運命ってあると思いますか?
名古屋で友人の結婚式があった。
岡山でfeelNEOの周年とツアー初日と被ってたし、名古屋まで行くのお金かかるし、正直言うとあんまり行きたくなかった。
けど中学時代の同級生で親友だし、あいつの晴れ舞台は見届けたい。そう思い名古屋まで行った。
奥さんになる人はもちろん知らない人で、2つ歳上だった。会社の研修で出会い、職場内恋愛を経て結婚したそうだ。
挙式を終え、披露宴へ。
新郎側の招待客の中で中学校の同級生は4人だけであとは会社や大学の友人で特に久しぶりに会う相手もおらず、失礼にも「早く岡山戻って推しメンに会いたいな」などと思っていた。
結婚式恒例の新郎新婦の生い立ちを司会者が話しているとき、全く縁のない新婦の出身を聞き流していた。
「〇〇大学で」
おお、好きだった人もそこだったなぁ
「〇〇部のマネージャーで」
え!好きだった人と同じだ!こんなこともあるもんだな
ちょっと待てよ、2個上ってことはあの人と同じだ!そう思い振り返ると__
10年前の話だ。
東京の中央線沿いに住み、売れない舞台役者を続けながら埼玉の居酒屋でバイトをしていた僕はその日も終電まで出勤していた。
その日は客も少なく、女子大生四人組が飲み放題で楽しんでいた。
退勤する少し前に彼女らも帰っていき、僕も終電に間に合うように店を出た。
東京方面行きの駅のホームで一人の女の子がうずくまっていた。
さっきの四人組の一人だと気づき、さすがにほっとけないと思い水を買って差し出した。
彼女は見ず知らずの僕に警戒したのかその水を拒否した。
明らかに一人で帰れなさそうな状況なのに、と少しムッとして、「さっきの居酒屋の店員です。怪しいものじゃないし、やばそうなのでとりあえず水飲んでください。」
と強めにいうと警戒を解いて水を受け取り、少し話した。
彼女も中央線沿いだということ、僕の降りる駅より少し先の駅だということ。酔ってボーっとしている彼女からそれだけ聞いたら、半ば強引に連絡先を交換し、
とりあえず僕の駅までは一緒に帰ります。そのあとは僕が帰れなくなるので、駅に着いてからと家に着いてから、二回連絡してください。
と約束し、自分の駅まで一緒にいて、先に降りた。
もちろんその日は連絡がなく、乗り過ごしちゃったかなぁと思っていたら翌朝に
「帰れてました。すいませんでした。ご迷惑をおかけしました。」
と連絡が来た。
これが僕らの出会いだ。
それからたまにご飯へ行ったり映画に行ったり、数か月ごとに会い、他愛のない会話をするような関係。
舞台とバイトでバタバタしており、恋愛する余裕がなかった僕にはこれぐらいでちょうどよかった。
少しのんびりとした彼女の性格は居心地が良くて安心感があった。
学歴も低くなく、僕のしょーもない質問や何気ない疑問も一緒に考えてくれて、いろんな考え方があることを教えてくれた。
特別な出来事が起きなくても幸せだった。
この人とずっと一緒にいたいと思った。
2年ほどこの関係が続いたとき、これが好きってことなんだと気づいた。
今日告白しよう、そう決めた日のデートではうまく伝えられずに駅の改札で見送った。
姿が見えなくなった後、やっぱり今日言わなきゃダメな気がする!そう思い改札に飛び込み彼女を追いかけた。
だが目の前で電車のドアが閉まり、言えずに終わってしまった。
きっと今日じゃなかったんだなと思い、一か月後にまた会う約束をした。
その日は僕の一番好きなみなとみらいで会う約束をした。
ただ公園を散歩し、展望台に上り、ご飯を食べる。それだけでよかった。
ご飯を食べているとき、「彼氏がね、、、」と恋人の話題を出された。
まさか、いつの間に?と聞いたら、なんと前回告白に失敗した一週間後だった。
完全に、やっぱりあのタイミングだったんだ。
しょげているのを気づかれないようにご飯を済ませ、駅に向かう帰り道。
大きな船がある港の観光スポットを通ったとき、偶然にも周りに人がいなくなり、二人きりになった。
今なんだな。そう思い、好きだったこと、今日告白しようと思って誘ったことを伝えた。
「遅いよ」
もちろんフラれてしまった。わかっていたけど気持ちは伝えられたので良かったと強がり、横浜で別れた後、埼玉に行き友達と朝までカラオケで騒いだ。
それから今まで特に好きになる人もできず、アイドルを追っかけて生きてきた。
人生において、"恋愛"で思い出すのは彼女だ。共通の友達もいない。出身地も違う。年齢も違う。
一生会うことなんかないと思っていた彼女。
新婦の大学時代の友人席に、彼女はいた。
友人の結婚を心から喜んでいる、幸せそうな笑顔だった。
まさか生きてまた会えるなんて。
でも僕は知っていた。LINEのアイコンが数年前に花嫁姿だったことも、今のアイコンが彼女にそっくりな赤ちゃんとのツーショットなことも。
話しかけてもいいのか正直迷った。
だけど、これはもう続きがあるはずのなかった二人の物語のエピローグだと思った。クサい表現だけど、それを信じられるぐらいの奇跡が起きていた。
さよならのシーンを追記するだけだとしても、物語が続くことが素直に嬉しかった。
披露宴が終わった後、少しだけ話した。
結婚していること、二児の母だということ。とても幸せそうだった。
薬指の指輪が輝いていた。よく歌詞なんかにある表現だけど、本当に輝いていた。
「それじゃあ、縁があれば。またいつか。」
そう言って、さよならをした。
運命ってあると思いますか?
僕はあると思います。
彼女との、
あやかさんとの出会いは紛れもなく、運命だった。
それでは聴いてください。
My hair is bad/綾