このところ物価が上がってきています。

消費者物価指数は前年同月比で1月に今世紀最高値の+4.3%を記録し、最新分(11月分)でも+2.8%となっています。

 

日銀の生活意識に関するアンケートによると9月の段階で『5年後に物価が上がる』と回答している人の割合は80.7%にものぼり、平均で8.0%物価が上がると考えられているようです。

 

日本銀行より引用

 

もしインフレ率+2%がずっと続くとすると、退職金2200万円は10年後には1798万円、20年後には1469万円分の価値しかなくなるという試算を出しています。

 

野村アセットマネジメントより引用

 

よく「投資は怖い、貯蓄は安全」という声を聞きますが、貯蓄も額面が減らないというだけで実際の価値は減っているということを理解する必要があります。

つまり額面が減っていないから安全に見えるというだけで、価値が目減りし続けているということは全く安全ではないということです。

 

では投資は本当に危険なものなのでしょうか?

もちろんリスクの高い投資方法は沢山あります。その中で最も安全なものがインデックス投資といって日経平均やTOPIXといった指数に投資するものです。

なぜインデックス投資が安全なのかというと、指数と言うのは多くの銘柄で構成されているから、つまり採用されている銘柄の多くが上昇すれば株価は上昇するからです。

 

一方で個別銘柄というのはインバウンド関連銘柄、戦争関連銘柄、外食産業など上昇する銘柄は目まぐるしく変化します。

株というのは先取り競争なので上がりそうな銘柄を誰よりも早く探して買えるか、そしてブームが終わって急落する前にいち早く利益確定して逃げられるかという熾烈な争いです。

この争いに勝ち続けるには常日頃から多方面にアンテナを張り、幅広い知識と情報収集能力と多くのトレード経験が必要になります。

日頃仕事と家庭の両立に苦心している方々にはなかなかそんな時間は取れませんし、疲弊している中でそれだけの労力を費やすことも簡単ではありません。

それに比べて指数というのはA株のブームが終わって株価がしばらく低迷したとしても、B株のブームが来てくれれば株価を保つことができます。

5年前と今の日経平均構成比トップ10の顔ぶれの変化を見ればそれは明らかです。

 

 5年前                    現在

ファーストリテイリング +10.39%  ファーストリテイリング +10.45%

ソフトバンクG     +4.04%   東京エレクトロン    +7.54%

ファナック       +3.07%   アドバンテスト     +3.82%

KDDI         +2.90%   ソフトバンクG     +3.76%

ユニーファミマ     +2.56%   信越化学工業     +2.94%

東京エレクトロン    +2.31%   KDDI         +2.68%

テルモ         +2.29%   ダイキン       +2.29%

ダイキン        +2.16%   ファナック      +2.06%

京セラ         +2.03%   TDK         +2.01%

セコム         +1.68%   テルモ        +1.84%

 

どれが上がりそうだとか、多くの時間を割いて情報収集する必要もありませんし、頭を悩ませることもありません。

インデックス投資はタイパも考えれば非常に効率の良い投資方法ということになります。


株はインフレに強く、指数は長期的にみれば高確率で上昇していきます。

これを言うと「でも日経平均はバブル崩壊から30年経っても株価が戻らないじゃないか」という人もいるでしょう。

なぜ株価が30年経ってもバブル高値に追いつかないのか、その理由を知るためにはPERという指標を見る必要があります。PERとは株価が純利益の何倍かということを示していて、この倍率が高ければ株価が実力以上に高騰しすぎているという指標です。

バブル当時のPERは49.1倍もありましたが、今世紀に入ってからのPERがリーマンショック時を除けば20倍以下で推移しているのを見ても分かる通り非常に割高でした。実力を大きく上回って買われてしまっていたから株価が30年経ってもまだ戻らないのです。

そう考えると9月末時点のPERは14.0倍しかありませんから、株価がバブル最高値に迫ってきている状況でも割高とは全く言えず、もし暴落が来たとしてもすぐに戻る水準であるといえます。

 

JPモルガンより引用

 

 

アメリカの代表的指数であるS&P500での検証ですが、95年間どの時期に買っていたとしても6年後には勝率9割を超え、16年後には必ずプラスになっています。つまり戦争があろうとなんだろうと長期で保有していれば必ずプラスになってきたのです。

私も日経平均を月末に買ったとして試算してみましたが、今世紀のどの時期に買ったとしても9年後には勝率8割を超え、11年後には勝率9割を超え、13年後には必ずプラスになっています。ITバブル崩壊直前やリーマンショック直前、コロナショック直前に買っていたとしてもです。

ブルームバーグラジオで「顧客のパフォーマンス調査をしたところ最も成績の良かった口座の持ち主は亡くなった人」なんてジョークもあったくらいです(実際は運用していることを忘れている人が1番だったようです)。

 

ビスポークより引用

 

 

と言ってもいきなり多くの額は投資できませんので、仮にバブル最高である1989年12月末(38915.87円)から毎月1万円ずつ日経平均に積立投資したとします。

2018年3月末時点で積み立てた総額は340万円ですが、資金は512万円と1.5倍に増えています。しかも2018年3月末の株価は21454.30円で今の株価は33464.17円と1.56倍になっていますから2.3倍以上になっているという計算になります。

バブル崩壊直前という最悪のタイミングで投資を始めたとしても長期でみればこの成績です。

 

JPモルガンより引用

 

30年ちょっと毎月積み立てしていって2倍以上になるというのは銀行預金でいえば数万年分なので多いとも言えますが、我々の人生の長さを考えると少ないとも言えます。

ということでリスクは増やさないままにもっと効率良く儲けていく方法も考えていかないといけません。

 

ではどうすれば株で効率良く儲かるかということですが、答えは非常に簡単で「安く買って高く売ること」です。

これを言うと多くの人が「そんなの当たり前でしょ」と言います。

そう、当たり前のことをすればいいだけなのですが、皆それができていないから負けているんです。

これは日本株の代表的な指標の1つであるTOPIXの株価推移と投資信託の資金流出入額推移の資料です。

株価が上がって来ている時に資金が流入して、株価が大きく下がっている時に資金が流出しているのが分かります。

 

ダイヤモンドオンラインより引用

 

株価が上がってくると「もっと上がるかもしれない」と慌てて追いかけて、株価が下がってくると「もっと下がるかもしれない」と慌ててロスカットする人が実に多いのが現実で、その結果「高く買って安く売る」という当たり前と真逆のことをしているんですから負けるのも当然です。

初心者の多くが評価額が買値よりも下がってしまうと「投資なんてやらなきゃ良かった」と頭を抱えてしまいます。

確かにそれはその通りなのですが、株価というのは長期的に見れば上昇していくものなので一時の上げ下げに一喜一憂する必要はありません。むしろ株価が下がっている時というのは買い増しする最高の機会なのです。

 

例えばコロナショックです。

誰もがコロナによる影響はそんなに長く続くものではないと分かっていたはずです。

それでも日経平均株価は前年末より30.85%も下がりました。ただその後すぐに急回復して11月にはコロナが再拡大していたにもかかわらず株価は今世紀最高値をつけています。

 

 

皆さんはスーパーに弁当を買いに行って半額になっていたらそこで買うのを止めて他の店に行くなんてことはしないでしょう。

でもなぜか株の世界ではそうしてしまうのです。それは「損をしたくない」という気持ちが結局損失を生み出す行動をとってしまっているのです。

また、株の価値が分かっていないからというのもあるでしょう。

弁当の場合は価値が分かっているから半額になっていれば迷わず飛びつきますが、株の正しい価値が分かっていないから2割3割安くなっている時にバーゲンセールだと思って飛びつけないのです。

株価は長い目で見ればこのように右肩上がりで上がっていきますし、インフレにも強いです。

 

三井住友DSアセットマネジメントより引用

 

なので株価が安くなっている時に買えばいいわけですが、仮に今暴落が来たとしてもどこが底値なのかを毎回ピタリ当てるのは絶対に不可能です。

世の中には「○○ショックを予測した凄腕アナリスト」的なキャッチフレーズを掲げてる人もいますが、そういう人は「恒大ショックが来る」とか数多く言い続けたうちの1つが当たったことをアピールしてるにすぎません。

 

それにもし当たったとしてもどの程度まで株価が下がるかをピンポイントで毎回当てることもまた不可能です。

思った以上に下げたケースでは放っておけば株価は元に戻りますが、思ったほど下げなかったケースでは買いそびれてしまいます。

買いそびれることによって実質の損失は発生しませんが、儲け損ねてしまうわけでこうしたケースばかりではいつまで経っても株を買うことができませんし、株を買えなければいつまで経っても儲けることもできないわけです。

 

なので金額を分散して買って、金額を分散して売っていけばいいわけです。

そうなれば思っていたほど下げなくても少しは買えるわけですし、大きく下げれば沢山買えるので株価が戻った時に大きく利益を出せます。

積立投資というのも同じような考え方なのですが積立投資が時間の分散によってリスクを減らすのに対して、こちらは金額を分散することでリスクを減らした上に利益を最大化するように仕組んでいるのです。

さらにこまめに利確することで、定期的に収益が入ってくるという利点もあります。

2021年から2023年前半というのはこのように株価がなかなか高値を抜けなかった時期ですが、こんな時でもこまめに買って売ってを繰り返していれば着実に利益を積み重ねていけるわけです。

 

 

1%以上上がった翌日に1%下がった(もしくはその逆)というケースは今年だけでも15回もあって、この1か月間にも1.37%下がった翌日に2.04%上がってまたその翌日に1.76%下がったなんてこともありました。

上がったり下がったりというのが株の特性なのでそれを利用して下がったら買って上がったら売ってというのを繰り返していれば株価は横ばいでも利益が出せますし、株価自体がバブルに突入しない限りはリスクはほとんどありません。

 

貯金していても額面が変わらないだけで価値が目減りしていくのですから、リスクが低くそれなりのリターンが得られる方法で資金を増やしていくことがゆとりある生活の助けになると思います。

まして今はNISA口座を利用すれば1000万円以上は非課税で運用できるわけですからこうした手段を使わない手はないと思います。