西岳山頂にはトンボが群れをなして飛んでおり、おかげで変な虫が近づいてこない。雲は多いがまだ眺めはよく、快適である。しばしの眺望を楽しむ。
考えてみれば西岳は初めてである。ずいぶん昔に八ヶ岳の縦走をした時も、なぜか編笠山で終わりにして下山してしまった。多分時間の都合だったのだろう。
さて、これから向かう権現岳の稜線には大きな雲が。天気の崩れは予想より早そうだ。
青年小屋まではアップダウンも少なく、のんびりとした道。西岳までとは異なり、他の登山客さんにもすれ違う。なんだか新鮮。
そして青年小屋到着。
赤提灯にテンション上がるが、酒はもちろんおあずけ。
青年小屋で今後の行動予定を考える。ときおりガスが出てきて、編笠も見えたり隠れたりしている。権現岳の眺望も期待は薄そう。そして肝心の雷は、やはり可能性は高そうだ。
山頂に登っても眺望はなく残念。どうも権現岳とは相性が良くないらしい。未だかつてここで眺望に恵まれたことはない。何十年前から。
ここからどうするか悩みに悩む。しかし、キレットでビバークしない限り、キレットから赤岳に向かう岩場か、もしくは赤岳から阿弥陀への稜線でカミナリに捕まることは目に見えている。残念ながら今回は周回は断念して西岳経由で戻ることとする。
旭に向かう稜線。源治梯子の上部に人が見える。
ギボシを下って、振り返って撮った写真。こちらから見ると結構な迫力である。
ガスはどんどん濃くなる。
ピストンの山行の時、行きに通ったところを歩くと、通ったばかりなのに、なんだかとても懐かしい気持ちになる。ちょっと切ないような、この気持ちが苦手で、本当はピストンじゃない方が嬉しいのだが、車で山に来ることが多いため、どうしてもピストンが多くなってしまう。
この時も、先ほど通ったばかりの道を歩きながら、次にここを歩くのはいつだろう、なんて感傷に耽ってしまった。
ノロシ場まで戻ったところでポツリポツリふりだした。雨具を装着して下り続ける。青年小屋に下りたあたりで本降りになった。
青年小屋から西岳に向かう。12時50分、乙女の水の水場を越えて登り返しに入ったあたりで、予想外に早くカミナリが鳴り出した。近い。3秒くらいである。雨もかなり激しくなる。カミナリは右から聞こえたり左から聞こえたり。
ここで休憩も兼ねて、横の樹林帯に入り、ツェルトを被る。カミナリは相変わらず近くでなり続けている。ザックを枕に横になって、軽くうとうとする。
小一時間もするとカミナリも収まり、雨も弱まった。登山道には水たまりが。
ツェルトで寝ていたおかげで大して濡れていないし、元気も回復している。西岳まで快調に飛ばす。途中、何組かの登山客と会う。
西岳からの眺望。
西岳から下山開始。カミナリは遠くで鳴っている。南アルプスの方に向かったらしい。
いつもながら樹林帯の下りは長く感じる。あいかわらず蜘蛛の巣にやられながらの下りである。ヘリの音がずっと聞こえている。明らかに物資運搬ではない。立場川の谷沿いにゆっくりと動いているようだ。ほとんどホバリングのようだ。やがてヘリは離脱して、今度は反対側を飛んでいる。ヘリは左右交互に何回か飛び、やがて遠ざかって行った。
先ほど通ったばかりの道なので、地図を出すまでもなく歩いて行く。踏み跡をたどるが、初めてで夜だったらロストしそうなポイントがいくつかあった。とはいえ、方向さえ確認していれば良い話だが。
林道まで戻り、ホッとして雨具を脱ぎ、ついでに休憩していたら、再び雨が降り出し、慌ててせっかく脱いだ雨具を再度着込む。
林道から裏山のトラバースに入るところは、暗いと少しわかりにくいかも。ここは入山禁止の看板を右に曲がる感じが正しい。写真でもまっすぐにいけそうに見えるが、右に行くとロープの仕切りがあるので、それに沿って側面をへつっていく。
雨がさらに激しくなり、カミナリも再び鳴り出した。さっきほど近くはないので、そのまま進む。
渡渉地点に戻ってくるが、川は濁流になっていた。写真ではわかりにくいが、流れの勢いがかなり強く、迂闊に足を入れるのは危険と判断し、上流に上がる。久しぶりに沢登りをしている気分。少し上流になんとか渡れそうな場所を発見して一本目クリア。
ここから崖を越えてもう一本目に出る。こちらは下流に戻り、大きな岩で川が二つに分かれる、すぐ下のところで渡れた。渡った先の崖を登ると阿弥陀聖水からの林道の終点の広場に出た。
川の渡渉だけで40分以上かかったが、久しぶりに道のないところを歩いて、ちょっとした冒険気分を味わうことができ楽しかった。
いよいよ後は林道を歩くだけ。のんびりと舟山十字路に停めた車に戻る。到着は5時を回っていた。
帰りに、もみの湯で汗を流し、八ヶ岳PAでいつものカレーを食べて帰った。これだけ時間を潰して帰っても、残念ながらしっかりと小仏で渋滞に捕まったのであった(笑)