「絢夢さーん!絢夢さーん!」
「デカイ声で呼ばなくたって近くにいるだろ。」
「またそんな男口調で!女の子ならもっとそれ相応の振る舞いをしないと!」
「何で同い年なのにあたしに説教するんだよ。家政婦のくせに。」
説教してるこの女はあたしと同じ16歳の、東 希美子。
親に散々虐待されたあげく、施設で4年生活してあたしの専属の家政婦としてここの家に置いている。
「同い年だからって侮らないでください!私の方がよっぽど女の子らしく振舞ってますよ。」
両方の手でスカートの端を指でつまみ、希美子なりの女の子らしさのポーズをして見せた。
「そんな弱々しい人間になるなら女の子らしさなんていらないね。」
あたしはキッパリ言った。
すると、私の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「失礼します。」
入ってきたのは、ここの家の管理を任されている、田島洋輔だった。
こいつはあたしのスケジュールを全て構成し、把握してる人物。
「絢夢様。午後のスケジュールを全て変更させていただきます。」
「何故?」
「あなたのお母様。裕美様が新商品の開発の為、アメリカにもう少し居てはならなくなってしまったので。」
「永遠に帰って来なくていいのに。」
「絢夢さん!なんてこと言って…」
「父親も母親ももう一年以上も会ってないんだ。久しぶりに子供に会える機会をもらえたのに、また延長させるなんて、こっちもそろそろ薄情になざるを得ない。」
普段はあまり喋らないあたしがこんなに喋ったことと、あたしの立場でしか言えないことを言ったことに、2人は何も言わなかった。
「午後からの予定はあたしが決める。
」
「しかし…。」
「午後からの予定は、なし。」
「ですが、まだやることがたくさんありますよ。」
「一日の半分くらい休ませてくれ。毎日、毎日疲れる。」
「かしこまりました…。」
納得のいかない感じの島田はあたしの部屋から出て行った。
