今回登場するキーワードは、1970年代から1980年代を背景とする下記
・ヴァンゲリス : シンセサイザー音楽家
・ヴァンゲリスによる映画音楽 : 「ブレードランナー」・「炎のランナー」・「南極物語」
・ジョンアンダーソン : YESのボーカル、ヴァンゲリスと組んでアルバムを出していた。
・YES : 英国ロックグループ。アルバム「こわれもの」・「危機」・「OwnerOf a LONLY HEART」など多数
・ロジャーディーン : 英国のイラストレーター、YESのLP盤ジャケットイラストなど多数
2022年5月17日、ヴァンゲリスがこの世からいなくなった。79歳。このシンセサイザー音楽家の音楽世界感を私は昔から大好きだった。彼の関わった映画音楽を切り口にコメントしてみたい。
ヴァンゲリスは、YESのジョンアンダーソンと組んでアルバムを作った事で初めて知るようになった。奇しくもこのブログを書き始める直前2022年5月26日にYES初期メンバーのドラマーだったアランホワイトが亡くなったという記事を見つけた。YESというロックグループがこの世から消えるまさしく「危機」の時代だ。寂しい。
YESの熱狂的なファンだった私は昔々毎日のように「危機(原題:Close to the Edge)1972年」というアルバムを聴いていた。本当にある時期、来る日も来る日も。日本語の危機という題よりも原題の方が意味的には素晴らしい。がけっぷちに迫るというのだ。「こわれもの(原題:Fragile)1971年」そして「危機」と併せてこの2枚のアルバムを聴いていると、このバンドが頂点に達して、はじけて分解する感じがした。あんのじょうグループはその後メンバーの離合集散を繰り返していった。
このYESのLP盤カバージャケットのイラストはロジャーディーンの手による。このカバーの絵と中身の音楽とが一つの未来宇宙とも呼ぶべき物語の世界に誘うのだ。
何度このジャケットを眺め、音楽を聴き、ライナーノーツの写真を見た事か。
私はYESのボーカリストで独特の歌声で歌うジョンアンダーソンの大ファンで、ジョンがヴァンゲリスと共にアルバムを制作した事からヴァンゲリスという存在を知るようになった。The Friends of Mr.Cairo(1981年)、Private Collection(1983年)など。
しかし日本ではこれらのアルバムはマイナーで一部のコアなファンの物だった、そのうちにヴァンゲリスは映画音楽家として日本で名前が聞かれるようになった。
まずは「ブレードランナー(日本公開1982年7月3日)」。2022年5月29日の朝日新聞文化欄に映画音楽評論家・小室敬幸氏が、『私自身も含め、「ブレードランナー」にリアルタイムで接していない若い世代の日本人にとっても・・・・・・』と書かれていたが、当時リアルタイムで私はブレードランナーを予備知識なしに映画館で見て、暫く立ち上がれないほどの深い感慨に浸った。
当時国内の映画は2本立てが当たり前で(今ではその雰囲気さえも伝えられないが)、私は昔見たブルースリーの「ドラゴン危機一発」のリバイバルを見に行ったのだった。そこに付録的にセットで上映されたのがブレードランナーという聞いたこともないB級SF映画だった。そして感動した。この映画はその後、近未来都市や建築のモデルとして、建築デザイナーなどの間でも長く語り継がれる古典のひとつとなる。しかし私は建築的な近未来SFの話よりも「いつ来るかわからない死」がテーマであるという事に深く感銘した。そしてその映画音楽がヴァンゲリスだったのだ。この映画の主人公はハリソンフォード。最後の方でアンドロイドが「時間はまだ十分ある」というセリフや、アンドロイドであるが死の機構を装着されたか不明なレイチェル(寿命が決まらなくなり、人間と区別がつかなくなる)と共に逃げるシーンなどなど。当時のレイチェルは美しかった。あらすじは切りがないのでどこかで読んでいただきたい。
その次のヴァンゲリスの映画映画は「炎のランナー(日本公開1982年8月21日)」。英国の海岸の砂浜をひた走るオリンピックランナー達をスローモーションでとらえ、そこにヴァンゲリスの主題曲が流れる。
私は「ジョン&ヴァンゲリス」が作った「メイフラワー」という曲が大好きだ。しかもこの曲を偶然にも深夜に海上の船の甲板で満点の星空を見ながら聞いた。まるで星空が私の上に落ちてくるような、宇宙が私の体と一体化するような体験だった。
そして日本映画の「南極物語(日本公開1983年7月23日)」。これは映画館ではなくTVで見た。そして、雄大な音楽と似つかわしくない映像にがっかりしたが音楽には引き込まれた。
またヴァンゲリスをかけながらドライブしていた、ある夏の夜。峠の坂道を下っていた時、いきなりフロントガラスいっぱいに花火がひろがった(偶然山の向こう側で花火大会があった)のだ。その時に流れていたのが南極物語。素晴らしい組み合わせだった。このような偶然の組合せは二度とないだろう。形容しようがない時空の広がりが感じ取れた。
ブレードランナーはその後長く語られれるヒット作となりSF映画の代表作の一つとなった、それは、近未来都市を具体的に映像表現したからだけではなく、普遍的な私たち人間の「死」を描いて見せたからだと認識している。直接描く物語よりも婉曲的に描く方がより輪郭が明確に意識される代表例だと思われる。人間とアンドロイドを区分するものは何なのだろう・・・・・・・。
※ブレードランナーにはいくつかのカット版があり、少しずつ異なっている。私は勿論公開時のも
ので十分。商業用に短く切り詰める事も悪いことばかりではないと思っている。
「デンジャラス・デイズ メイキング・オブ・ブレードランナー」というメイキング物も出ており、これも
興味深かった。そして35年の月日を経てついに続編の「ブレードランナー2049(日本公開2017年10月27日)」まで作成された。VFXが当たり前の今の時代では、1982年の映画当時の衝撃は感じる ことができなかった。
<2022.6.1(水)>