人に会うには、移動が必要で、遠いところにいる人に会うのは大変だ。

しかし、僕の場合、この距離は物理的な距離より、精神的な距離の方が大きな比重を占める。

近くにいて、いつでも会えるはずなのに疎遠になる。いつかという良い加減なものではあるが、近いうちに、なんて約束まで取り付けているのに、何故か会う気がしない。日常の忙しさにその存在が埋もれてしまう。お互い気にかけているのに、気を遣いあって、声をかけづらい。理由は様々あるけど、決定的な袂別や、こっぴどい喧嘩別れなどではないのに疎遠になる人がたくさんいる。縁があれば…なんて悠長なこと言ってる間にも、時間がどんどん溝を深くして、もう普通には渡れなくなる。何かが橋でも架けてくれないと。

少しの距離の移動にも、凄く時間がかかることもある。人との関係はいくつになっても難しい。

「658km、陽子の旅」2023年日本

監督　熊切和嘉

夢を反対されて飛び出した故郷。

父親の死をきっかけに、20年ぶりの帰省。

658km、彼女には20年かかる距離だったんだな。