新生アイドル研究会BiSと僕との7ヶ月間 ~初めてのアイドル体験(前篇) | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

7月8日、休暇を取って BiS解散LIVE「BiSなりの武道館」@横浜アリーナ へ行ってきた。これでもう最後…と、泣く覚悟でライブに臨んだ。が、すでにレポートされているとおり、MCなし、休憩3分だけで後はひたすら歌い踊るストイックなライブは、そんな僕の感傷を一切許さないものだった。今後のメンバーの活動も伝えられ、残念な気持ち以上に、清々しく前向きな、温かい気持ちになった。「解散ライブ」というものに臨んだのは初めてだが、こんな気持ちになるとは予想していなかった。

新生アイドル研究会BiSは、僕にとって特別なグループであり続ける。なぜなら、僕が好きになった初めてのアイドルグループだったから。自分が30歳過ぎてアイドルにハマることになるなんて全く想像していなかったし、それは一介の音楽愛好家である自分のリスナー史上、大きなターニングポイントとなる「事件」だった。

このブログでは、改めて、自分とBiSとの出会いと、そこで感じた思いを改めて振り返ってみようと思う。このテキストを見つけて頂いた方に、何かしらの参考になっていただければ、嬉しく思います。


【BiSとの出会い ~アイドルとノイズユニットの共演】

僕がBiSを知ったのは、確か昨年2013年の12月、twitterでフォローしている方が、BiS階段について書いているのを読んだときだった。アイドルグループBiSと、世界的ノイズユニットである非常階段がコラボレーションしたCDが素晴らしい、というのだ。

「アイドルとノイズ音楽が融合!? なんか面白そうだなあ」

というのが最初の感想。非常階段は聴いたことなかったけど、以前ノイズ音楽好きの友人が絶賛していたので名前はよく知っていた。そしてYouTubeで、あの「好き好き大好き」を視聴。



うわあ、これは…最高だよね?むちゃくちゃ最高だよね!!? 

エキセントリックなヴィジュアル、全編を覆うギターノイズ、そしてとびきりポップな歌声…常日頃、オルタナティブな感性がポップに表現されている作品に心惹かれている自分は、一発で気に入った。そして気になって、BiSの曲をYouTubeで視聴してみた。「PPCC」「Primal.」「My Ixxx」…



これは一体どうしたことだろう。メロディが一時も耳から離れない。仕事中も、これらの曲が頭の中をグルグルと回るように…なってしまった。しばらく考えて、その理由はすぐに分かった。

もともと僕は、女子ボーカルのロックが大好きだった。椎名林檎、Cocco、Do As Infinity、The Brilliant Green、など。最近だと、アニメ「けいおん!」の放課後ティータイムとか、「Angel Beats!」劇中バンドGirls Dead Monsterとか、ギャルゲー「ソニコミ」の第一宇宙速度に至るまで… 魅力的な女子の歌声とキャッチーなメロディとクオリティの高いロックサウンドの三位一体さえあれば、どんなジャンルでも関係なかった。 当然のようにそれを満たすBiSの曲は、だから、自分の好みのストライクど真ん中だったし、好きになるのは必然だったのだ。

一番最初に好きになったアイドルがBiSだったかというと、正確には異なる。僕にとってアイドル音楽への常識を覆してくれたのはPerfumeだった。しかし、自分はPerfumeの音楽がひたすら好きだったけれど、彼女たちの活動を熱心に追いかけることはなかった。だがBiSは、そうではなかった。twitterをフォローして自撮り画像を眺めたり、ブログを読むようになったら、もうアイドルからは逃れられない…それを身をもって体験した。特にテンテンコちゃんの自撮りの破壊力は半端なかった…。ちなみに、BiSを知った直後にでんぱ組.incの存在を知り、同様のプロセスをたどったわけだが、その詳細はまた次の機会に。


【BiS全国ツアー参戦 ~初めてのアイドル現場】

2ndアルバム「IDOL IS DEAD」を聴き、その音楽的充実度の高さとポップスとしての強度を兼ね備えた超絶傑作ぶりに心酔していた僕は、当然のように、ライブを観に行きたいと願わずにはいられなかった。そして、2月5日、松本ALECXでのライブへ行くことを決意。東京でのワンマンは売り切れだし、山梨から一番行きやすい場所はここだった。平日だから仕事を半日休まなければならなかったが、そこまでしても観に行くべきだと自分の中では決めていた。

会場に入ると、やはり男子が多かった。年齢層は10代後半から40前後まで幅広い模様。そして多くのBiSファン、すなわち研究員が、黒い「IDOL」Tシャツを着て、首にマフラータオルをぶら下げていた。これに似た光景は観たことがある…「SUMMER SONIC」「Count Down JAPAN」のようなロックフェス会場だ! そう、BiSの現場は、アイドルのライブというより、ラウドロックバンドのライブに限りになく近い雰囲気が漂っていた。

それが間違いないことは、ライブが始まってすぐに分かった。自分は後方から観ていたが、前方の研究員は、狂ったようにモッシュとクラウドサーフを繰り返していた。
なのに曲間では、アイドルのライブらしい「合いの手」の数々…「あ~~よっしゃいくぞ~~!」で始まる掛け声(これを「MIX」と呼ぶのだと後で知った)とか、「プールーイ!」みたいなメンバーの名前のコールとか、「寄ってらっしゃい見てらっしゃい 新生アイドル研究会!」のような口上とか…を皆が叫んでいた。加えて、(長野だからか)いきなり全身ボディスーツを着てスキーの板?を着けてリフトされる研究員。曲間でリフトされてメンバーに話しかける研究員(これが「爆レス」をもらうための行為だということを後で知った)、後方でヲタ芸を打つ研究員・・・これまで様々なライブに足を運んできたが、ここまで圧倒的にカオスなライブは観たことがなかった

だが、そんなクレイジーな研究員にだけ耳と目を奪われたわけではない。この日はメンバーの一人でリーダーのプー・ルイがインフルエンザの為にやむなくライブを出演できなくなってしまったのである。そこで残されたメンバーは、急きょ5人だけのライブの為に直前までリハを重ねた…のみならず、ライブの冒頭、自ら作った音源「インフルエンザ プチャハンザ」を流し、オーディエンスの笑いと大合唱を誘ったのである。自分のいた後方からは、人影に阻まれてステージはあまり見えなかった。しかしそれでも、リーダーの不在を全く感じさせないひたむきな歌とダンスは、うわあカッコイイな、そして可愛いなあ…と感じた。

ライブ終演後は、「ハグ会」「チェキ会」なるものが開催されていた。CDを予約すれば、特典としてそれらに参加できる…のだが、そのシステムをよく分かっていなかった僕は、研究員の皆がメンバーと撮影する様子を「やっぱかわいいなあ…」とニヤニヤしながら眺めていただけで、後日そのシステムを知って若干後悔したのだった。

おそらくは、アイドル現場としてはかなり特殊な部類に入るであろうBiSのライブであった。が、初めてのアイドル現場がこれで良かったと、帰りながら思った。それは自分にとって屈指の、衝撃的、刺激的な体験だった。


【ソウルフラワーBiS階段 ~圧倒的なライブイベント】

2月のライブに行った後、2月12日の新宿ステーションスクエアでのフリーライブにて、BiSは7月8日に横浜アリーナにて解散ライブを催すことが発表された。今ライブに行かずして、いつ行くというのか!? …某有名塾講師のセリフを頭に浮かべつつ次に選んだ現場は、ソウル・フラワー・ユニオンおよび非常階段と共演する「闇鍋音楽祭」だった。3月22日、東京・渋谷のO-WESTでのことである。

開演前、物販でマフラータオルと、でんぱ組.incとのスプリットシングルを買った。あのスプリットは入手困難だったから嬉しかった。売り場で対応してた、どこかで見たことのある人は、BiSのマネージャーにして、数々のスキャンダラスな仕掛けを投入したアイドル界のマルコム・マクラーレンこと渡辺淳之介氏だった。この人が、かの悪名高い…。とはいえ、当然のことながら対応は快いものだった。

一番手、BiSのライブは前回に増して楽しかった。ステージがよく見えたし、松本で演らなかった僕の一番好きな曲「primal.」を歌ってくれた時は涙があふれた。また、「IDOL」で目の前の研究員達が右へ左へ激しく飛び交う壮絶なモッシュの光景は、今でも忘れることができない。

その後、非常階段がステージに登場してBiS階段、からの非常階段のステージ。ギターで爆音を放出し続けるJOJO広重氏は楽しそうだった。純然たるノイズ音楽を自分は聴いたのとが無く、苦手意識は正直あったけど、非常階段のパフォーマンスに悪い感じは全くない。気づけばあっという間の、印象に残るステージだった。

ソウル・フラワー・ユニオンは、ほとんど予備知識なしで聴いたが素晴らしかった。雑多な音楽性とともに、人懐こくて熱い唄とメロディが圧倒的な祝祭感をもたらしていた。

正直いうと、僕は楽しめないのではないかと心配していた。彼らのTwitterでの政治的な発言は好きではなかったし、彼らが主張する脱原発と僕の意見は異なっていた。…だが、音楽とは、そんな意見の相違を包摂する力を持っているものなのである。彼らの歌は、そのことを何よりも説得力を持って僕の胸に響いていた。

そして終盤。出演者全員がステージに登場して演奏。ここで合奏されたBiSの代表曲にしてアイドル界のアンセム「nerve」では、僕もめちゃくちゃテンション上がって叫び、エビ反った。ステージからは沢山の(被災地・女川町産の)笹かまぼこが投げ入れられた!フロアには「がんばっぺ!女川」と書かれたタオルを掲げている人がいた。ステージと観客が文字通り一体になったひととき。なんという高揚感、多幸感だろう!




(2013年 ボロフェスタ出演時の映像。これとほぼ同じ雰囲気だった。)


ジャンルは違えど各界のオルタナティブ・ミュージックが一体となって、こんな祝祭感あふれる空間を現出させたことに対して、僕は興奮を感じていた。これまでの自分の体験の中で5本の指にはいるくらいの、あまりに楽しくて幸せなライブだった。

(「後篇」へ続く)