が起こりませんように。そんな念を持っていたのかもしれない。


パシャ。


そのシャッターが、外界と混乱した僕を再びつなぎ合わせような気がした。
気づくと誰もいなかった通路には、最終を急ぐ人波が流れ出していた。

そして僕はその真ん中でアスパラガスを中腰になって撮影していた。


不思議なことに、僕以外、そのアスパラガス(肉厚)に目を向ける者はいなかった。
まるでそこには存在していないかのように人々は通り過ぎていく。
彼らが奇異な視線を寄せるのはアスパラガスではなく僕だった。


僕は遅れてやってきた0時24分発の電車に滑り込み
まだ少しぬるい空気がまとわりついているのを
iPodの爆音でかき消そうと、音量を上げた。


井の頭線は、不自然なくらいいつも通り夜の中を西へ向かった。


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