つい先ほどのことだ。
普段通りの帰り道を歩いていると、ふと右耳に、なんとも勤勉そうな掃除機の音が飛び込んできた。
視線を右側にやると、通りに向かって窓があった。大きな窓だった。
それは、自分の存在というのが、我々を見るためのものなのか、我々に見られるためのものなのかもわからないまま目一杯開いていた。
窓の先には居間があった。扇風機が首を振り、小さな照明が夕暮れ前の家を静かに照らしていた。
そこには確かに人間の生活があった。
私は覗きをしてしまった。
他人の生活を、彼らに知られないままにじっと見つめてしまった。
窓が私に覗きをさせたのだと、自らに言い聞かせ、私は我が家に帰ることにした。