一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

 「 源流 」

 

   Ⅰ

 

なにを

嘆いているのだろう

 

なにを

憂いているのだろう

 

なにを

失望し

 

なにを

絶望しているのだろう

 

人間が成したことなど

なにひとつない

 

花が咲かないと

嘆き

 

実が実らないと

憂い

 

雨が降らないと

失望し

 

陽が照らないと

絶望し

 

人間が

なにを成したというのか

 

目覚めて

気づけ

 

わが身は

ちっぽけ

 

けれど

大いなる呼吸の中に

 

置かれている

 

そして

やっと

 

いのちになって

生き始める

 

   Ⅱ

 

雷鳴は

過ぎた

 

さわさわと

風のぬける

 

いのちは

灯されてここに

 

  ***

 

一つ一つ

越えていく

 

過ぎることを

味わえば

 

すべてが

経験に変えられる

 

  ***

 

呼吸をすれば

空が見える

 

並木道やら

屋根瓦やら

 

夾竹桃が

色鮮やかに

 

   Ⅲ

 

どどうっと

満ちてくる

 

それは

片隅に逃げこむものを

 

構わず押し寄せ

すべてにしてしまう

 

抗うほどそれは真実であり

ためらうほどそれは明らかで

 

言い訳をするほど

それは誠実なのである

 

つながっていた

それは源流に

 

ここに

生きるのだと

 

いのちが

わたしを迎える

 

  ***

 

ここに

つながる

 

源流は

ここに

 

わたしが

日本人であることよ

 

限りなき

出来事

 

感慨

深きもの

 

この呼吸は

はじまっていた

 

わたしの

産まれる

 

ずっと

前から

               motomi

 

※ 上っては落ちて、またハッと気づきながら一歩ずつ。