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化学療法終了

今日で、2クール目の抗癌剤投与は終了である。
1クール目より遥かに少ない吐き気と倦怠感だったので、だいぶ楽だったように思う。
後は、骨髄抑制がどれくらいなのか、という一点に限るのだが。
相変わらず食欲はあるので、今のうちに食べれるものでお腹を満たすことにしている。
そのうち、生物禁止になるから、冷やしうどん、サンドイッチ、サラダ、おにぎり・・・などが食べごろだ。
どれも普段から食べているものなので、食べれないという時期があるだけでも精神的に苦痛になる。
この苦痛を和らげるためにも、今はたらふく食うしかない。
案の定食いすぎて、気持ち悪さは最高潮だったけどね。
その最高潮具合といったら、U-23日本代表対ベネズエラA代表戦の田中達也のゴールくらい凄かった。
おれは、そのゴールを洗面台で吐きそうになりながら見てたんだけど。(笑)
抗癌剤が終わったので、後は骨髄抑制が早く収まるように祈るだけだ。
無菌病棟は、白血病などの病気で、骨髄の働きがおれと同じくらいかそれ以下に下がってしまっているような人たちばっかりである。
看護婦さんたちも、そのあたりに関してはプロフェッショナルだ。
前回出た高熱も、今回はちゃんと看護婦さんたちのケアがあるそうなので、出ないかもしれない。
とにかく、副作用によって起きた感染症で死ぬのだけは勘弁だ。
頑張って手洗いうがいをかかさずにしていかねば。
今回はもっと早く回復してくれよ、おれの骨髄ちゃん!

点滴

昨日の消灯時間の後、点滴が全く落ちてないことに気づいた。
ナースコールを押して看護婦さんに来てもらう。
「点滴が落ちてないみたいなんですけど。」
「そうですねぇ。じゃあちょっとナースステーションまで来てもらっていいですか?」
お。
おれもとうとう禁断の遊び場に侵入か!
ナースステーションなんて滅多に入れないからなんか嬉しい。
おれは、今にも駆け出したい気持ちを抑えつつ、
「今ですか?」
なんて聞いたりして、行きたくないような素振りを見せて焦らしてみる。
「もう。今に決まってるじゃない!」
と怒られたおれは、見た目は嫌々、心はウキウキ気分でナースステーションに潜入することに成功した。
外から見るナースステーションは、部屋が明るくて綺麗で、人がたくさんいていつも誰かがせわしなく動いているように見えるのだが、実際に入ってみると、机は汚いし物は散らかってるしでちょっと幻滅した。
夜勤の看護婦さんは2人しかいないために、とっても静かだ。
「じゃあとりあえずルートを変えてみましょうか。」
ルートとは点滴を送る管のことで、ルートを変えるとは、ルートの途中で血が溜まっている部分を新しいのに変える、ということらしい。
とりあえず一番針に近いところのルートを外して、詰まっていた血を取り出せるかどうか試してみる。
血は、針の形で固まり始めていたがなんとか取り出せた。
これで流れれば問題は解決したことになるので、新しいルートを付け替え、点滴を流してみる。
しかし、ルートを変えたくらいでは全く点滴は落ちなかった。
「しょうがないから点滴差し替えましょうか。」
ということで、当直の先生を呼んでもらう。
看護婦さんが電話で当直の先生を呼んだのだが、当直の先生は、「すぐ行きます。」と言ったくせに20分くらい来なかった。
おかげでおれは夜のナースステーションで遊び放題。
あんまりいじると悪いので眺めるだけにしたが、注射針とかルートとかイソジンとかがたくさん置いてあったり、勉強会の記録なんかもこんもりあった。
看護婦さんは、新しい治療法などが入るたびに勉強会があるので、日々が勉強の繰り返しらしい。
しかも、おれの点滴を変える間にもナースコールは鳴りっぱなし。
やっぱり看護婦さんは大変そうだなぁとしみじみ感じた今日のナースステーション見学でした。
点滴はスムーズに差し替えられたのだが、全てを終えたのは11時過ぎだった。
おかげで今日は寝不足。
気持ち悪さも合い混じって気分は絶不調の一日でした。
ちゃんちゃん。

鼻毛の大切さ

朝、お隣さんの鼾の煩さで目が覚め、ついでだからトイレに行くことにした。
昨日のだるさを考えると、今日は副作用が強く出ていてもおかしくないはずで、立ちくらみを考えてゆっくり慎重に立ち上がってみた。
しかし、副作用らしい副作用は何も感じず、気持ち悪い感じも一切しない。
どうやら、昨日の倦怠感は副作用ではないらしい。
じゃあなんだったんだろう。
てなわけで冷静になって考えてみると、ただの寝不足が原因なのかもしれない。 
トイレに行ったのが6時くらいだったので、看護婦さんが電気を点けてみんなを起こしに来た。
しかし、夜中に何度もトイレに起きていたのと、隣の人の鼾の煩さで今日も寝不足の予感がしたので、その後二度寝をすることにした。
9時まで二度寝をしていたのだが、検温と脈と体重を測っていなかったために看護婦さんに起こされた。
まだまだ寝足りない気はしたが、やらなきゃいけないことなのでしょうがない。
体重なんか毎日測らなくてもいい気がするんだけど。
朝食は朝8時に来るので、どうやら食べ過ごしてしまったらしく、しょうがないので看護助手さんに買い物を頼むことにした。
買い物は、売店で売っている物の中からチョイスするのであまりバリエーションがないのだが、それでも食べたいものはたくさんある。
ジャムパンとか惣菜パンも食べたかったのだが、結局カップヌードルのカレー味を買って来てもらうことにした。
看護助手さんは、
「カレー味がなかったらどうしますか?」
と言うので、まさかカレー味がないなんてことはないよな、と思いつつも
「塩、醤油、シーフードの順番でお願いします。」
と答えた。
しかし、助手さんは醤油味を買ってきたのだった。
カレー味なかったのかぁ。
すんげぇ食いたかったんだけどなぁ。

ところで、無菌室は歯磨きやうがい、トイレの後のケアに物凄くうるさい。
歯磨きは一日5回、うがいは2時間に一回、トイレの後は「サニーナ」という薬をお尻に噴射しなくてはいけない。
ようするに、徹底して感染症にかからないように自己管理しているのであるが、それでもおれには一つどうしても気になることがある。
それは、「鼻毛」である。
鼻毛は、鼻から息を吸い込むときに、細菌が体内に入るのを防いでくれる役割がある。
つまり、今のおれにはとっても重要なお毛毛なのである。
しかし、この鼻毛というやつは、きまぐれでひょこっと穴の中から顔を出すために始末が悪い。
ぶっちゃけ、病院内で鼻毛が出ているのは一向に構わないのだが、病院を出たときに大変困るのである。
例えば、見舞いに来てくれた女の子がおれより先に鼻毛ちゃんを発見した場合とかはもうどうしようもないくらいきまずい空気になる。
男の友達でも、「お前鼻毛がこんもり出てるぞ。」なんて突っ込んでくれないやつは、帰った後に、一緒にお見舞いに来た友達と「軍司鼻毛出てなかった?」なんて会話をするのだろう。
おれも、お見舞いに来てくれた人が帰った後にふと鏡を見て鼻毛が出ていると、「あれ、こいついつから飛び出てんだろう?」ってかなり心配になる。
まぁようするに、かっこ悪いから鼻毛を切るか抜くかしないといけないんだけど、感染症のことを考えると処理するのは危険な気がして、結局何もできないのだ。
いつもなら1週間に一回くらいは処理してたんだけど、いまやおれの鼻毛は伸び放題。
まさしくボボボーボ・ボーボボ。
鼻毛真拳は使えないけど。
みんな、おれの鼻毛が出てたら、ちょろっと注意してね。

化学療法開始

今日から二回目の化学療法が始まる。
化学療法を始めると、点滴を引き連れて歩き回らなければいけないし、副作用でヘロンヘロンになるしで、前もっていろいろとやっておかねばいけないことがある。
一クール目でだいたいのことは経験しているので、準備もスムーズで気楽である。
点滴を打つ前にお風呂に入らなければいけないので、部屋に備え付けられているシャワールームで汗を流して体中をゴシゴシゴシゴシ。
すっきりさっぱりしてちょっと眠くなったので、点滴を打ってもらうまでの1時間弱ほどを一眠りしようかと思ったが、夜になって寝れなくなると困るので、掲示板を見たりメールを返信したりで時間を潰すことにした。
いろんな人からのメールや書き込みですっかり気の緩まってしまったおれは、抗癌剤を打つということは、注射を刺す人がいるという超肝心なことを忘れていた。
10時くらいに看護婦さんがやってきて、
「先生が来たから点滴始めましょうね。」
と言った。
まさか笑いの神様は降りてないよな。
今のおれに、笑いの神様を呼べるようなMP(気力。)は残っていない。
となると、何か神がかり的な力が働かない限りやつは来ないはずだ。
来るな。
絶対来るな。
おれの祈りは天にも届きそうな勢いだった。
しかし、やはりというか案の定というか、思ったとおりバラモス先生はやってくるのだった。
しかも超ご機嫌。
「ちぃ~っす。」
って言われた。
ちぃ~っすじゃねえよ!
なんでいかりや長介のマネなんかしてんだ!?
全然わからん。
そのハイテンションの意味が全くわからん。
そのテンションを上手く注射につなげてくれればいいんだけど。
バラモスは、おれの左手の血管を一生懸命探して、見つけちゃったと言わんばかりに、
「お、これでいこうか。」
と言った。
え。
それ丸見えじゃない?
むしろこの血管しかなくない?
こんなんで大丈夫なのか!?
また何度も注射する気じゃないだろうね?
しかし、おれの心配を他所にバラモスはなんと一発で注射を成功させた。
やった!
今日は一度で済んだ!!
それが当たり前なんだけど、今までの前科を考えると一回で成功したのは奇跡である。
おれのいない間に成長したんだな。
その後のブレオマイシンも、お尻にチクッとしただけで済んでしまった。
すげぇ、バラモス注射上手くなってる!
痛くなくなった!!
でも、ちゃんとできるなら最初から一回で刺してくれ。

今回から行うBEP療法は、前回のVIP-VB療法よりも骨髄抑制は弱いのだが、おれの骨髄は一回治療を行ってすでに弱っているために、一日目にして副作用が出てきた。
おれの場合、最初に出てくる副作用は、倦怠感と頭痛に近い頭のだるさである。
頭がずぅ~んと重くなって、歩きたくなくなってしまう。
歩きたくないから、トイレに行くのがめんどくさくなる。
そうなると、ベッドにお漏らし…
てなことは絶対にないのだが、ついつい「漏らしちゃおうかな。」なんて思ったりもするくらい、トイレに行くことがめんどくさい。
しかし、抗癌剤は体の中に溜めてしまうと腎臓に悪いので、利尿剤を使ってすぐに外に出さなくてはならず、そのため1時間半に一回のペースでトイレに行くことになってしまうのだ。
寝ている間もペースは全く落ちない。
副作用とトイレ。
この二つの辛さのため、しばらく日記お休みします。

無菌病棟に再入院

今日から再び入院することになっているので、朝起きて、飯食って歯を磨いて、いざ病院へ。
これから治療をしに行くとはいえ、やっぱり入院するということは憂鬱である。
やることないし、みんなには会えないし、新しい部屋のはす向かいのおじさんはトイレで用を足しても流さないし。
やっぱきついわ、無菌病棟。
個室から4人部屋になるっていうのもあるけど、何もかもが今までと勝手が違う。
前の病棟に慣れたと思った矢先に病棟移動っていうのもあると思うけど、これからしばらく慣れるまではストレス溜まりっぱなしだろうな。
どうにかしてストレスの捌け口を探さなくては。
テレビ、パソコン、漫画。
どれもストレス解消にはならない。
ゲーム、パズル、知恵の輪。。。
できなかったら逆にストレスが溜まっちゃいそうだ。
大声で叫んだり、暴れたりは体力的に無理だし。
なんもない。
ストレス発散方法が何もない。
何か探さなきゃ、そのうちストレスで10円ハゲとかできちゃうかも。
あ、今のおれってば髪の毛ねぇんだったわ。(笑)
お薦めのストレス発散方法とかある??

無菌病棟に入ると、最初にベッドに案内されてすぐに採血があった。
その後、その採決の結果を踏まえてのバラモス先生による病状説明を受けた。
「体調はどう?」
「たちくらみ以外は至って元気です。」
「そうねぇ。採決の結果なんだけどね、残念だけどレアルマドリードは諦めてもらっていいかな?白血球が2940、血小板が108000まで回復してきてるから、明日から抗癌剤を始めれるんだ。」
残念なんだけど、って言われたもんだから、採決の結果が全然良くないのかと思った。
でも、数値が上がっていたにしたって、どっちにしろ残念なことに変わりはない。
生グティや生ベッカムに会えないのは、抗癌剤が始められないのと同じくらい残念なことなのだ。
でもここで運を使っちゃうと後で足りなくなりそうだから、後でたっぷり使えるように今回は運をきっちり温存しておくことにする。
平間さん、せっかく誘ってくれたのに申し訳ないです。
平間さんが撮った写真が発売される日を楽しみに待ってますね。
病状説明は5分程で終わり、「何か質問はある?」と聞かれたので、はっきり聞いていなかった病理の話を聞くことにした。
病理とは、その癌の種類のことである。
地元のウハウハ病院では病理の診断ができなかったらしく、何も聞かずに癌センターに転院してきたのだが、新しい病院でも病理の結果は聞いていない。
なんで病理の結果が気になるのかというと、精巣腫瘍にもいくつか種類があって、インターネットで、「奇形腫は抗癌剤でも死滅しないので、他の癌に比べて再発率が高い。そのため、郭清手術は欠かせない。」と書いてあるのを読んだからである。
郭清手術というのは、お腹を切って、癌細胞を全て摘出する手術である。
このときに、癌細胞をこぼしたり、臓器にぶつけたりするといけないらしく、手術は慎重を期して行われるために相当時間がかかるらしい。
しかも、摘出する場所によっては射精障害が起こるらしく、そうなると子供は完全にあきらめなくてはいけなくなってしまう。
だから、郭清手術はやりたくない。
こういうとき、おれはいつも悪いほうに話が弾むことが多いので、なんとなくおれの癌は奇形腫も含まれているような気はするのだが、やっぱり気になるので聞いてしまった。
案の定、先生の口からは聞きたくない言葉が連呼された。
やっぱりか。
やっぱりお前はいてしまったか。
もう嫌だ。
癌なんか嫌いだ!!

郭清手術をしなければいけないということもショックだったのだが、もうひとつショックなことがあった。
「郭清手術ってのはお腹だけですよね?首に転移した癌細胞は取らないんですか?」
「首の癌細胞は基本的に取らないね。お腹の癌細胞が死滅してれば問題ないはずだから、お腹のを取って経過観察ってのが普通かな。」
おい、それって危ないじゃないか。
奇形腫が抗癌剤で死滅しないのなら、おれの体の中には生きたままの癌細胞が残ったままってことになる。
そんなの再発するに決まってるじゃん。
ただでさえ骨髄が弱いから抗癌剤とか打ちたくないのに、再発したらその回数が増えるのは当たり前だ。
助からない可能性のほうがどんどん高くなるだろう。
無理だ。
絶対無理だ。
頼むから再発しないでくれ。
こんなこと治る前に言うことじゃないんだけどね。

癌細胞

西脇さんと石川さんとにのみやさんがお見舞いに来てくれた。
三人はおれの部屋に談笑しに来たみたいで、仕事や彼氏の愚痴ばっかり言うだけ言って帰っていった。
全く。
西脇、石川コンビは、この前のお見舞いの時にはエロ本を土産にチョイスしてくるし、今日は愚痴ばっかだったし。
お前ら、おれのこと病人だと思ってねぇだろ!
おれは病気だぞ!!
癌だぞ!!!
今度来るときは、かわいいお友達の一人や二人連れて来い!!!
そしたら男の一人や二人、いくらでも紹介してやるよ!(笑)
その後、田上とぎっちゃんとゆうやが来てくれた。
ぎっちゃんは、お見舞いに来るのにおれの家の住所だけを聞いて、最寄り駅とか交通手段を調べて来なかったらしい。
予定の時間になっても来ないので、ぐうたら午後の紅茶を飲みながら待っていたら、ぎっちゃんから電話がかかってきて、「今、白鳥さんちの前にいるんだけど、隣は荒井さんちだよ。」とかわけのわからないことを連発していた。
そんなんでわかるかよ、このお馬鹿さん。
白鳥さんちのお隣さんなんてどうでもいいし。
たまたま、中学校の部活の帰りに白鳥さんちにピンポンダッシュとかしてたから知ってたけど。
普通はわからないよ、そんなこと電話で言われてもさ。
適当なぎっちゃんは、お土産にDVDを持ってきてくれたのだが、そのセンスのなさは相変わらずだった。
「バカルディ」のコントって。
「さまーず」のコントならまだわかるけど、バカルディって何年前だよ。
このDVDは、ぎっちゃんが選んだだけあって、やっぱり全然笑えなかった。
え、これお笑い??
って感じ。
四人で見たんだけど、田上もゆうやもぎッちゃん本人までも、つまんねぇを連発していた。
ぎっちゃん!
お土産はいらないって言ってるんだから、持ってこなくていいんだよ!
ぎっちゃんは、仕事でも相変わらずのボケっぷりで、
「この前フロッピーディスクドライブを解体して作り直したんだけど、完成したらネジが3個余っちゃったから、ポケットに隠しておいたよ。」
と言っていた。
こんなやつが自分の会社に来たら最悪だろうな。(笑)
高いお金払って修理に来てもらってるのに、さらに壊して帰っていくなんて有り得ない。
しかし、ぎっちゃんは、「明日も外回りだよ。」と言って帰っていった。
え!?
もう外を回ってるの?
そりゃまずいだろ!
田上は「木更津キャッツアイ~日本シリーズ~」のDVDを選んできてくれたみたいだ。
面白そうだからずっと見たかったんだけど、ドラマを見てねぇから全然わかんねぇんだよなぁ。
しかも、出演してる人が池袋ウエストゲートパークとほとんど一緒なんだもん。
池袋ウエストゲートパークは面白かったんだけどさ。
だから、ドラマを最初から見てたら絶対見たい映画なんだけどね。
でも、面白そうだからドラマを見る前に見ちゃおうかな。

インターネットで精巣腫瘍について時間をかけて調べていると、いろいろな知識が手に入る。
ついこの間なんかは、セミノーマの癌細胞の写真を見つけてしまった。
おれの癌は非セミノーマなので、形なんかは違うのかもしれないけど、それでも貴重な写真が見れて良かったと思う。
癌細胞は、細くて先っちょが丸くなっていて、なんとも言い難い気持ち悪さがあった。
おれは、その写真を見て以来、すっかり癌細胞を倒すイメージができあがってしまったのだった。
今日、写真を見たためかはわからないが、入浴中にとんでもない気持ち悪い体験をするはめになった。
手術をしてから2ヶ月経って、ようやく傷口が全て塞がり瘡蓋も綺麗に取れたので、手術をしてから初めて湯船に浸かることができた。
久しぶりに入った湯船は物凄く気持ちが良くて、おれの習慣である洗面器をかぶりながら鼻歌を歌うこともできた。
今日の鼻歌はspitzの「愛のことば」。
なんか良いんだよね、spitz。
昔の曲しか知らないけれど、「楓」とか「運命の人」とか、アルバムの曲でいうと「ラズベリー」とか「初恋クレイジー」なんかが好き。
入院してから、spitzばっかり聞いてる気がする。
spitz万歳!
ところで、洗面器をかぶりながら歌を歌うと、歌が上手くなるらしい。
その噂を聞いた高校生のおれは、毎日のように洗面器をかぶり続け、ふと気がつくと、洗面器はお湯を溜めるものからかぶる物へと変わっていたのだった。
おれってば何やってんだろうなぁ、なんて物思いに耽りながらお湯に浸かっていると、お風呂に入っている時間はあっという間に過ぎていったのだが、なんだかだんだんお腹のあたりが気持ち悪くなってきた。
なんと言って良いのか上手く表現できないのだが、明らかに癌細胞だろうと思われる物体を、お腹のあたりに確実に感じてきているのである。
しかも、癌細胞の大きさや形の細部まではっきりとわかる。
この前の超音波検査で、腫瘍の大きさは9.5cmくらいだろうとの先生の診断だったが、もう少し大きい感じがした。
その癌細胞と思しきものは、水の揚力に負けて体の表面へと浮いてきているみたいだった。
気持ち悪いと言ったらありゃしない。
しかし、せっかく癌細胞の姿形がはっきりわかったので、その容姿を体に焼き付けて、一生懸命癌細胞を倒すイメージを想像することにした。
今までは、見えない敵と対峙していたからはっきり焦点が定まらなかったけど、これで確実に癌細胞を倒すことができるね。
さらば、癌細胞!
もう二度と来るなよ!!

浦実サッカー部

朝10時過ぎに、研究室で一緒だった、中山さんとおっきーと酒井さんが来てくれた。
この前大学院に進学した輩がお見舞いに来てくれたときの話をしたのだが、その話を聞いてみんなびっくりしていた。
研究室に麻雀卓があること。
定森が麻雀を覚えて雀鬼の仲間入りを目指していること。
平松研のホームページができたこと。
平松研の部屋が二つに増えたこと。
コーヒーメーカーが設置されたこと。
中山さんは大学院卒業なので、自分たちの頃と比べて今の研究室の状況がすっかり変わってしまったことを羨ましがっていた。
おっきーは、「楽しそうだから院に進めば良かった。」とぼやいていた。
おれは「一緒に院に行こうぜ。」って誘ったのに、おっきーがやだって言ったんだぞ。
おっきーは仕事も辞めたいらしく、辞めたら学校の先生を目指して専門学校に通う、と自分の夢を熱く語って帰っていった。
酒井さんは、研修期間が一年間もあるらしく、まだまだなぁなぁでなんとかなっているみたいだ。
研究室のみんなは、以外に真面目に働いてるみたいだった。

その後、高校のサッカー部のみんながやってきた。
おれは、高校でサッカーをやっていたときが一番まじめだった気がする。
朝早起きして朝練に行って、筋トレしてミニゲームして。
午後の練習は一番にグラウンドに行って、ドリブルの練習をしたり。
下手は下手なりに努力をしないと認めてもらえないからね。
頑張ってるところを人に見られるのはあんまり好きじゃないから、家に帰ってからの自主練習のほうが多かったけど。
だから、高校のサッカー部の友達はみんなライバルだった。
誰かに会えば、フェイントやパスや戦術の話になり、みんなと競い合って、切磋琢磨しあって、おれはサッカーが上手くなった。
そんなやつらだから、お見舞いに来てくれたのにサッカーの話ばっかり。
今日は、しらいっちゃん、小渕、荻原、まっちー、ささ、力示、田端、こんち、もっちが来てくれた。
しらいっちゃんは、駿河台大学を卒業後、自衛隊に入って毎日のように無駄な仕事をしてるらしい。
各々が、1×1×1四方のでっかい穴を一日かけてスコップで掘り、掘り終わったら「お前の穴綺麗だなぁ」なんて観賞し合うだけらしいのだが。
何やってんだか。(笑)
小渕はすっかりギャル男でチャラ男になっていて、大学を卒業して今はすっかり自由人らしい。
ガソリンスタンドで週4~5日アルバイトをしているので、自由人の中では真面目なほうだと思う。
荻原は、何日か前の日記にも書いたけど、1留して2回目の就活の真っ最中だ。
まっちーも、専修大学を卒業して何をやっているのかと思えば自由人らしい。
ささは、機械のメンテナンスなどを手掛けている会社に入ったみたいで、会社周りがいろいろと大変そうだ。
力示は、高校の頃の真面目さが嘘のような廃人になっていて、現在東邦大学4年生なのだが、就活もしてないしアルバイトもしてないし、何をやりたいんだか良くわからなかった。
今もサッカーは続けているものの、相手にドリブルで抜かれたら、取り返そうと追いかけるのではなくて、追いかけてるフリをするようになっちまったらしい。
高校の頃、二人組みの基礎練習は3年間ず~っと一緒にやっていたし、フェイントの練習とかリフティングの練習とか筋トレとかを真面目にやっていた仲だっただけに、なんかかなりショックだった。
おれが真面目にやらなかったときは、「真面目にやろうぜ。」なんて注意してくれたりもしたんだけど。
見損なったぞ力示!
おれのホームページのカウンターを1000くらい無駄に増やしたりもしたらしいし。
そんな暇があるなら就活しろ!!
田端は、合いも変わらず女の子のお尻ばっかり追いかけてるみたいだ。
メル友に会いに岐阜と京都まで行ったらしい。
荻原の友達の女の子と、荻原の知らない間に勝手にメールアドレスを交換してメールをしてたらしい。
どっちも未遂に終わったところが田端らしいけど。
そんな田端も、今は武蔵工業大学を卒業して、立派にシステムエンジニアとして働いてるみたいだ。
こんちは、パソコン系の専門学校に進学したので、おれらより一年先に卒業して就職した。
就職してからは休みの日のサッカーの誘いにも一切応じず、家でゴロゴロ寝ているだけだったらしく、久しぶりにみたこんちは丸々と太っていた。
もっちは高校1年のときにサッカー部をやめたのだが、おれと同じく上尾出身ということと、今日来てくれたみんなと仲が良かったということで呼ばれたらしい。
どうやら同じ中学校の女の子と付き合っているらしく、その子の話になるとデレデレしていた。
高校の頃から、消防士になりたいと毎年のように公務員試験を受けていたのだが、勿論一度も受かってないらしい。
そんなもっちも、今年で5年間通った拓殖大学を卒業してしまうので、来年からは自由人の仲間入りみたいだ。
なんか高校の友達は、ほとんどみんな自由人かガテン系なんだよなぁ。
特にサッカー部のみんながそう。
でも、みんなに共通して言えるのは、どこかでサッカーを続けているということ。
力示とささは目白クラブで、荻原は新宿選抜で、田端とこんちともっちは芝原クラブで、しらいっちゃんは自衛隊で、小渕は川口のクラブチームで。
あれ、まっちーはどこでやってるんだ?
まっちーは、高校の頃に怪我でサッカーができなくなってマネージャーに転向したからなぁ。
今もまだサッカーができないのかもしれない。
とにかく、みんながサッカーを続けている以上、おれも元気になってクラブチームに入れてもらわなければ。
早くサッカーがしたい!

さらにその後、地元のアイドル的存在のさっちゃんが来てくれた。
さっちゃんは、高校のミスコンに選ばれた経歴の持ち主で、とってもキュートな女の子である。
しかも、おれが「お見舞いの品はいらないよ。」とメールをしたら、「うん、わかった。手ぶらで行くね。」なんて返事をよこしておきながら、お見舞いの品を持ってきてしまうようなとっても素敵な心も持ち合わせている。
持ってきてくれた物も、何故かおれ好みの生クリームが溢れんばかりのシュークリーム。
和菓子は苦手だって言ってるのに羊羹を買ってくるようなやつとは大違いだ。
あんた最高だよ。(笑)
癒し系って言葉がぴったりのさっちゃんは、人事の仕事をしてるらしい。
明日は、会社の清掃に来る業者の見張り番をさせられるらしく、休日出勤だと言っていた。
それって人事の仕事なのかなぁ。
ま、いっか。
シュークリーム美味かったぞぃ。

あ、そういえば今日親父の誕生日だったな。
誕生日おめでとう。

のぶと佐藤と石川

今日は、地元のサッカー部で一緒だった、のぶと佐藤と石川と遊ぶことにした。
遊ぶと言っても、おれが化学療法中に読む漫画本選びに付き合ってもらい、そのままご飯を食べに行く、というだけのことなんだけど。
本来なら漫画本くらい一人で買いに行きたいんだけど、今のおれには全くもって無理な話なので、みんなが予定を合わせて飯を食いに行くことになった今日を見計らって、漫画本を買いに行くのを手伝ってもらうことにしたのである。
しかし、どうやら漫画本を買いに行くのは石川しか都合がつかなかったらしく、最初は二人で本を買いに行った。
佐藤は5時に、のぶは6時に合流の予定らしい。
5時まで1時間近くなので、とりあえず一軒お店を回ることにする。
なんとなく「ジョジョの奇妙な冒険」が欲しいなぁと思っていたので、それなりに大きい本屋に行かなきゃなぁと、17号沿いのBOOK-OFFに行くことにした。
なんでおれがジョジョを欲しがっているのかというと、全部で63冊もあるのに、一度読んだだけじゃ意味がわからないので、何度も読み直さなくてはいけないからだ。
2回読んだら126冊分。
3回読んだら189冊分。
かなり暇を潰せそうでしょ?
そう考えたらめっちゃ欲しくなっちまったね。
もうおれの心はジョジョでいっぱい。
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!(わからない人は気にしなくていいです。)
しかし、BOOK-OFFにはお目当てのジョジョはたったの4冊しかなかった。
石川に、
「次のお店探そうよ。」
って話をすると、
「佐藤が帰って来たらしいから、迎えに行くか、本を探してから迎えに行くか、どっちにする?」
と聞かれた。
佐藤は、以前お見舞いに来てもらったときに、古本屋で「20世紀少年」をたくさん買って来てくれたので、古本屋の情報にも詳しいに違いない。
おれたちは、佐藤を迎えに行くために一旦帰ることにした。
何気なくBOOK-OFFを出て17号に戻ると、BOOK-OFFのすぐ隣に「BOOKING」という怪しげで今すぐにでも潰れそうなお店を発見した。
外見からして今にも潰れそうだったので、おれと石川は見向きもしないで佐藤を迎えに行ったのだが、佐藤いわく、この「BOOKING」は相当熱いお店らしい。
「だっておれ、あそこでドラゴンボール全巻揃えたんだぜ!!」
「まじ!?そりゃあすげぇ!!」
「行くしかなくねぇ!?」
今こうして日記を書きながら考えると、ドラゴンボールが全巻揃っているのがすごいのではなくて、「ドラゴンボール」という響きが良かっただけだと思うのだが。
なんたって、おれらはみんな「かめはめ波」を出そうとしてた世代だからね。
子供の頃、
「お父さん、かめはめ波出せる?」
って聞いたら、
「一年に一回だけ出せるよ。」
って言われて、もうそれだけでうちの親父をものすごい羨望の眼差しで見てたもんなぁ。
親父が嘘をついていると知ったときのショックといったら、松浦亜弥が実は同い年!?って話を週刊誌で読んだときくらいショックだったもん。
話は戻って、佐藤を乗っけてもう一度17号沿いを走り、今度は「BOOKING」に入店した。
店内をざっと見回してみると、さっきのお店と大して変わらない感じがしたのだが、ジャンプコミックスと書いてある棚を見たらいきなりジョジョを発見した。
なんと63冊+ストーンオーシャン編17冊、全て揃っている。
すげぇ!
BOOKINGすげぇ!!
さすがドラゴンボールを全巻揃えれるだけある。
かめはめ波も夢じゃない!
しかし、こんだけ揃ってるとなると、他の漫画も全部揃ってるんじゃねえのか?
何か他にもっと良い本があるかもしれない。
ということで、とりあえず店内を全部見回してみることにした。
筋肉マン・・・。
あ~、筋肉ドライバーとか久しぶりに見てぇなぁ。
ちなみにおれは「便器マン」が好きだった。
幼稚園児はう○ちとか大好きだからね。
もちろんおれも例に漏れずに大好きだったのさ。
まさかそれがあだ名になるとは思わなかったけど。。(小、中学校のときのおれのあだ名はう○こだった。)
どらえもん・・・・・・。
秘密道具って全部で1963個あるらしいんだけど本当なのかなぁ。
東京大学物語・・・・・・・・・。
ちょっとエッチだけど面白いんだよね。
他にも全巻揃ってて読みたい本はたくさんあった。
でも、やっぱりジョジョの魅力には敵わない。
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!
結局ジョジョを買うことにした。
63冊だけで13200円とちょっと高かったが、石川と佐藤に少しずつお金を借りて全部買っちゃった。
のぶが来るまでまだ時間があったので、本を置きに行くのとお金を返すのをかねて、おれの家に行くことにする。
それからのぶと合流して、お好み焼き屋の「わいず」に行くことにした。
おれは、退院した日に石川とのぶとラーメンを食べに行ったけど、それを除けば多分半年ぶりくらいの外食になる。
外食ってのは、なぜか血湧き肉踊るというか胸がわくわくするというか、おれにとってはもうたまらんほど楽しいもんだ。
さらに半年ぶりっていうのも重なって、おれのテンションは100パーセントを遥かに超え、今にもドッカンと破裂しそうだった。
それでもやっぱり貧血でフラフラなので、おとなしく心の中で盛り上がることにする。
わいずは、お好み焼きともんじゃが両方食べれるので、みんなで食べたいお好み焼きを一つずつチョイスして、食べ終わったらもんじゃを注文しようということになった。
他に、きのこと野菜の鉄板焼きとか、ベーコンじゃがバターとか、デザートなんかを食べて、久しぶりに楽しく飯を食べた気がする。
男4人が集まっても、やっぱり話すのは恋愛話。
ここらへんは女の子と変わらないね。(笑)
のぶは、4年か5年付き合っていた彼女と1年以上前に別れたのだが、その彼女から「よりを戻したい。」と電話があったらしい。
その彼女は創価学会に入っていて、「結婚する相手は創価学会に入っている人じゃなきゃ嫌!」という理由でけんかになって別れたのだが、のぶはおれに別れる別れないという話をしていたときからずっと、「おれはあいつのことが好きだから別れたくない。」と言っていたのだ。
でも、彼女が折れずに結局別れてしまったのだけど。
そんな彼女も、創価学会の人たちと1年間を過ごしていく中で、同じ考えを持った人と一緒にいるのはいいのだけれど、それと結婚とは全くの別物だ、ということに気づいたらしい。
おれは、「別れたくない。」と言っていたころののぶを知っているし、のぶと彼女がめちゃめちゃ仲の良かった頃には3人で映画を見に行ったこともあるので、気持ちが揺れているのぶを見ていて歯痒くて仕方なかった。
しかも、おれは自分の元カノがお見舞いに来てくれたときに、物凄く不思議な感じがしていろいろと思うことがあったので、また付き合うかは別にして絶対一度は会うべきだ、と言い続けた。
しかし、のぶは、「新しい彼女がいるから今は会うことはできない。」の一点張りだ。
確かにそれはそうなんだけど。
そりゃあ今の彼女には悪いだろうけど。
恋愛ってタイミングが物凄く重要だと思った。
昔はあんなに好き同士だったのに、いろんなことが絡み合ってくると上手くいかなくなってくる。
やっぱり1年って月日はおれらには長すぎるのかなぁ。
おれはそんなことはないと思うんだけど。
のぶは、自分に話を振られるのが嫌なので、佐藤に、「最近どう?」と切り出した。
23年間、一度も女の子がらみの話を聞いたことのない佐藤なら、いつもは「なんもねぇよ。」と切り返すところなのだが、今日に限って「ふぅぅ~ん。」って反応をした。
おい、佐藤怪しいぞ!
おれらに内緒で女作ったろ!!
どうやら石川は事情を知っているらしく二人でとぼけだしたので、おれとのぶで二人が話すまで追求することにした。
ところが、何を聞いても二人は一向に喋る気配を見せなかったので、いらいらしてきたおれらの妄想は、激しくなりすぎてとんでもないところにいってしまった。
あまりに引っ張りすぎてもう耐えられないと判断したのか、やっとこさ佐藤は観念して白状し始めたのだが、引っ張ったわりには全然普通だった。
去年の暮れに友達の友達として知り合い、バレンタインでチョコをもらい、そのままゴールイン。
普通~。
至って普通~。。
佐藤、引っ張ったわりには普通過ぎて面白くない!
まぁでも良かったよ。
やっと佐藤にも彼女ができたんだな。
顔はかっこいいのに女っ気ゼロな佐藤も好きだけど、鼻の下を伸ばしてデレデレしてる佐藤も好きだぜ。
むしろ、鼻の下を伸ばしてるほうが佐藤らしいっちゃ佐藤らしいかも。
ただ、ワサビーフを食べられた恨みは一生忘れないけどな。(6月1日の日記を見てね。)

外来診察

今日は、退院してから最初で最後の外来診察の日だ。
何をするかと言えば、ただ採血をして骨髄の回復具合を見るだけなんだけど。
採血の結果はあんまりよろしくなかった。
確かに数値は上がってきてはいるものの、やっぱり他の人に比べるとかなり回復が遅いらしい。
血小板は77000もあった(+33000)ので良かったのだが、他のは少ししか上がっていなかった。
白血球なんて240(今回は2670だった。)しか上がっていなかったし。
先生の話によると、化学療法を始めるには血小板は10万以上あったほうがいいらしい。
今日の採血の結果を見ると、27日から化学療法が始められるのかどうかは微妙みたいだ。
「月曜日もう一回採血をしてみて、駄目そうなら化学療法を少し遅らせるかもしれない。」
と言われた。
それはそれでショックなのだが、今のおれには他に目的がある。
「もし化学療法が遅れるとしたら、27日に外出してもいいですか?」
「いいよ。外出は全然構わないよ。」
よっしゃ~!!!!
おれはレアルに会いたいと言う希望を話すことにした。
先生は、「それだったら化学療法を開始するのを遅らせようか?」的なことも言ってくれたのだが、治療が遅れればそれだけ助かる確率も減るのでやっぱり死ぬのは怖いし、何より無菌病棟に入院すると1日1万円かかってしまうこともあって、親の負担も増えることを考えると、素直に遅らせてくださいとは言えない。
おれは、考えに考えた結果、
「治療ができるようなら治療を始めてください。でも、できないようなら27日は外出許可をください。」
と答えることにした。
前日までどうなるかわからないので、平間さんには迷惑をかけてしまうことになると思います。
せっかく誘ってくれたのにほんと申し訳ないです。
でも、やっぱり死ぬのは怖いです。

レアル・マドリード!!

今日はお見舞いに来る人もいないので、家でのんびりと過ごすことにした。
朝起きてご飯を食べて、パソコンをいじって昼寝して。
起きたらちょっと遅めの昼ご飯を食べて、無菌病棟行きに備えてCDをパソコンに取り入れたりした。
夕食を食べて、U-23日本代表対U-23韓国代表の試合を見た。
おれは、ちょうどU-23代表の一番上の年代と同い年なので、ほとんどの選手の高校時代を知っている。
みんな昔から有名だったからね。
もちろん、向こうはおれのことなんか知るはずもないんだけど。
だから、この世代の応援にはついつい熱が入ってしまう。
田中達也に、大久保嘉人、平山相太は全員年下なので、「たつや~!!」とか「よしと~!!」なんて呼び捨てで応援。
試合を見終わって疲れた頃にお風呂に入り、ぐだぐだテレビを見て就寝することにした。
寝る準備をして布団に入ると、携帯がピロピロ光っていた。
誰だろうと思ってメールを見てみると、平間さんから
「今度の27日にレアル全員が出演する仕事が入っちゃった。こっそり見学に来る?」
と書いてあった。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!
まじっすか!?!?!?
行きたい行きたい行きたい行きたい!!
メールアドレスをレアルマドリードってしてるくらいのレアルフリークのおれには、よだれがとまらないくらいのおいしい話だ。
しかし、あんまりがっついているように思われても恥ずかしいので、
「27日から抗癌剤の投与が始まる予定なので、予定が狂わないと行けそうもないです。」
と答えた。
実際、26日に無菌病棟に入ることが決まっているので、27日から化学療法が始まることもほぼ決まっている。
しかし、採血の結果が悪かったり、急患がでて無菌病棟のベッドに空きがなくなったときには、その予定を変更する場合もある、との話があった。
そこらへんはおれの意思とは関係なく話が進んでいくので、行けるかわからないのは本当だ。
「日にちはずらせないの?」
と聞かれたので、
「明日、外来で診察があるのでそのときに先生に聞いてみます!」
と答えた。
正直、治療は一日でも早く始めたい、というのが本音だ。
それが命に関わることなのだから尚更だ。
先生も同じようなことを言っていた。
でも、レアル見たい!!
ベッカムやジダン、ラウルにフィーゴにロナウドにロベカルにカシジャスにミッチェル・サルガドにソラリにエルゲラに会いたい!!!
なにより、グティに会いたい!!!!
う~ん、困った!!!!!!
明日先生にお願いしてみよう!
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